《従妹に懐かれすぎてる件》★四月十三日「従妹とお弁當」

高校生活が始まってから一週間。晝休みに一緒にご飯を食べたり、よく話すメンバーは大決まってきた。

そして四限目が終わり、今日も元気な遙香ちゃんが聲を掛けてきた。

「彩ちゃん、真緒っちー! 一緒にご飯食べよー!」

の片手にはナプキンで包んだ弁當箱。それを左右に大きく振り回している。中ぐちゃぐちゃになりそう……。

「軽々と私の名前を呼ばないで……水窪さん」

一方、真緒ちゃんはいつも通りクールな態度で遙香ちゃんに冷たい視線を送っていた。普段と変わらないけど、嫌がっているように見えるなぁ。

「もうっ! 彩ちゃんには優しいのになんでウチには冷たいのよ!」

「彩音……戦略的撤退しよ……ここは危険……」

「ねぇ真緒ちゃん。三人で食べようよ」

逃げ腰になる真緒ちゃんをなんとか食い止める。やっぱりご飯は皆で食べた方が楽しいし味しいと思うのだ。

「……彩音が言うなら仕方ない……今日は水窪さんと食べてあげる」

「なんで上から目線なのよ!」

悔しがる遙香ちゃんを私は苦笑いで返しつつ、三人の晝食は始まった。

「彩音……私のお弁當……し食べる?」

細々とした聲で真緒ちゃんが尋ねてきた。どうやらお弁當のおかずを分けてくれるらしい。こういうのを友達同士でやるのってなんかいいよね!

「うん、もちろん! じゃあどれにしようかな……」

真緒ちゃんの小さなお弁當を見ながら選んでいると隣から橫槍がってきた。

「ウチは真緒っちが食べたいなぁ!」

「……水窪さんには聞いてない。ってか…………そういうの……キモい」

「おぅ……ストレートに言われるとそれはそれで快かも……」

矢で抜かれたかのようにを両手で押さえる遙香ちゃん。なんか新たな領域に目覚めてしまったような顔をしているけど大丈夫かな……。

「彩音……決まった?」

「うん! この玉子焼きがしいな」

「……分かった」

すると真緒ちゃんは箸で玉子焼きの一切れを摑むとそのまま持ち上げながら

「口…………開けて?」

「えぇ!?」

まさかのあーんしてもらうパターン!?

予想外だったけど、ゆうにぃとよく食べさせあいっこをしていたから抵抗はそんなにないかな。

「私の…………食べて……ほしい」

「うん、食べるよ! ……あー」

大きく口を開けると真緒ちゃんは照れくさそうに頬を赤らめながら箸先を私の口へ運んでいく。

そして……らかなが咥に広がった。

「んっ……味しい! 私のより百倍味しいよ!」

「ありがと……これ、私が作ったの……」

顔を俯けてしまっているため真緒ちゃんの表を汲み取ることはできなかったが恐らく照れているのだろう。

それよりも彼の手作り玉子焼きは本當に味しかった。私にも作り方を教えてほしいな。

「ちょっと待ったぁ! 二人とも何やってるんだよぉ!」

痺れを切らしたのか、遙香ちゃんが聲を荒げた。

「真緒っちさぁ、ウチにキモいって言ったけど子同士で「あ~んっ」してる方がよっぽどキモくない!?」

「彩音となら……単なるスキンシップだから…………別にキモくない」

「じゃあウチにも何か食べさせてよ! スキンシップ大事だよ!」

「水窪さんにするのは…………キモい」

「なんで!?」

相変わらず遙香ちゃんには冷たい態度をとるんだなぁ……。というか私とのあ~んは気にしないんだ……。

「あ、真緒ちゃん! お返しに私のお弁當も食べていいよ、どれにする?」

「…………ほうれん草の炒めみたいなやつがいい」

「オッケー!」

「ちょっと彩ちゃんもノリノリにならないでよ! 見てて恥ずかしいよ!」

「いや、私は別に「あ~んっ」させる訳じゃ……」

言いながら真緒ちゃんの顔を見る。だが彼は既に口を大きく開けて待機狀態にっていた。無言だが「早くして」というメッセージが強く伝わってくる。

「えへへ、次は遙香ちゃんに食べさせてあげるから許して?」

「そういう問題じゃないよ! やっぱり子同士でこういうのは……恥ずかしいよ!」

別にこれくらい普通だと思うのは……私がおかしいのかな? それとも遙香ちゃんが恥ずかしがり屋さんなだけなのかな?

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<その後>

「もぐもぐ……彩音の手作りだから味しいけど……こしょうの効きが弱いのと塩をもうし控えて、油はオリーブオイルの方がすっきりしていいかも……」

「あの……味しくないならそう言って大丈夫だからね、真緒ちゃん!」

お世辭を言われた気がしてなんか気まずい……。

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