《従妹に懐かれすぎてる件》三月二十日「従妹と出會い」

大學二年生の春休みはとにかく暇である。

友人の多くは実家に帰ったり、夜の街で有り金全部溶かしたり、「俺は海外でビッグになるんだ!」とか言って日本から飛び出したり……っとまあ各々エンジョイしているようだが。

俺はそんな無駄な行はせず基本は家に引きこもり、時々サークルの仲間と顔を合わせて駄弁だべったりしてこの長い休暇をやり過ごしていた。

まだ若いのだから家に籠もってないで外に出ろ、何事も経験だ……と反論する人もいるかもしれない。

だが俺はそんな脳筋理論に真っ向から反対してやる。

それはただの綺麗事だと!

夜遊びや若気の至りと呼ばれる行が良い経験になるとほざく連中は、自分の犯した罪を他人に押し付け、尚且つ正當化しようとしている慘めな人間だと思っている。

俺はそんな風にはなりたくない。だから引きこもる! これが一番効率的!

……っとそんなこんなで今日も朝からPCを立ち上げ、まとめサイトを巡回する作業を続けていた。

Advertisement

因みにこれは俺の日課である。報収集は大切だからね。

そして時刻は正午を迎え、晝飯と食料の補給の為に仕方なくコンビニへ行こうと支度を始める。

そんな最中……。

ピーンポーンッ

部屋のチャイムが鳴った。

「おかしいな、俺に用事がある奴なんているはずがないのに……」

自分で言っておいて難だが寂しい人間だな、俺。

でもまあどうせ宗教かよく分からん勧だろう。

面倒だから居留守でいいや……。

そう思ったのだが、今回は取り敢えず出てみることにした。誰でもいいから會話をしたい気分だったのだ。

そんなこんなで重たい腰を上げ、ゆっくりと玄関のドアを開ける。

すると……。

「やっほー! ゆうにぃ、會いたかったよぉ!」

「ぐわぁ!?」

若いの子だと判斷するや否や抱きつかれた。

ちょ、なに……この狀況!?

「懐かしいなぁ、もう私嬉しすぎて泣いちゃいそう」

「もしかして……」

板にぎゅーっとの頭が押し付けられる。

そこからはの子特有の甘い香りが漂ってきた。

そしてその匂いに俺は妙なデジャヴをじていた。

ローズマリーの良い香り……これは!

「彩音……なのか?」

「うんっ! 久しぶりだね、ゆうにぃ!」

顔を上げたが満面の笑みを見せる。間違いない、従妹の星月彩音だ。

ここでようやく相手を判斷できたが、まず最初の予想を匂いで決めるなんて気持ち悪いと思うかもしれない。だが長い付き合いなので仕方がないのだ。言わば親族の直って奴である。

しかし相変わらず可いなこいつは……じゃなくてどうしてここに!?

「大荷みたいだけど……一どうしたんだ?」

側に置いてあるキャリーバッグは二週間以上滯在できそうな位のサイズ。ただ遊びに來ただけでは多すぎる荷にみえるが……。

「私ね、今日からゆうにぃの家にお世話になるから、その荷だよ!」

「…………はぁ!?」

今とんでもない事を言わなかったか?

彩音が俺の家で暮らすだと!?

「この近くの高校へ通うことになったからその間よろしくね! もちろん私の親と叔父さん叔母さんには話を通してあるよ!」

「いや、それ俺聞いてないんだけど!」

「だって、サプラァーイズッ、だもん!」

マジッすか……。

でも連絡はしかったな。部屋、汚いし。

「でも俺なんかと一緒でいいのか?」

「えぇ!? ゆうにぃと一緒がいいんだよ?」

「いや……もう彩音も高校生になるだろ? 昔みたいなそういうアレはもう……」

「駄目…………なの?」

目を見開いて上目遣いをする彩音。

ぐっ……そんな顔……可すぎるだろうがっ! 俺の理が持たなくなるっての!

「全然駄目じゃない、寧ろ大歓迎。ただ彩音がどう思ってるか気になってさ」

「どうって……何を?」

「いや…………俺の事嫌いになってないかなって」

「そんな訳無いじゃん! 私はずっとゆうにぃの事が大好きだよ?」

改めてぎゅっと抱きつかれる。

やべ、恥ずかしすぎるだろこれ。

「分かった、ありがとう。だから……取り敢えず部屋に上がって。ここじゃその……々とヤバいし」

「え? あ……あぁ、うん……」

年の子と抱きついている今の狀況を近所の人に見られたら誤解しか生まれないだろう。下手すりゃ通報される事案である。

素早く彩音を部屋の中にれて、やれやれと一段落をつく。

ったく……突然従妹と二人暮らしとかどんなギャルゲーだよ。

「ここでゆうにぃは生活してるんだねぇ」

「まあな。……ってかあんま周りジロジロ見るなって」

「いいじゃんいいじゃん! ここでゆうにぃが寢て、食べて、遊んで……ふはぁっ!」

「彩音……大丈夫か?」

そんな飛び跳ねて喜ぶような部屋でもないと思うんだけどな。

それよりもこいつこんなに可かったっけ?

いやそうじゃなくて……俺にこんな懐いてたっけ?

「これからよろしくね! ゆうにぃ!」

「……おぅ」

はじけるような笑顔を向けられ、心臓の鼓が一段と速くなる。

きっと今の俺は熱に浮かされているだけだろう。

ちょっと落ち著いて考えよう。うん、そうしよう。

    人が読んでいる<従妹に懐かれすぎてる件>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください