《従妹に懐かれすぎてる件》四月十一日「従兄とゲーム會議」
今日は學年が上がって初めてのサークル活の日。
學式が終わった直後から新生を引き込もうと勧活に切磋琢磨する真面目なサークルとは違い、我が漫畫研究部は紹介チラシを便所の個室にるだけ。りたい奴は勝手に來いという部長のやる気のなさが呈した勧スタイルで學シーズンを終えることとなった。
西日が眩しくなってきた頃。
周りをキョロキョロしながら歩く新生と思わしき男とすれ違い、俺はいつもの一室へと辿り著く。
校舎の角に位置するなんの変哲も無いこの部屋こそが駄弁りサークルと化した漫畫研究部の部室だ。
長い春休みを過ごしたからなのだろうか。口のドアが今までよりくすんで見えたが、俺は特に気にとめずに中にった。
「おーっす星月! 元気にしてたか?」
「星月先輩。今年もよろしくお願いします」
部長の長原先輩と部員の來宮が出迎える。
二人は各々の席に座っており、某攜帯型ゲーム機を手にしていた。どうやら通信対戦をしていたらしい。
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視線を下に落とし、ゲームを再開させた二人に適當な挨拶を返した俺は余っている椅子に腰掛ける。
「はぁ、やっぱス○ッチしいよなー。地○防衛軍も面白いけどさ、時代の流れはスプ○トゥーンだと思うんだよねー」
ガチャガチャと指を素早くかしながら嘆くのは部長。
「部費で買えないんですか? 姉の偉大なお力でこうパパッと……」
「うむ、一応申請はしておこうと思うが値段が高いからなぁ。教師を負かすプレゼンでもしないと無理だと思うぞ」
何やら真面目風に話しているが部費でゲーム機を買うとか論外だろ。大、漫・畫・研究部なんだぞこのサークルは。
「ネキ部長、うちはゲーム同好會じゃないんですよ。スイ○チがしかったら自分で買ったらどうですか?」
「何を言ってるんだ星月。金が無いからこうして悩んでいるんだろう」
馬鹿なのか? とでも言いたげな冷めた目線を向けられる。俺、間違った事言ってないよね? 常識的に考えた意見を述べただけだよね?
「姉、星月先輩を相手にしてはいけません。我々だけで教師共を「なん……だと……!?」と言わすようなプレゼンを考えましょう」
「よし、じゃあ対戦は一旦中斷だ。來宮、今すぐPCを立ち上げてパワポを開くんだ」
「了解ラジャー!」
素早く移してノートパソコンを開く來宮。なんだか部長の召使いみたいになってるな。
「うむ、全米が泣くぐらい凄いプレゼンを來宮が作ってくれるまで暇だから、星月。何か面白い話をして場を繋いでくれ」
「なんて無茶振りをするんですかネキ部長。面白いネタなんて何一つありませんよ」
無意味な外出を一切しない俺に無意味なエピソードがあると思った?
殘念~。皆無で~す。…………自分、泣いていいっすか?
「いくら姉でも流石に今のは酷すぎですよ。星月先輩が引きこもりのニートであることくらい存じてますでしょう?」
「おいこら俺はニートじゃねぇ。學生だろうが!」
「すまん星月。お前さんが引きこもりだと分かってたのに無理強いしてしまって……」
「ねぇ、俺にダメージ與え続けるのやめませんか? ちょっと心が痛くなりましたよ?」
俺、こう見えて豆腐メンタルなんだよ? しかも絹ごし豆腐だよ? 箸で摑もうとしてもすぐ崩れちゃうよ?
「よし、星月での時間稼ぎはこんなもんだな。來宮、次は君の番だ。何かネタを提供してくれ」
「そうですねぇ。何かあったかな……」
なんだよ俺の出番はこれで終了なのかよ。……別にいいけど。
一方、部長の期待の目を向けられた來宮はキーボードを軽快に打ちながら唸っていた。
そして……
「ギャルゲーあるある言い大會~」
これでもかという程の棒読みで來宮が宣言した。それに応じて部長も「うぇーい」と棒読みで返す。なんだこのやる気のなさは。
「まずは拙者から。主人公は學生なのに何故か一人暮らしをしている」
「あー確かに。海外旅行で留守とか鉄板だけど、息子を置いてバカンスとかもはや育児放棄だよね。親権剝奪されるよな普通」
大きく頷いた部長が補足する。まあ、ギャルゲーは皆の夢だからね。現実とは違って當然じゃないかな。
「次、姉の番です」
「よし、そうだな……。一人暮らしの主人公に押しかけるのは超絶!」
最初の展開でよくある奴だな。両親は知ってるけど主人公は知らなくて、馴染とひとつ屋の下で暮らすことになるとか。現実じゃ絶対に有り得ないよな。…………よな?
「次、星月先輩どうぞ」
「おぅ、じゃあ……。妹が攻略対象の場合だが主人公はシスコンである!」
「「自己紹介乙」」
二人に即答される。
待て待てぃ。俺はギャルゲーあるあるを言っただけだぞ。しかもシスコンじゃないし。
彩音は可くて純粋で自慢できる子だけどコンプレックスでは無いはずだ。
「というか姉。思ったんですけど星月先輩ってまさにギャルゲーの主人公ってじしませんか?」
「學生なのに一人暮らし。押しかけ従妹と同棲生活……。確かに完璧だ……」
「いやいや俺は別に…………當てはまるじゃねーか」
そうだよ、清楚で滅茶苦茶可い彩音がいきなりやって來て二人で暮らしているんだ。なるほど、俺は現実でギャルゲーを実現させた男なのか。なんかカッコイイな。
「何故こんな引きこもりが夢の生活を満喫しているんでしょうね。神様は頭おかしいですよ」
「來宮、違うぞ。ごく普通の男だからこそ許されるポジションなんだよ。おまけに本人も自覚無しときた……。まさに『この、ラノベ主人公ー!』だな」
「ネキ部長やめましょう。々怒られちゃいますから」
ヒートアップする二人を抑える。
でも、彩音が來てからの俺は確かにラノベ主人公なのかもしれない。……なんつって。
発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。
「おめでとう!抽選の結果、君を異世界に送ることになったよ!」 「……抽選の結果って……」 『百鬼(なきり) 樹(いつき)』は高校生―――だった。 ある日、授業中に眠っていると不思議な光に包まれ、目が覚めると……白い空間にいた。 そこで女神を自稱する幼女に會い『異世界を救ってくれないか?』と頼まれる。 女神から『異世界転移特典』として『不思議な銃』をもらい、さらには『無限魔力』というチート能力、挙げ句の果てには『身體能力を底上げ』してまでもらい――― 「そうだな……危険な目には遭いたくないし、気が向いたら異世界を救うか」 ※魔法を使いたがる少女。観光マニアの僕っ娘。中二病の少女。ヤンデレお姫様。異世界から來た少女。ツッコミ女騎士、ドMマーメイドなど、本作品のヒロインはクセが強いです。 ※戦闘パート7割、ヒロインパート3割で作品を進めて行こうと思っています。 ※最近、銃の出番が少なくなっていますが、いつか強化する予定ですので……タイトル詐欺にならないように頑張ります。 ※この作品は、小説家になろうにも投稿しています。
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