《帰らずのかぐや姫》其の五 5
皆の視線がかぐやと羅快に集まる中、天人たちの後ろに停められた、かぐや用の天の車より一回り大きい車にかけられた布が靜かに払われる。中から攻防の様子を覗いたのは一人の青年であった。まだ年若いのかどこか年らしさが殘るものの、細い目とはっきりとした顔立ちは乙をわすほどに麗しく、裝もまたこの場にはそぐわないほど華である。
青年はじっと戦いの場を見つめると、腰に下げていた布の袋をでた。そして、ゆっくりと外に足を踏み出す。
それと同じ頃、羅快は右腕を大きく後ろに引いた。高い音を立てて足元の瓦が割れる。かなり強い力で踏み込んでいることが分かったかぐやは、両手を前に差し出しける形だけを作った。
小さな、気合のった羅快の一聲。
目にも止まらぬと言っても過言のない速さの打撃がかぐやに向かって放たれる。まずその拳はかぐやの両手に當たるはずだった。だが、何を思ってかかぐやは羅快の打撃が両手にぶつかる直前にそれを降ろしてしまう。
Advertisement
羅快はもちろん気付いた。しかしいくら彼でもここまで來たら我がと言えども止められない。地上人はもちろん大抵の天人を一撃砕出來るほどの力がこめられたその拳は、無防備なかぐやの額へと吸い込まれるように向かう。
瞬間、その場にいた天人・地上人たちの口からはそれぞれ大きな聲がれた。天人たちからはかつて月を震撼させた鬼に彼らが誇る武人が勝ったという歓喜の聲。地上人たちからはすべき姫が死んでしまったという恐怖と絶の悲鳴が。皆、かぐやの腕が弾かれ額を打ちぬかれたと思ったのだ。
この時誰もが様々なに浮かされて気付いていなかった。
何故あの細のが、あの大柄の男の力を込めた拳をけてなお、その場に立ち続けていられるのか、という、単純な疑問に。
最初に気付いたのはもちろん羅快だ。まだかぐやの髪が衝撃に揺れている中で、彼はその異変に気が付いた。確かに手応えがあったというのに、倒れる素振りも、まして痛がり揺れる気配もない。
「――この程度?」
一瞬にして総立ったのは、若き頃より戦場にを置く羅快すら未だかつてじたことのない殺気をじたから。
かぐやは羅快の拳越しに彼を見る。その目は、天真爛漫なのものでもなく、自信に溢れた武人のものでもなく、かつて月上を震撼させた、鬼神のそれ。
瞳孔は晝の貓のように細くなり、虹彩は金に変わった強と一となる。吊り上ったそれは元の麗しい顔からは考えられないほど恐ろしい。
「これで、先鋒隊の隊長? ――やっぱり」
まぶたがゆっくりと閉じられる。これ以上ここにいてはいけない。危険を判斷したのは羅快の武人としての本能だった。しかし磨かれたその勘も、眼前の目覚めた鬼神の前には無意味に等しい。羅快が腕を引き後方へと飛び退くと、逃すまじとかぐやも瓦を蹴る。今夜一番の音を立てて踏み砕かれた瓦がその威力を語っていた。
一瞬で間合いを詰めるかぐや。別人と疑いたくなるほど変わったその顔を間近に見た時、羅快は初めて心から焦る。早鐘を打つ心臓が危機を伝えてきた。さらに下がろうとした足を止めたのは、顔がつきそうなほど近くになったかぐやからぽつりと呟かれた言葉。
「あんたも、私を壊ころせないんだね――」
本人も気付いていないのかもしれない、悲しげな呟き。その目によぎった暗い影に羅快が気を取られた瞬間、風を切って、かぐやの全重を乗せた掌打が羅快の人中に炸裂した。後ろに退いていた勢いも重なり、羅快の巨は瓦の中に沈み、下の骨組みまで軋ませる。
弾け飛ぶ瓦。四方へと飛び散った欠片は天人・地上人の境もなく周囲の人々にぶつかっていく。地上にいた典は、ふりかかってくる欠片を払いつつ、一人立ち上がったかぐやを見て安堵のため息をついた。
Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜
