《病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです》第20話:閑話・レミー
母上が聖になる決意をしてくださってから二カ月。
ブゼル大荒野は劇的な変化を見せました。
私の商會が大陸中から集めていた種の一つを使って、茶かった荒野が広大な緑の大草原になったのです。
「慈母聖様じゃ、慈母聖様が來てくださったぞ」
「おお、おお、おお、尊顔を見ることができた」
「ひかえろ、慈母聖様を立ってみるなど失禮過ぎるぞ」
「土下座じゃ、土下座するのじゃ」
私が噂を広めた事で、母上に聖の地位は盤石になりました。
この詐能力がヘルメスから得られたモノなら々複雑な気持ちになります。
でも実際に役に立つのなら使わないという選択はありません。
使えるモノは親でも使えと前世では言われていました。
それに、それで不幸な民が救われるのなら母上も納得してくれます。
「おばあさん、何か困っている事はありませんか。
食べに困っていませんか。
住む家に困ってはいませんか」
「おお、おお、おお、ありがとうございます、慈母聖様。
以前と比べればまるで天國のようでございます。
もう飢えることなく毎日味しいミルクとパンを食べることができます。
冷たい夜やすきま風に震える事もなくなりました。
悪人の暴力に怯える事もなくなりました。
全部慈母聖様のおでございます」
このおばあさんの言う事が貧民や難民の総意なのでしょうね。
元からの領民はそれなりの生活をしていましたが、母上が救われた民はその日の食事にも事欠く人達がほとんどでしたからね。
悪人の暴力というのは領主や配下、犯罪者ギルドの連中でしょうね。
領主や配下は防いでいますが、犯罪者ギルドは気にしていませんでした。
直ぐに調べさせないといけませんね。
(それは気にしなくていいぜ、全部俺が追い払っていたからな)
(また貴男が勝手に手出ししたのね。
いったい今度は何をやったのよ)
(何怒っているんだよ、我がしの聖セシリア)
(余計な事を言ってないで自分がやらかした事を言いなさい。
犯罪者ギルドにどんなことをやったの、噓偽りは許さないわよ)
(我がしのセシリアに噓をつくわけがないじゃないか。
それに別に何もやっていないよ。
盜人と賭博の神として、信徒にやっていい事とやってはいけない事を夢の中で伝えたやっただけだよ)
そうでした、ヘルメスは盜人と賭博の神でもありましたね。
それに夢の中に現れて人を意のままにる事もできたのでしたね。
そんなヘルメスなら、犯罪者ギルドのいる信者を使って私達にちょっかいを出させなくするくらい簡単な事でしたね。
(それくらいならいいけど、まさか夢の中で私の事を自分の聖だと言ったりしてないわよね!)
(……)
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