《帰らずのかぐや姫》其の二
暗くて冷たい闇の中、ひとりのが泣いている。真っ暗で、何ひとつ見えないそこに響くのはの嗚咽と鎖がすれる金屬音、そして、延々と流れてくる不気味な歌のような音のみだ。
(……勘弁してよ)
うんざりしたようにかぐやはそのを冷めた目で見つめる。
これは夢だ。かぐやはもう自覚している。これで何度目だか分からないほど繰り返し見ているこれは、かぐやが〝あの地〟から追われた日の記憶だ。
『暗いよぉ、寒いよぉ……。父上ぇ、母上ぇ、ここから出してください。怖いよぉ、この音を止めてぇ、誰か助けてぇ……っ!』
泣きじゃくるに、昔の自分に、かぐやは苛立った。
(違う、自分で出ろ! あんな奴らに屈するな。その力はあるんだ。あんたは、私は――!)
『化け』
いきなり響いた聲にかぐやは思わず耳を塞いだ。しかしその瞬間に眼前に広がると悲鳴の立ちこめる戦場に、思わず聲を失う。
『鬼だ、逃げろっ、殺されるぞ!』
目の前を、まみれになり恐慌した人々が逃げう。誰もが鬼だ化けだと恐怖に顔を引きつらせていた。かぐやは瞼を強く閉じて激しく頭を振る。
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(違うっ。私は、私は……!!)
『違う?』
足首を、骨の手が摑む。ぞっとしたのはその奇怪な現象にか、それとも全でじる怨念にか。
『俺たちをこんな姿にしたくせにか? お前が殺したのに。その塗れの汚らわしい手で。殺し盡くし、壊し盡くした。穢れた狂気の鬼姫』
地面から這い出てきたのは、汚れた兵裝の骸骨。かぐやはそれを振り払おうと足を振る。しかしそれは振り払おうとするとすればするほどきつくかぐやの足を摑む。
『見ろ、お前は塗れだ。お前が殺した者たちので。見ろ、お前にまとわりつく幾千の恨みを。皆お前に殺された者たちだ』
言葉が終わるか終わらぬかの剎那に全がに塗れ、數え切れないほどの骸骨たちがかぐやにまとわりついた。振り払おうとするが、そのどれもがかぐやから手を離そうとしない。まるで、その怨念の深さを表すように。
(わ、私……私は、ただ……父上と母上のために……ただ、言うとおりに……っ!)
『関係ない。俺たちを殺したのはお前だ。お前が殺したんだ。お前が。お前が。お前が』
『化け。化け。化け。化け。化け』
『鬼。鬼。鬼……』
聲が渦巻く。何重も何重も、恨みが連鎖する。頭が割れそうになるほどの軽高音、重低音が響き渡る。
(……こ、の……っ!!)
微かにかぐやのが輝きだす。だが。
『また殺すのか、俺たちを』
眼前に姿を見せた塗れの兵士の言葉に、かぐやは完全に言葉を無くした。ぽっかりとが開いたような力がを包み、頭に痛みが迸る。足からは力が抜け、かぐやはと骸骨の海に橫たわった。じるのは冷たさ。息苦しさ。目と頬だけがただただ熱い。
視界が歪んだのは、救いだったのかもしれない。
(……もういい。誰か、誰か、私を―――)
を振るわせた瞬間、全がぬくもりに包まれた。が消える。骸骨たちが消える。戦場の匂いが消える。暗闇が消える。寒さが消える。悲しみが消える。
殘ったのは、かぐやを抱きしめる溫かさとほのかなだけ。
優しい聲が、呼んでいる――。
目を開けて、最初に視界に飛び込んだのは火も點けていないのに明るい部屋。最初にじたのは安心出來るふくよかさ。濡れた目をこすったかぐやの耳に、優しい聲が屆けられる。
「大丈夫? かぐや」
耳元からの聲を聞き、かぐやはその時初めて嫗の腕に抱かれていることに気付いた。そして小さく返事をすると、その首に縋りつく。嫗はしい娘を優しく抱きしめ返してやる。
「可哀想に、また怖い夢をみてしまったんだね。でももう大丈夫ですよ。私がそばにいるからね」
い子供にするように、嫗は何度も何度もかぐやの頭をでてやった。
外はまだ深い闇の支配下にあり、空には満ちた月が我を見よとばかりに誇らしく浮かんでいる。微かに顔を上げたかぐやは、憎々しげにその月を睨み上げた。もしも視線の強さでモノが壊せるなら、とうに々に砕け散っているほど強く。強く――。
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