《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》46 いつでもいっしょはいつまでもってことです

目が覚めたら朝ごはんの時間でした。旦那様におかえりなさいをしたのは夜明け前でしたので、ちょっとしか眠ってないと思いましたけど、丸一日眠っていたからだったみたいです。道理で隨分すっきりしていました。筋痛だってもうあんまりありません。元気です。

森に捨ててきたにんげんの中には屋敷の料理人や使用人がいたらしく、朝ごはんはだまり亭の料理人を呼んで作ってもらったそうです。飲食店としては領で一番稅を納めていた食堂なのに普通でした。だからでしょうか。第四王子はお殘ししてました。さくらんぼは味しいですよって教えて差し上げたら分けてくれたので、もしかしてちょっといいひとかもしれません。お城の人ですし。でも旦那様は気のせいだって言ってました。

私たちは今森の泉に向かっています。旦那様とロドニーや護衛たちとです。第四王子はじっと私を見てから「僕もう森はいいや……昨日見てきたし、なんか僕は見ない方がいいものな気がびしびしとする」と言って、ついてきませんでした。ってないですのに。

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「そっちですそっち!そう!」

昔ついていた細いけもの道はもうありません。けものというか魔王がつけていた道なので。だから先を行く護衛たちに枝や草を切り払ってもらいながら進みます。ワンピースはひらひらしてますけど、フードのついたショートマントで押さえてるし、ワンピースの下に長いパンツと膝までのブーツを履いているから歩きやすい。

泉はさほど森の奧ではありません。強い魔も滅多に來ませんし。あ、きのこ。ただ周りに迷わせの草が生えてるのでにんげんはあまりたどり著けないのです。勿論今は私が道案してるのでだいじょうぶ。

「奧様、このきのこ……」

「ぴかぴかですから!」

ロドニーが持ってる袋に拾ったりもいだりしたものをれていってるのですけど、そのたびにロドニーがどうしようって顔をします。牛と羊はおっきかったからどっちかしか選べなかった。なのでちっちゃいのならたくさんイーサンのお土産にちょうどいいと私は気づいたのです。蛇の抜け殻もぽいっといれたら、うぉって言いました。なんで。

「奧様!?」

「いいの生えた蛇なのでイーサンの帽子にできます」

イーサンは帽子が好きなのです。冬は特にあったかくしたいって言ってました。

「普通、蛇にはないんですよねええええ」

「……アビー、それ食べない」

手を繋いで橫を歩く旦那様を見上げるとにっこりして、繋いでない方の手を止められます。苦い葉っぱ。これはサクサクした歯りが気持ちよくて魔王の時はお散歩しながら齧ってたものです。ついうっかりしました。人間は魔王よりも苦いのが苦くじちゃうのに。葉っぱの代わりにちょうどいい枝を持って、脇の草を払いながら歩きます。あ!あれは!

「旦那様旦那様!ほらこれ!」

「――っれは」

「きっとイーサンにぴったりです!」

おっきな角が生えてる泥蝸牛(マッドコクリア)の頭の骨!ぴかぴかでつよそうな帽子です!

「う……っわ」

誰かがため息のように聲をこぼしました。鬱蒼とした森の中から突然開けた場所で、空と雲のを映し込んだ泉が目の裏に刺さるほど明るいしをけてきらきらしています。

この泉の底は白い砂と小石でいっぱいなのがけてるのですが、周りの葉っぱのが混じっているようにも見えるなのです。

護衛たちは泉の周りに散らばって行き、その中心あたりでロドニーが小石を均してシートを敷きます。お晝ご飯のサンドイッチもだまり亭の料理人に作ってもらったものです。

「……アビー、それ重くないのか」

「重くなってきました!」

「そうか……しまおうなー」

「はい!」

泥蝸牛の帽子は私にはちょっと大きかった。前が見ずらいですし。

帽子をぬいでロドニーのお土産袋にれてもらってから、旦那様と手を繋いで泉のほとりを歩きます。ころんころんとした小さくて丸い真っ白な石は、踏みしめるとしゃらしゃらと涼しい音を立てました。

海ほどではありませんが、泉だって波が寄せます。

ちゃぷちゃぷと小さな水しぶきをあげる波頭の白いの合間に、違うを見つけました。

「あ!あった!ありました!」

「あっこら!」

旦那様の手から離れて駆け寄って、そのを拾い上げます。足首まで泉に浸かってしまったところを、追いついた旦那様に両脇をつかんで持ち上げられました。ワンピースの裾はちょっと濡れちゃいましたけど、膝まであるブーツだから平気。

「旦那様旦那様!これ!これ!」

「お、おう?」

旦那様は私を持ち上げたまま、波の屆かないところに戻っておろしてくださいました。

ゆらゆらと輝く若い葉っぱの緑が混じる空は、旦那様の瞳が明るく揺らめいた時の

いつも下げている旦那様の石の首飾りを片手ですぽっと外して、高く持ち上げます。

泉と、石と、旦那様が並びます。

「ほら!全部旦那様の。同じ!」

「――っそうか。うん、アビー、冷たいだろう?手を拭こうって、え……」

ちょっと耳の先を赤くしてにっこりしてくれた旦那様に、もう片方の手を開いて見せてあげました。

今拾った金の寶魔石です。

ひとつまみくらいの大きさのそれは、日差しと水滴を濃い金にかして中心がゆらゆらと薄い黃に揺れています。

「え、え、え、えええええ!?」

「旦那様、私のの石を探してるって言ってました!ほら!私のです!」

「こ、これ、え?今拾ったのか?」

「私は目がいいので!」

旦那様は私のの石をピアスにしようかって言ってました。なかなか見つからないって。

「……君の、だな」

「これは可(・)(・)い(・)ですか」

「ああ、君みたいに可くて綺麗だ。本當に俺がもらっていいのか?」

「旦那様のです。私が旦那様の石持ってるのと同じです!一緒!」

旦那様は耳の先だけじゃなくって、お顔も真っ赤にしてぎゅっと抱きしめてくれました。ちょっと唸ってる。

だけどこれはうれしくて唸ってるのだと私は知っています。

いつでもいつまでも一緒なのが旦那様もうれしいのです!

いつもごひいきありがとうございます!豆田です!

今回で2章を終わりとしてしばらくお休みをいただきます。3章開始は來年3月くらいでしょうか…。

なぜならアビーの2巻が來春発売のため作業をしなくてはならないので!

ええ、來春発売です!ごひいきくださってるみなさまのおかげです。ありがとうございます!

2巻発売前までにストックを増やして3章開始に挑む所存です。

それとコミカライズも近々公開予定です。詳細はまたお知らせします。

できたらお知らせとコミカライズ発売記念SSとかゲリラ更新したい気持ちがとてもある。

なのでどうぞブクマはそのままで!そのままでおねがいいたします!ごきげんよう!

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