「クンに話して良かったのか？」

「あれだけ脅しておけばいう事はないでしょう？」

「まぁ、そうだろうけどな……」

あれで言うならもうそれはクンを褒めるしかない。

「……教師って難儀ね」

アンもクンに対する処罰が軽かったと思っているのだろう。

し後悔しているかのような口ぶりである。

「まぁ、子供に対してと考えたらいいんじゃないのか？」

「でも、本來なら一族郎黨処刑じゃない？」

「そ、そうだな」

王家の、裁定者としてのアンをあまり見てこなかったライヤはその圧にしたじろぐ。

「殘念だが、親たちは免れられないだろうな。だが、教師というのは抜きにしても子供にはし甘くてもいいんじゃないかと思うぞ」

「そうかしら……」

「……責任のない子供には無理に背負わせる必要はないだろ。そういうところで意味もなく裁定を下すようにはなってほしくないな」

「そうね、そうよね」

し疲れたのか、アンはライヤに歩み寄って肩にもたれかかる。

変裝を解いて元のしい白に戻った髪をライヤが漉く。

「し落ち著いたら戻るんだぞ。俺もまた會場周りの警備に戻らないといけないから」

「そうね。でも、もうしだけ……」

ワアァァァ……！

より大きくなった歓聲が會場から聞こえる。

次の試合が始まったのだろう。

ライヤもアンも今までの試合結果を知らないため、どこの級クラスが対戦しているのかはわからない。

2人の空間を作りながらも、ライヤはS級クラスの生徒の勝利を祈るのであった。

「ここでS級クラスに勝てば！　俺たちも優勝できる！　気合いをれろ！」

同時刻、會場へと出てきたS・F級クラス連合とA・E級クラス連合は歓聲を浴びていた。

特にもはや後がないA・E級クラス連合は気合がっている。

わけもなく。

「それで、どうするの？」

「ふん！　A級クラスの魔法で押しきるのだ！」

「はぁ……。向こうにはS級クラスがいるのよ？　魔法戦で勝てるの？」

「人數をかければ問題ない！」

実力では劣っていると自ら言っているようなものだが、戦略としては正しい。

彼がその言葉の悲しさを自覚していないだけで。

「私たちは何をすればいいの？」

「E級クラスは後ろに下がって見張りでもしていろ！　どうせ向こうの戦力はS級クラスだけだ」

「そうだといいわね」

呆れたと言わんばかりに後方へと下がっていくE級クラスの生徒にA級クラスのリーダーはいら立ちを隠せない。

「ろくな魔法も使えないくせに……！」

しかし、彼は聡明であった。

確かに魔法戦はこの陣取りの大局を左右するものであり、重要視するのも頷ける。

だが、A級クラスはそのプライドから魔法戦だけを意識しすぎているとじていた。

加えて、前の陣取りで見せたS・F級クラス連合のき。

明らかにF級クラスの能力を活かした作戦が組み込まれていた。

他のきが上手くいって実行に移されなかっただけなのだが、試合をちゃんと見ていればわかることだった。

S級クラスが自分たちの試合を見なかったことに憤っていたくせに、相手の試合を見て勝とうという努力もしていない。

E級クラスがA級クラスを見限った瞬間であった。

「ごめんなさいね、皆」

「委員長のせいじゃないよ。俺たちだって気分が悪いさ」

「育祭は來年もある。また頑張ればいいよ」

「そうね……」

委員長というものは存在しないが、役目からそう呼ばれていた。

そして彼らは思うのだ。

どうか相手がA級クラスを叩き潰して改心させてくれますようにと。

「くそっ、ちょこまかと……！」

「リーダー！　人數が多すぎる！　どう対処すればいいんだ！？」

「このままじゃ突破されるわ！」

S・F級クラス連合の作戦通り、F級クラスの足でかきすという作戦は見事に上手くいっていた。

そもそもがA・E級クラス連合はE級クラスを後ろに下げていて人數不利である。

ライヤやアン、他の魔法を上手く使える者たちのように1人で複數の魔法を用いることが出來なければ対処できないだろう。

それに、彼らはまだ1年生だ。

的に當てる練習はしていても、実戦的にいているものに當てる練習などしていない。

きを先読みして撃っても相手に屆くころには微調整が出來るような距離ではなく、外れてしまう。

運よくちょうど當たる軌道だったとしても避けられてしまう。

「うろたえるな！　何か絡繰りがあるはずだ……！」

リーダーはギリッと奧歯を噛みしめながら相手の様子を伺う。

彼らのきには必ずS級クラスが関わっているはずである。

だからその規則を見つけようとしているのだ。

「進めぇー！」

だが、そんなものは存在しない。

ウィルが下した指示は1つ。

「好きにやってこい」

E級クラスが後ろに下がっているのを見て、単純に數で押したほうが有効だろうと判斷したのだ。

加えて作戦という作戦がないため、生徒たちのきに規則がない。

いくら目を凝らそうと、どうすることもできなかった。

「くそっ、おいE級クラス！　手伝え！」

前に目を向けたまま、後ろにいるはずのE急に聲をかけるが、反応はない。

振り返ると、自陣の奧で何もしていない者たちが目にった。

「お前ら！　負けてもいいのか！」

「あんたの指示には従えないわ。負けるのも當然の采配をしてるのはあなたでしょ」

「庶民共が……！」

この言葉によって育祭後の彼へ処分が下されることが決定した。

「こうなれば俺たちも取るしかない！　進軍だっ！」

これだけの人數を攻めにかけているのだから、守りが薄くなるのは當然。

「これは……！」

相手がS級クラスでなければの話だが。

ライヤによる授業によって魔力制がしは上達している生徒たち。

手加減はまだ出來ないが、火力を上げることは可能となっていた。

彼らが攻めろうとする前には高出力の火の壁、水の壁、氷の壁が立ちふさがっていた。

魔力量の桁が違う。

A級クラスの生徒がなぜ自分たちがS級クラスではないのかを実したのだ。