《帰らずのかぐや姫》其の五

「姫、ご安心召されよ。我が鋭たちが必ずやあなたをお守りする。相手が天人であろうとあなたのためでしたら……!」

「まあ帝、このようなのためにそこまでしてくださるとは……謝の意を伝えきれませぬ」

熱心に迫る帝と照れた振りをして扇に隠した顔を背けるかぐや。その様を傍から見ている典は柱にしがみついてを震わせる。噛み締めた歯は今にも飛び出しそうな笑い聲を押し込めるためだ。

今日は約束の満月の夜。その日翁の家には信じられないような客が訪れた。帝だ。曰く、天人の話を臣下から聞き許の鋭を連れて慌てていらしたとのことだ。

その話を聞いてかぐやが最初にしたのは、同じくやって來ていた典の腹に拳を叩き込むことだった。家の者はここ數日かぐやを案じて外に出ていない。その上聞けば帝の耳にこの話をれたのは典の主だというではないか。そうなれば口をらせたのは典以外いない。

ちなみに本人曰くわざとだそうだ。翁に頼まれていたのと、しでも戦力があった方がいいだろう、と。心遣いはありがたいが正直かぐやにしてみれば増えた人間全て邪魔なだけだ。とはいえ翁の立場を考えるとこれ以上ぞんざいに扱うわけにもいかない。ゆえに、仕方なく貓を被って過ごすことになった。

出來ればいつも通りに過ごしたかったので最初は鬱陶しく思っていたかぐやだが、次第にどうでもよくなった。

(どうせ事が起これば何も出來ないしね)

* * *

外からおののく聲が聞こえてくる。天人が來たと誰かがんでからいくらも経っていないが、まあ妥當な所だろう。外を覗かせた娘が「皆地に伏しているいる」と言っていることからはかるに、やって來たのは外能力の力の持ち主であろう。

「さあ姫、我らと共に帰るのです」

高圧的な聲がしたと思うと、かぐやや嫗たちがいた部屋の格子が自然に開いた。娘たちが悲鳴をあげる中かぐやが立ち上がると、嫗が慌てて腰にすがる。そういえば、今日天人が來る、と話しただけで父母のどちらにも事の次第を話していなかった。しまったと今更思いつつ、かぐやは嫗を抱きしめ返す。

「大丈夫だよお母様。すぐに帰ってくるから待っていて。あんな奴ら、私の敵じゃない」

自信に満ちた囁きを耳元で聞き、嫗は素直に驚いて息を飲む。どうやら、かぐやのやろうとしていることが何なのかに気付いたようだ。

「さて、いざ出陣! ……なーんてね」

気楽な聲を殘し、かぐやは部屋から出て行った。

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