《鸞翔鬼伝〜らんしょうきでん〜》天命.二 水端〔壱〕

の修行の後。

翔隆とびたかは自分のすり傷などに、もんだ葉を付けながら聞く。

「ねぇ…義はさ、その金の目…嫌じゃないの?」

「…まあ…もっと暗いなら良かったが」

「一族じゃないんだよね?」

「ああ…そう聞いているが…実のところは定かではない」

「…そか」

そこに楓が握り飯の弁當を持って走ってきた。

「二人共! 休憩しましょ!」

「ああ、ありがとう」

が答え、差し出された竹筒をけ取る。

翔隆は、優しく笑う義と楓を微笑しながら見つめた。

〈父さんが認めたのって、去年だったっけ?〉

がここに住むようになってから、八年。

ーーー八年前、義は大怪我を負って運ばれてきた。

手當てをして、目を開けた時に目のが金で綺麗だと思ったのを、鮮明に覚えている。

志木達男衆は訝しがりながらも接していたようだ。

楓が好意を寄せるようになったのは、義の傷が癒える頃ーーー。

〈…違うな。二・三日したらもう惚れてたじだったな…〉

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は行く場所が無いとの事だったので、二人で志木に頼み込んで、義がここに住んでもいいという許しを得たのだ。

そうして翔隆は剣の師匠を得た。

…ついでに、どうやら義兄も得る事になるらしい。

今年には、正式に婿として迎えると志木が言っていた…。

翔隆は、小さな握り飯を一つ摑んで立ち上がる。

「俺、弓の練習に行くね!」

そう言って二人きりにする為に走り去った。

「あいつ…」

は苦笑しながらも握り飯を食べ、楓を見る。

「…五月にはカキツバタが見頃になる場所を翔隆に教わったんだが、行ってみないか?」

「いいわね! 來月中頃になるかしら」

「ああ…後で志木殿にも聞いてみよう」

二人は、寄り添いながら青い空を見つめた。

一方。

睦月はしばらく外で、里を眺めながら昔の事を思い出していた。

〈共に手立てを考えてしかったのに…〉

正直、あんな話は聞きたくなかった…。

しかし、自分が言い出したのも事実で、狹霧一族だという事も事実。

拓須は何一つ間違った事は言っていない。

何はともあれ、取り敢えず夕餉の支度をしなくてはならない。

〈一人か…義はどうするのか…〉

共に食べるかいに行って、睦月は戸を前に立ち止まる。

中から睦言の聲がしたので、楓といるのだろうと察して魚を獲りに川へ行く。

…こんな時に一人なのはし寂しくじる。

〈おかしなものだ〉

狹霧ではじなかったが、翔隆といる事で沢山増えてきた。

嬉しさ、楽しさ、悔しさ、悲しさ、寂しさ…こんなにも自分にがあるなんて知らなかった。

〈あ、夜中に翔隆が腹を空かすかもしれないな…何か用意しておくか〉

そう思いながら、睦月は枝で魚を捕っていく。

そこに、翔隆がやってきた。

「それ、矢でも出來るかな?」

「やってみたらどうだ?」

「やってみてよ。俺じゃ絶対無理なの分かるから」

そんな翔隆に睦月は苦笑して近寄り、弓矢をけ取る。

「…どうだろうな…」

そう言いながらも矢を放つと、矢の刺さった魚がぷかりと浮かんだ。

「やっぱり凄いや!」

翔隆は喜んでその魚を手にして、まじまじと見つめる。

「俺がやっても、こんな風に刺さらなくて逃げられちゃってさ。さすがだな…」

「力加減じゃないか?」

睦月は翔隆に弓矢を返して、取った魚を分ける。

「ほら、四匹あれば家族で食べられるだろう? …手ぶらじゃ怒られるぞ」

「ありがとう! じゃ、また後で!」

笑って言い、翔隆は走っていった。

朝と夕の食事だけは家族四人で摂とる、というのが決まりだからだ。

夜…

しい星々が空に散らばり、薄月夜の中を蟲や梟の聲が支配する。

木々のザワめきと心地よい風のる暗闇の小屋の中、絡み合う二つの影があった。

「お願い…もうし、こうしていて…」

闇の中に艶めかしいが月に照らし出されている。

その下には、逞しい男の…。

楓と義だ。

「…冷えるぞ」

そう言い、楓に著をまとわせてやる。

「どうした? お前らしくないな、楓…」

「…不安なのよ…」

そう言い、楓は義の首に顔をり寄せる。

「不安?」

「貴方が…何処かへ行ってしまいそうで…」

「ふ…。何処にも行きはしないさ。何故急にそんな事を?」

は、楓の髪を優しくでながら尋ねた。

「だって…」

言い掛けて、楓はふふっと笑い頬を染める。

〈だって、貴方の子が…居るんですもの……〉

楓はしそうに、そっと自分の腹をでた。

「なんだ?  一人で笑って…寒いのか?」

「うふふ…もう。ふふふふ」

楓はきゅっとり寄せ、義の背に手を回す。

は微苦笑しながらも、楓を抱き締めた。

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