一風変わったVRゲーム『Monsters Evolve』があった。モンスターを狩るのでもなく、モンスターを使役するのでもなく、モンスターになりきるというコンセプトのゲームである。 妙な人気を得たこのゲームのオンライン対応版がVRMMORPGとして『Monsters Evolve Online』となり、この度発売された。オフライン版にハマっていた吉崎圭吾は迷う事なくオンライン版を購入しプレイを始めるが、オフライン版からオンライン版になった際に多くの仕様変更があり、その代表的なものが初期枠の種族がランダムで決まる事であった。 ランダムで決められた種族は『コケ』であり、どう攻略すればいいのかもわからないままゲームを進めていく。変わり種ゲームの中でも特に変わり種の種族を使って何をしていくのか。 人間のいないこのゲームで色んな動植物の仲間と共に、色んなところで色々実験してやり過ぎつつも色々見つけたり、3つの勢力で競いあったり、共に戦ったりしていくそんなお話。 カクヨムにて、先行公開中! また、Kindleにて自力での全面改稿した電子書籍、第1~6巻を発売中! そしてオフライン版を描くもう1つの物語。 『Relay:Monsters Evolve ~ポンコツ初心者が始める初見プレイ配信録~』も連載中です。 良ければこちらもどうぞ。 https://ncode.syosetu.com/n9375gp/ 無斷転載、無斷翻訳は固く禁じます。
8 84【書籍化】碧玉の男裝香療師は、ふしぎな癒やし術で宮廷醫官になりました。(web版)
【カドカワBOOKS様より2022.11.10発売】 ※毎週、火、金更新 ▼書籍版は、登場人物やストーリーが増え、また時系列にも多少の差異があります。 どちらを読んでも楽しめるかと思いますが、二章以降は、書籍版のストーリーを踏襲したものになりますので、ご注意くださいませ。 下民の少女「月英」には秘密があった。秘密がバレたら粛正されてしまう。 だから彼女はひっそりと邑の片隅で、生きるために男裝をして姿を偽り、目立たぬように暮らしていた。 しかし、彼女の持つ「特別な術」に興味を持った皇太子に、無理矢理宮廷醫官に任じられてしまう! 自分以外全て男の中で、月英は姿も秘密も隠しながら任官された「三ヶ月」を生き抜く。 下民だからと侮られ、醫術の仕えない醫官としてのけ者にされ、それでも彼女の頑張りは少しずつ周囲を巻き込んで変えていく。 しかし、やっと居場所が出來たと思ったのも束の間――皇太子に秘密がバレてしまい!? あまつさえ、女だと気付かれる始末。 しかし色戀細胞死滅主人公は手強い。 皇太子のアピールも虛しく、主人公は今日も自分の野望の為に、不思議な術で周囲を巻き込む。
8 165英雄様の非日常《エクストラオーディナリー》 舊)異世界から帰ってきた英雄
異世界で邪神を倒した 英雄 陣野 蒼月(じんの あつき) シスコンな彼は、妹の為に異世界で得たほとんどのものを捨てて帰った。 しかし・・・。 これはシスコンな兄とブラコンな妹とその他大勢でおくる、作者がノリと勢いで書いていく物語である! 処女作です。 ど素人なので文章力に関しては、大目にみてください。 誤字脫字があるかもしれません。 不定期更新(一週間以內)←願望 基本的に三人稱と考えて下さい。(初期は一人稱です) それでもよければゆっくりしていってください。
8 184【銃】の暗殺者
異世界に連れていかれた少年が暗殺者となってのんびりと過ごすお話です この作品に出てくる銃は素人知識ですので間違いがあってもご容赦を
8 55彼女が俺を好きすぎてヤバい
魔術を學ぶ學校に通う俺、月城翼には彼女がいる。彼女こと瀬野遙は、なんというか、その。ちょっと、いやかなりヤバい奴だった。ヤンデレとかメンヘラとか、そういうのではなくだな……。 (「小説家になろう」に投稿しているものと同じ內容です)
8 188帰らずのかぐや姫
それは昔々の物語。竹取の翁が竹の中から見つけたのは、大層愛らしい娘でした。 成長し、それはそれは美しくなった彼女を一目見よう、妻にしようと 多くの殿方が集まります。 しかし、彼らは誰も知りません。世に聞こえる麗しき姫君の実體を――。 ――――――――――――――――――――――――― 武闘派なかぐや姫がタイトル通り帰らないお話です。 ファンタジー要素込み。シリアス寄り。ハッピーエンド。 冒頭はかぐやが鬼を食らうことから始まります。特にグロ表現ではないですが。 完結済み作品。自サイトで全文掲載。
8 51