《史上最強の魔法剣士、Fランク冒険者に転生する ~剣聖と魔帝、2つの前世を持った男の英雄譚~》付與魔法

鳥の頭と蛇の尾を合わせもったコカトリスは、月明りに照らされないよう雲の下を通りながら、俺たちの周囲をグルグルと旋回していた。

「アンタのことを狙っていたみたいだぞ? さっきからずっと」

「ぎえっ! ぎえええええええええええ!」

大きく餅を突いたパンチョは、口を開けたまま手足をガタガタと震わせていた。

これは不味いことになった。

そんなに分かりやすく驚いたら、せっかく俺が『気付かないふり』をしていたのがバレバレである。

コカトリスとしては、俺たちが完全に寢靜まった頃に襲ってくるつもりだったのだろうな。

「グギャアアアアアアアアアアス!」

やはり來たか。

コカトリスはの丈5メートルはありそうな巨を落下させて、俺たちの方に向かってくる。

さて。

どうしたものかな。

火屬魔法を使って撃退することも考えたが、これはあまり賢い選択肢とは言えないような気がする。

このスピードで向かって來られると、確実に當たる保証がない。

萬が一、外してしまったら、無駄に驚かせて標的を逃がしてしまうだけだろう。

となると、殘る選択肢はコイツしかないような気がする。

アイアインソード 等級D

(駆け出しの冒険者が好んで使用する剣)

俺はそこでゴブリンの城から拝借してきた剣を抜く。

の錆が気になるボロボロの剣であったが、コイツがあれば何とかなるだろう。

前世の記憶がそう言っている。

「おい! お前! そ、そんな鈍らで何ができるっていうんだよ! 早く逃げようぜ!」

警告してくれるのは有難いが、別に逃げる必要は今のところじていないんだよな。

ターゲットは俺たちのことを完全に『格下』だと思って見下している。

何の工夫もなく真っ直ぐに向かってきているのが良い証拠だろう。

魔法と比べて、剣の素晴らしいところは、接近してくる相手に使用すれば、まず外すことがないという點である。

「そりゃっ!」

だから俺はボロボロの剣に目一杯の魔力を込めた後、タイミングを合わせて、コカトリスの額に向かって振るってみることにした。

ズガガガッ!

ズガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

剎那、大地が震える。

どうやら今の裝備では、強靭な頭蓋骨を持ったコカトリスの頭部を切斷することはできなかったらしい。

だが、十分なダメージを與えられたという手応えはある。

切斷することは無理でも、打撃による衝撃によって敵の頭部を破壊すれば、十分に致命傷を與えることが可能なのだ。

「グギャャャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアス!」

俺の攻撃をけたコカトリスは斷末魔の悲鳴を上げながら、無數の木々を巻き込んで吹き飛んで行くことになった。

目の前にヒラヒラとコカトリスの羽が舞う。

やがて、地面に落下したコカトリスは、ピクリともかなくなった。

【スキル:付與魔法(初級)を獲得しました】

【スキル:付與魔法(中級)を獲得しました】

【スキル:付與魔法(上級)を獲得しました】

おおー。

やはり今回は剣で対応するのが正解だったみたいだな。

魔力を込めた剣を全力で振るったからか、付與魔法(上級)のスキルを獲得することに功していた。

「あ」

思わず間の抜けた聲をらしてしまう。

気付くと、アイアンソードの刀が砕けて消失していた。

殘念。

せっかく手にれた剣だったのだけどな。

もう1本くらいゴブリンの城から拝借してくれば良かったかな。

「あれ? そう言えば、あの人はどこにいったんだ?」

どういうわけか消えていたのは、アイアンソードの刀だけではなかった。

さっきまで腰を抜かして怯えていたはずの男までもが、俺の前からいなくなっているようだった。

「ひええええええええ! 化おおおお! 助けてくれ! 誰かああああああああああ!」

耳を澄ませると、何処からか男のび聲が聞こえてくるのだった。

アイザワ・ユーリ

固有能力 魔帝の記憶 剣聖の記憶

スキル 剣スキル(上級) 火魔法(上級) 付與魔法(上級) テイミング(上級) アナライズ

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