《覇王の息子 異世界を馳せる》関羽、マキビ 首をかしげる

どうしてこうなったのか?「むむむ」と関羽は首をひねらせる。

馬車の中には、関羽を含めた4人の男がいる。

1人は曹丕。ついに彼は書に飽きたのようだ。

馬車の後方に陣取り、両足を放り出してながら、流れる景を睨むように流れている。

他はマキビと名乗った覆面の小男。

そして、先ほど刃をえたはずの老人・・・・・・

いや、今は若さを取り戻しているのだが・・・・・・・。

なぜ、この2名が場所にいるのか?

それは、あの戦いの後の話をせねばなるまい。

あの戦いの直後、老人は倒れた。

元々、若き風貌をしていたのは、病の進行を抑えるためだったのだ。

すぐに関羽と曹丕の手で馬車に運び込み、マキビの治療が始まった。

彼は、自らを軍師と名乗っていた。確かに軍師は各方面の知識に造詣が深い者が多い。

しかし、その治療方法は常軌を逸しているかに見える。

老人の周りには幾つもの札が敷かれ、マキビは呪文を唱えている。

やがて、周囲の空気がを帯びていく。

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と斷じる事は出來ぬが、強いて言えば藍に近いであった。

なんだこれは?これは本當に治療なのか?

むしろ、仙。否、この世界では魔法と言っていた。

とにかく、それと同等のに見えてならない景であった。

気がつくと関羽の橫に曹丕がいて、この風景を凝視している。

危険ではないか? そう思ったが、曹丕のそれは梃子でもかんとばかり、馬車の床に張り付いている。

仕方がない。曹丕の視線を妨げない場所に立ち、いざとなれば自らを曹丕の盾となるつもりでいた。

しかし、その心配もなく治療は終了した。

まるで奇を見せられているが如く、不可思議な景であった。

さっきまで老人だった男は、最初に襲ってきた時の姿。若者の姿に戻っていた。

否、老人の方が本來の姿であったか。

しかし、奇に例えるのは、些か不適切な表現かもしれない。

方法こそは、儀式めいてはいた。だが、行われた行為は紛れもない治療であり、最中のマキビの様子は、鬼気迫るものがあったからだ。

マキビの話では、彼が目を覚ますまで多の時間がかかるという。

その間、治療の場を提供してくれたお禮として関羽の治療を申し出てきた。

関羽には戦いの外傷がないものの、常人ならば即死しかなない衝撃を頭部へけているのだ。

実のところ、あの魔法を使った治療方法は進んでけたいものではないが、わざわざ斷る理由はない。

素直に治療を施してもらったのであった。

しかし、その後、彼が目を覚ましても、そのまま出て行く気配がない。

そして、今に至るわけだ。

しかし、なぜ出て行かないのか?

誰もしゃべろうとしない。沈黙が支配した空間に嫌気がさし始めていた。

「そう言えば、マキビ殿」そう言葉を発したのは、外を眺めていた曹丕であった。

「はい?なんでございますか?」

「魔法を使わず、我々と話しておられるようですが、マキビ殿も漢民族の者なのでしょうか?」

関羽はハッとした。マキビが、あまりにも普通に喋っていたので気がつかなかったのだ。

マキビは、魔法のように頭へ直接話しかけてくる喋り方ではなく、自らの口でハッキリと言葉でっている。彼の言葉は関羽と曹丕の言語と同じものであったのだ。

漢民族であるのか?その質問にマキビはやんわりと否定した。

「いや、違います。私は日の本は備中の生まれ。本名は吉備真備キビマキビと言います。言葉がしゃべれるのは遣唐使して2度ほど唐で覚えました」

「日の本?遣唐使?唐?」

関羽も曹丕も共に唸った。2人とも知らぬ言葉だったからだ。

「日の本と言うのは、あなた方の時代でいう倭國ですね。唐で諸葛亮孔明の兵法を學びました。それで関羽さま。あなたは一目見て関羽さまだと分かりましたよ」

マキビの言葉の響きには、どこか興を隠しきれていないところがあった。

しかし、関羽の返答は―――。

「諸葛亮孔明?知らぬ名前だが、なぜ、その者の話から私の名前がでるのでしょうか?」

関羽が孔明を知らない。

マキビの表は、覆面ですら隠しきれない衝撃が浮かんだ。

「本當にご存知ないのでしょうか?」

そう言われても、関羽には心當たりのない名前であった。

それになぜ、自分が孔明という人を知らないことをマキビ殿は驚いているのであろうか?

関羽にとっては、そっちの方が不思議でならなかった。

関羽が諸葛亮孔明を知らないと言うのは當然のことである。

関羽と曹丕がこの世界へと飛ばされたのは、渡の戦いの最中である。

渡の戦いが行われたのは建安5年。

史実では、この後に関羽は曹軍から去り、義兄弟である劉備の元へと帰っていく。

そして、劉備が三顧の禮をもって諸葛亮孔明を軍師に迎えるのも建安5年の事であった。

當然、関羽もマキビもこの事は知る由もない。

なぜ、話にズレが生じているのか? 互いに首をかしげるばかりであった。

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