験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の果を見せつける-》戦爭Ⅶ

「流石ですね、殿下! どうやったかはわかりませんが、あのようなことを立案されていたとは!」

「え、えぇ……」

「明日からも同じようにするのですかな!?」

「いえ、明日からは通常通りで構いません。今日のことを警戒して數日は足が鈍るはずですから」

「なんと! そこまで計算づくであったとは! 學園創立以來の天才だというお話しは大げさではなかったようだ!」

司令の立場にあるおっさん共に囲まれながらアンは翌日以降の戦爭についての話し合いをしていた。

どう考えても自分の力ではない事柄に関して名聲を得ているが、これもライヤから指示されたことなので仕方がない。

曰く、求心力がマイナスであるB級クラスの學生ごときの作戦だと発表してしは態度が改善されるか、なんならよりマイナスになるより元から慕われている王が戦爭においても有能であったと知らしめる方が圧倒的にやりやすくなるというものだった。

理解はできる。

しかし、納得はいっていない。

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他の人の手柄を自分のものにするというのはアンが最も嫌う貴族の悪いところであるからだ。

「失禮します。明日の戦闘開始時の布陣について將軍からお話があると……」

「あら、そうですか。では、私はここで失禮しますね」

伝令が來たことに心ほっとしながら天幕を出る。

司令と將軍は別であり、將軍は司令によって登用された戦爭のエキスパートのことを指す。

司令は自軍の奧深くで何もしないのに対し、將軍は前線で指示を出す役目がある。

將軍が活躍すれば本人の名も売れるし、それを登用した司令の名も売れる。

Win-Winの関係なのである。

「お、王様じゃねぇか。何か用か?」

「あら? 將軍からお話があると聞いて伺ったのですけど……」

「ん? あぁ、そうか! あれだ! 王様んとこの若造から言われてな。『そろそろ意味のないおべっかが飛びっている頃だろうから王を呼びに行って解放してあげてくれ』ってよ! あいつはいいな! 俺の部下にくれないか!」

「……ダメです。ライヤは私のですから」

ライヤが気を遣ってくれたという事実に嬉しくなる自分をじながら、言葉を続ける。

「それで、當の本人はどちらに?」

「あ? 聞いてないのか? なんか明日の準備があるとか言ってどっかに行ったけどな」

聞いてないわよっ!

「それで、明日は私たちは何を?」

「……熱心なのはいいんですけど、大丈夫ですか? 今日も決して楽な仕事ではなかったと思うんですけど」

ライヤのもとに昨晩のメンバーが集まっていた。

「戦爭中に楽な仕事なんてないですよ。むしろ、前線に出ない分、こちらの方が安全かもしれません」

「それは確かに。失禮しました」

確かに戦爭中に熱心も何もあるわけがない。

あまりにも配慮に欠けた言葉だったな。

気を付けよう。

「明日は、アン……、いや王様の火力を自軍と相手軍に印象付ける必要があると思うんです」

「ほう」

「大將はアン王がここに來たことで変わりました。大將は強くなければならない、というわけではありませんが強いに越したことはないと思います。現に、現國王はその強さでカリスマに著けているはずです」

式典などでの王の様子を見るに、あまり話すのが得意なわけではなさそうだ。

ということは、その人柄で國王として君臨しているわけではない。

そして國王には隣國との戦爭で大きな戦功がある。

なら、あの王の娘であるアンにも戦功は多なりともあった方がいい。

「明日は今日のような正不明の攻撃を警戒して相手軍の歩みが遅くなることが予想されます。よって、そこで山頂を確保し、アン……王から打ち下ろしの火魔法を撃ってもらいます。火魔法である理由は」

「私たちが支援しやすいから」

「その通りです」

やはり、頭の回転が早い。

「多の魔力制であればばれにくいですし、程度が大きくても各個人の影響が小さければそれはより一層顕著です。よって、明日の火魔法の打ち下ろしの際に風魔法での支援を提案したいと思います」

「「了解!」」

既にライヤの話を聞く者たちの中に疑問はなかった。

なぜなら、自分たちの目の前にいる人がどういう人なのか、その日の戦闘でわかっていたからだ。

そして無能な指揮のようにただあれをやれこれをやれと言うのではなく、やることとそれによってもたらされるであろう効果についても説明がなされるため、自信を持ってことに當たりやすい。

彼らは、ライヤのことを上司だと認めていた。

「さて、これをアンにも説明して……」

「正座って言ったよね?」

「はい……」

「いつの間に抜け出してたのかな?」

「いや、あまりにも帰ってこなかったから。ちゃんと助けも送ったし……」

「それはありがとう!」

いかに慣れてると言ってもぶっ続け2時間の正座は耐えられなかった。

痺れた足をフィオナにツンツンされて5分ほど悶え苦しむくらいには我慢したのだ。

「それで、今度は何企んでるの?」

「企むなんてそんな失禮な……」

「戯言はいいから早く言いなさい」

「はい……」

普段は甘々なアンもいざとなればしっかりとライヤの手綱を握れるのであった。

基本的に自分中心な生き方をしているライヤにとっては両親以外に唯一無二の存在と言えるだろう。

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