《【書籍化決定】にTS転生したから大優を目指す!》84――新しい仕事の打ち合わせ
いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。
やっぱりガチでやってる運部の子達はすごいなぁと、彼達が大暴れしているのを橫目に見ながら、それなりにスポーツテストを頑張った。
私の績は大同い年の子達の平均點ぐらい、らしい。前世ではぶっちぎり最下位だったから、これでも十分な結果だと思う。はこれまで欠かさずやってきたので、立位前屈はクラスで一番の績だった。持久走も日々のジョギングのおかげで、平均より早いタイムでゴールもできたし。自分がやってきたことの結果がこうして出ると、達とさらなるやる気が湧いてくるよね。
一緒に回ったのは宇ちゃんと川本さん、そして口を開くとおイタしがちな三木さん。この子はこの口の悪さでよくこれまで平穏に暮らせていたなぁ思わなくはないけど、それはソフトボールで才能があったから周囲の大人達が積極的にかばったり、またある時は周囲のチームメイト達に我慢させてなんとか表面上を取り繕っていたらしい。
でもこの學校のソフトボール部は強豪で、三木さんと同じぐらいの実力の子は何人もいるそうだ。川本さんもそのひとりで、三木さんの言に腹が立つものの除け者にするには実力的に惜しいと、自主的にお世話係をやっているらしい。自分が貧乏くじを引いてことを自覚している分、損な分をしているようだ。
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『これでもほんのしマシになった方なのよ』と川本さんは苦笑していたので、私は『ご苦労様です』と小さな聲で労った。本當はお疲れ様の方が場に合っているのかもしれないけど、彼の苦労を思うと考えるより先にそんな言葉が口から出ていた。
川本さんと三木さんは運部だから當然好績で、私はところどころ平均以上があるけど大多數は平均點。そして生粋の文化系な宇ちゃんは、殘念ながら績がわなかったようだ。太って無くても運が苦手な子っているもんね、前世の私がけなかったのは完全に満が原因だけど。
閑話休題(それはさておき)。
やっとこさ學式から続いたイベントラッシュが終わって、來週からは通常授業になるみたい。験から中學に學するまでは々とゴタゴタとしていたから、洋子さんに仕事の方はちょっと抑え気味にしてもらっていた。でも普通の生活リズムに戻るなら、また頑張って仕事に打ち込まないとね。なにせ學費無料とはいえ、將來的にもお金は必要だもの。コツコツ貯めておかないと。
そんな話を帰りの車の中で洋子さんと話していると、今日はこの後に私の仕事についての打ち合わせがあるらしい。話を聞いてから検討して、その後で私の方に話を持っていくつもりだったそうなのだけど、『せっかくだから參加する?』とわれた。実は前に參加した打ち合わせがアレだったから、ちょっとだけ苦手意識ができちゃったんだよね。
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でも參加した方が企畫の詳細とか製作側の意図とか、そういうのは人伝に聞くよりもわかりやすいと思うから、できるだけ參加できるようになりたい。そんな風に気合をれて苦手克服のために參加することにした。隣で話を聞いていたはるかは、前ならきっと見學したいとミーハー心で言ったかもしれないけれど、あれから自分の演技を磨くことに余念が無い。今日も帰ったらすぐ稽古場に直行して、あずささんからもらっている課題をこなすそうだ。
営業さん達の方針も再度はるかのことも売り出すことになったらしく、今後仕事が舞い込んできてくれればいいなと事務所のみんなが応援してくれているとか。ちゃんと謝りにも行ったしね、はるかの反省と誠意をじ取ってくれた結果なんだと思う。
私もあっという間に追い抜かれないように頑張らないと。そんなことを考えていると車は寮に近づいていて、降ろしたはるかと手を小さく振り合ってからまたゆるゆると走り始める。
「ちなみに洋子さん、今回の打ち合わせ容ってもう聞いてます?」
「うん、あちらさんの気合いがじられるよね。普通は當日に資料をもらって説明してもらうんだけど、今回は前持って郵送してきたから。しかもこーんなに分厚いの」
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左手の親指と人差し指を使って、その資料の厚さを教えてくれる洋子さん。確かに分厚い、有名週刊マンガ誌ぐらいの厚さがありそうだ。
