《史上最強の魔法剣士、Fランク冒険者に転生する ~剣聖と魔帝、2つの前世を持った男の英雄譚~》最強っていうのは退屈だ

「この、化め……」

深淵ダンジョンの99階にて。

創痍のダメージを負った、邪神アスタロスは俺のことを見下ろしながらもそう言った。

「ハハッ……。化ねえ……」

思わず、乾いた笑みを零してしまう。

邪神アスタロスは、史上最兇にして、災厄の『深部ダンジョン』に潛む、最上級のモンスターである。

に埋め込まれた數千本の手は、見るものを畏怖させる外見だった。

まさか人類にとっての恐怖の象徴である邪神様に『化』呼ばわりされる日が來るとは思ってもみなかった。

「答えろ。ここに來た目的はなんだ。何故ゆえ、我らの同胞を手にかける!?」

「別に何も。特に理由はないが」

悲しいな。

もしかしたらアンタならば、俺の気持ちを分かってくれると思っていたんだがな……。

圧倒的な力というのは時に底知れない孤獨を生み出すものである。

邪神と呼ばれ、人々から恐れられるアンタならば、『化』と呼ばれ、遠ざけられる俺と分かり合えると思っていたのだけどな。

「くたばれ! 化があああ!」

創痍の邪神アルタロスは手をばして、最後の攻撃に移る。

「來世で會おうぜ。親友」

たぶんこれが俺の人生の中の最後の戦いとなるだろう。

俺は敵の攻撃を躱して、手にした魔剣で邪神のを2つに引き裂いた。

ジュクリッ。

邪神のには鋭い斬線が走り、紫が噴き出した。

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

斷末魔を殘した邪神アスタロスは、の粒子になって空気の中に消えていく。

転生の魔石 等級 SSS

(使用者のを別人として生まれ変わらせる魔石) 

代わりに現れたのは、長年に渡り俺が探し求めていたアイテムである。

長かった。

これで俺に首をつけて飼いならしていた連中たちから、ようやく解放されることになるのだな。

こうして俺は遙か未來の世界に転生を遂げるのだった。

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