験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の果を見せつける-》聞き上手

「と、いうわけで心配だからついてきてあげたわ!」

「……お願いしたのか?」

「いえ、特には……」

結果的に王妃からの許可を得て翌日の放課後イリーナに會うことが出來たが、なぜかその場にアンがついてきていた。

「アン、お前仕事は?」

「お、終わらせてきたわよ。あった分は……」

微妙な返答だが、ぎりぎり大丈夫という事だろうか。

「まぁ、いいや。イリーナ。お前たちの代の育祭について聞かせてくれ」

「……あんまり參考にはならないと思うけど」

「それは聞いてからこっちが考えるさ。頼むよ」

「私たちの代はC級クラスが連覇してるわ。私たちはずっと2位」

「それでも凄いじゃないか」

例年ならビリなのだから。

「でも、アン姉さまは1位を取っていたから。先生に阻止された年もあったらしいけれど」

やはり、アンと比較してしまうのだろう。

こう言っちゃ悪いが、アンはかなり特別な部類だ。

王族として、姉妹として、何かと比べられる立場にあるので仕方ないのかもしれないけどな。

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「じゃあ、イリーナは1位を目指してるんだよな?」

「當然でしょ」

「なら、今は何が足りないと思うんだ? 參考までに聞かせてしい」

俺の主観ではあるが、イリーナも十分に才能を持っている。

そして他の代のS級クラスにはない1位になろうという意思も持っている。

ならば、努力はしているはずだし、イリーナは努力を怠る人間ではない。

から見て自分たちに何が足りないと思っているのかは非常に気になる。

「アン姉さまと私の差だ」

「え?」

引き合いに出されたアンはびっくりする。

「私たちだってS級クラスだ。F級クラスの皆にも協力してもらえるように働きかけをしてきた。それでも1位に手が屆かないというのは指揮に差があると考えるのは當然だろう? 私は、お姉さまのようには、なれない……」

「イリーナ……」

普段勝ち気なイリーナがこうして弱音を吐くのは珍しいことなのだろう。

アンも何と言えばいいのかわからないようだ。

「いや、それは逃げだろ?」

だが、ライヤはそんなことにはお構いなしだ。

「他人に負けている理由を求めないっていうのは大切なことだとは思うけどな。団戦である以上、それぞれの力も必要になってくるんだよ。そもそも、チームの勝敗について一個人が背負っているのが間違っている」

戦爭時に王が全てを背負うような責任とは違う。

育祭に負けたところで誰かに責任があるわけがない。

あるとすれば勝たせてあげられなかった先生くらいだろう。

「確かにアンとイリーナには指揮能力の差はあるだろうが、イリーナはアンよりも単騎の能で言えば上だろ? なくとも育祭という場においては」

アンの能力は平均よりはいいってくらいだからな。

以外は。

「人には人に合ったやり方ってもんがあるんだよ。そこで、もう一度聞きたいんだけど。今、イリーナたちに足りないものはなんだ?」

「……個人の力が足りない。F級クラスのみんなが頑張ってるのは知ってるけど、勝敗を左右するレベルじゃない。私たちが頑張らなきゃ」

「じゃあ、それを言ってみればいいんじゃないか? 頭ごなしに否定してくるほど子供でもないだろうし」

「……そうしてみる。ありがとう、先生」

「おう」

ん?

あれ?

いつの間にかお悩み相談が逆転してないか?

「じゃあ、私もう行くから」

「あ、あぁ、うん。わざわざありがとうな」

「……別に」

アンと同じ真っ白なボブに切りそろえた髪を揺らしながら帰っていった。

と言ってもアンと違って迎えの馬車に乗り込んでいくだけなのだが。

「アンも本來ならああじゃないといけないんじゃないか?」

「今更ね。変えるつもりなんて頭ないわ」

アンが國民に人気が高いのは街を歩いて街の人と流しているのが大きい。

としてはどうなのかと思わないこともないが、まぁ許されているのでいいのだろう。

そこまでは俺が考えることでもない。

「それで、イリーナの話は參考になった?」

「結局やってみなきゃわからないってことがわかっただけだったな」

「そんなものよ。ライヤだって別に先生の経験があるわけじゃないしね。それこそベテランの先生方はわかってるのかもしれないけど……」

彼らは育祭に興味なんて持っていない。

「最終的になんかイリーナの悩みを解決してたじだったし……」

「ライヤは聞き上手だものね。イリーナも嬉しかったと思うわよ。私より優れてるって言ってもらえて」

ん?

「アンさん。怒ってます?」

「いーえ、怒ってませんとも。私のに関するライヤの認識を知れてとても良かったと思ってるわ」

「怒ってるじゃないか!」

「怒ってないわよ!」

見かねたカフェのマスターから注意されるまで2人は口論を続けるのであった。

ちなみに、周りにいたお客さんのコーヒーはいつもよりも甘くじられたとか。

「先生、今日もしだけ早く授業を切り上げてもらえませんか?」

「いいけど。今日も行くつもりか?」

「はい。お姉さまたちと違って私は普段姿を見せれていませんから。どういう人なのかも知ってもらえてないですし、知ってもらう努力をしなくては」

ウィルのその姿勢には服するばかりだが。

確かにアンやイリーナと違ってウィルは大々的にお披目がされていない。

アンから聞いた話では、この頃良くなったもののウィルはが弱かったらしいのだ。

なので國民へのお披目を見送って、晩餐會などへの參加もしていないらしい。

それでいて上2人よりおしとやかに育ったのはなぜだ。

「俺も一緒に行こうか?」

「先生が來ては意味がありません。こういっては何ですが、B級クラスの先生は私たち以上に尊敬の対象なのですから」

「そうなんだよなぁ……」

『市民のヒーロー』のような立ち位置である。

近な存在の方が応援しやすいのだ。

「私は頑張りますから、先生はシャロンさんを見てあげてください。行き詰まっているようですから」

確かにシャロンは魔力制で行き詰まっている節がある。

見てやりたいのは山々だが、ウィルも心配なのは間違いない。

「……ティム、エウレア。頼んだぞ」

「お任せください」

「ん」

今は小さな護衛達に任せるしかないか……?

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