「テレビドラマの主役でね、兄と妹がご近所の問題なんかを解決していくっていうコンセプトらしいの。でも謎解きとかそういうのは橫に置いておいて、どちらかというと仲良し過ぎる兄妹に視聴者をヤキモキさせたいみたいね」
「それはつまり、ブラコンな妹とシスコンな兄のちょっと危ない関係みたいな話ですか?」
またし特殊な役なのかと、ちょっとため息をつきながら洋子さんに尋ねる。そういうイメージがついて、普通の役のオファーがこなくなるんじゃないかってなんとなく不安になるんだよね。
「とりあえず現時點では仲良し兄妹ってじみたいよ。ただ、腳本家が悪ノリしたらお兄ちゃんのことが大好きな妹とか、妹相手に道を外したお兄ちゃんみたいな展開もあるかもしれないけれど」
「そうなったら世間から叩かれそうですね……」
「大丈夫でしょ、十年ぐらい前には大々的に主婦達の不倫を描いたドラマが大ヒットしたんだから。視聴者もいろいろな語や刺激を求めているんじゃないかしら?」
それで過激な方向に突っ走って行って、規制やゾーニングが論じられた未來を知っているとしては苦笑するしかない。まぁ、私ひとりの力ではその流れをどうこうすることはできないので、結局は流れにを任せることしかできないんだけどね。
「本當なら私達から足を運ぶのが自然なのに、あちらからやってくるっていうことはかなり本気なんでしょう。詳しい話は、事務所で聞きましょう」
洋子さんがそう言ったので車の外に視線を向けると、事務所の駐車場にったところだった。寮と事務所は近いんだけど、話をしているとより時間が過ぎるのが早くじる。車から降りて事務所の中にると、まだ打ち合わせ相手は來ていなかった。
とりあえず洋子さんはいくつか急がないといけない事務処理があるらしいので、私はオープンスペースで自習でもしておくことにした。大學験対策で々な大學の赤本を神保町の古書店で買って解いているんだけど、案外答えが出せない問題に出會うことが頻繁にあるのですごく勉強にはなっている。ただ時間が経てば変化が起こり得る問題に関しては、赤本が何年のものなのかを確認して鵜呑みにはしないようにしている。必ず現在はどうなのかということを裏付けしないと、答え自が変わっている可能があるからね。
こんな問題は大學験では出ないだろうけど、ある果を全國で一番出荷している都道府県が30年後も同じかどうかなんて、わからないじゃない? 例として出すには稚拙だと、我ながら思うけれども。
インターネットが普及していたらなぁと、こういう時は真剣に思う。この時代だとパソコン通信を経由してインターネットに接続することはできるだろうけれど、使っている人が人數だと報量も圧倒的に未來に比べてないだろうし。
集中して勉強していると、肩をポンと軽く叩かれた。ハッとして振り向くと洋子さんがいて、視線をじてし首をかすとスーツを著たおじさんがふたり、何やら困ったように苦笑していた。あー、何度か聲を掛けてくれたんだろうけど、全然耳に屆いてなかったパターンかもしれない。慌てて席から立ち上がって、ペコリと頭を下げた。
「ごめんなさい、気付かなくて」
「いやいや、こちらこそ勉強の邪魔をして申し訳ない」
額に浮かぶ汗をハンカチで拭いながら、おじさんのひとりが手を軽く振りながらそう言ってくれた。私は慌てて機の上の勉強道を片付けて、おじさん達に対面の椅子を勧める。彼らが私達に名刺を渡して自己紹介をした後に腰を落ち著けたタイミングで、デスクのお姉さんがお茶を運んできてくれた。お客様の分だけではなく、私と洋子さんの分まで用意してくれたみたいで、正直がカラカラだったからありがたい。
去り際にウインクしてくれたお姉さんに小さく手を振って、打ち合わせに集中することにする。季節は春なんだけど今日はし気溫が高いので、さっきハンカチで汗を拭っていた方のおじさんが、味しそうにグイッと茶碗を煽ってを潤してから口を開いた。
「この度はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。まさか、すみれちゃんにも同席頂けるとは思っていませんでした」
「學校に迎えに行った際にこの打ち合わせの話をしたら、是非一緒に話を聞きたいとのことでしたので」
洋子さんが微笑みながらそう言ったので、私も話に合わせてぺこりと會釈しておく。何故かこの程度のことなのに、禮儀正しいとお褒めの言葉を頂いてしまった。一この人たちは普段どんな演者とお仕事をしているのだろうと、蕓能界の未年タレント達の態度についてちょっと心配になった。
「私が社した頃には新人類なんて揶揄されたこともありましたが、今の若い子達の方がよっぽど新人類ですよ」
「どれだけ時代が変わっても、最低限の禮儀っていうのは大事だと私は思うんですけどねぇ」
おじさん達がふたりでそんな會話を目の前でしているが、年齢的に槍玉に上がっている世代の當事者である私としては苦笑を浮かべるぐらいしかできない。洋子さんも曖昧に頷いて、『それでは、早速お話の方を……』などと話を進める。でもこの人達が特に他人を気遣わない人達という訳ではなく、この時代はこういうおじさんが多いんだよね。前世の平末期を経験しているとすごく無神経にじるけど、これが當たり前だと思っていると洋子さんみたいに軽くスルーできるのかもしれないけど。
「えー、今回はドラマの主演をすみれちゃんにはお願いしたいと考えておりまして。容の方は……」
「すみれには軽く説明しておきました」
「ああ、じゃあその辺りは割で。基本的にはお兄ちゃんと妹がご近所トラブルとか友達との人間関係とか、そういうのを解決していく話を予定しています」
ここまでは洋子さんから聞いていた話と同じだから、私はこくりと頷いた。
「腳本とシリーズ構がの人だから、ちょっと兄と妹とのみたいなのをれたいって言われてるんだけど、すみれちゃんはそこは大丈夫?」
ふたりの、年上っぽいおじさんの方が確認してきた。私としてはこの道を選んだ以上はラブシーンを要求されるのは覚悟しているけれど、私が演じる役が小學生という設定らしいので『過激なものでなければ』と倫理から條件をつけておいた。
「今回のドラマはトレンディドラマのターゲット層よりも若い、十代前半から半ばぐらいの子達でも楽しめるように作りたいと考えていまして。流行りだから観ている子達もいますが、容のミスマッチが起こっているんですよね」
なるほど、このドラマはこれからの方向探るテストケースということなんだね。私が出ている刑事ドラマでも、事件が解決したところでテレビを消しちゃう子供が結構いるらしい。今日のスポーツテストで、一緒に周った三木さんがこのタイプだったのだ。初日にクラスで自己紹介した時の知名度の低さを考えると、他にもそういう子がいるんじゃないかな?
「兄役はどなたを予定されてるんですか?」
「石くんにオファーを出しました。すみれちゃんが相手役ならと、ふたつ返事でOKしてくれましたよ」
わぁ、前に一緒に映畫を撮影した竜矢さんだ。あれからもたまに寮に電話してくれたり、テレビ局ですれ違うと挨拶と世間話をするくらいには仲良くしてもらっている。最後に會ったのは今年の2月ぐらいだったから、その後でこの話が飛び込んできたんだろうね。演技の素人だった竜矢さんは無理せず自然と努力ができる人で、クランクアップ前には初心者にしてはすごく上手に演技ができるようになっていたから、もし共演できるとなればあれからまたどれくらい長したのか楽しみだ。
本業のアイドルグループの仕事も好調って聞いているけど、そんなに仕事を詰め込んで大丈夫なのかな? 私が心配する筋合いじゃないけれど、ちょっと心配になってくる。
「すみれちゃんに妹役を演じてもらうのは決定なのですが、兄役は石くんを始めとして複數候補がいます。石くんにオファーを出してから々なところから是非ウチの所屬タレントに、みたいな橫槍が來ちゃってね。本人含めてオーディションを行って、決めるつもりなんですよ」
「それ、竜矢さんは納得してるんですか?」
製作側からオファーを出したのに、後からやっぱりオーディションをけてじゃ不満に思って當然だと思うけれど。でも竜矢さんも納得済みの話なのだと言われれば、それ以上は差し出口になっちゃうもんね。私も知ってる人だとやりやすいし、頑張ってと心の中で応援することにした。
HJ文庫11月刊に付屬していた小冊子には本日12/1に本作が発売とアナウンスされていましたが、殘念ながら諸事で延期しています。
予約してくださったり、購を考えてくださっている読者の方々にはご迷をお掛けしております。
公式から報解されましたら、活報告やTwitterに発売日を告知させて頂きます。
どうぞよろしくお願い致します。
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