《従妹に懐かれすぎてる件》四月十八日「従妹ととろみ」
彩音がワンルームの俺の家に押しかけてきてから一ヶ月が経とうとしていた頃。
夕食を作る準備に取り掛かる彼を橫目に、俺はスマホのニュースサイトを流し見していた。
「ゆうにぃ、片栗ってどこにあるの?」
「片栗……? そんなもんウチには無いぞ」
元々一人暮らしをしていた俺は家事が大得意という訳でも無いし、調理師になりたい訳でも無いので當然ながら凝った料理は作らない。せいぜいカレーや軽い炒めものを作るぐらいだから調味料関係は塩コショウやマヨネーズ程度の基本アイテムしか無いのだ。
「そっか……。じゃあ作れないよ……」
「因みに何を作ろうとしてたんだ?」
「あんかけ焼きそばだよ。とろーっとしてて熱いのが食べたいの!」
言葉と共にジェスチャーを使ってとろみを表現しようとする彩音。言いたいことは分かる。が、何故か如何わしく聞こえたのは気のせいだろうか……?
「レトルトでもいいんだぞ。その方が時間もかからないし」
「確かにそうだけど……。私もんな料理を作ってみたいんだよね」
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口だけは一人前だが、実際の彩音の腕前は半人前かそれ以下である。彼を好き放題甘やかしている俺ですら酷評せざるを得ないのだから、見ず知らずの他人に食べさせたらそれはそれは酷い批判を浴びることになるだろう。正直な話「レトルトでもいい」ではなく「レトルトが・いい」と言いたかったぐらいだし。
だがそれでも俺は彩音に失なんかしない。寧ろ、自分の欠點を克服しようと取り組む彼を応援したくなるし、俺が出來る全てを與えたいと思っている。
「自分で作るなら味い料理にするんだぞ。自信が無ければ今日は俺が飯を用意する」
「うん……。でも私だってゆうにぃみたいに味しいお料理も作れるもん! 頑張るから私に任せてくれない?」
「そうか……。悪くない返事だ」
彩音と共に暮らす日々がいつまで続くかは分からないが、彼の手料理が上達すれば俺にとってもメリットとなるだろう。先行投資だと考えれば片栗の一つや二つなど屁でもない。
「じゃあ俺は足りない材料を買ってくるよ。片栗と……あとは何がしい?」
「がしい!」
なにロマンチックな事を言ってるんだよこの子は。
「は非売品なので買えません」
「なるほど……。ゆうにぃが私を想う気持ちはお金で買えるほど安くは無いってことか……」
「いや、そういう意味で言った訳じゃないんだけど」
「でも安心してゆうにぃ! 私のもゆうにぃしか買えない限定商品だから!」
両手でハートマークを作る彩音。あざとかわいい。
「なんか話が逸れまくってるぞ。結局買うのは片栗だけでいいのか?」
「あ、待って待って。私も行く!」
彩音は急いでエプロンを外し、ばたばたと支度を始める。
俺はふわふわと舞う彼のスカートを見ながら、苦笑いで溜め息をついた。
◆
夕暮れに染まる路地を二人並んで歩く。最寄りのスーパーは徒歩五分程度の距離にあり非常に便利なのだが、今日は足を延ばして駅前のデパートに行くことにした。メール購読しているWEBチラシに玉子ワンパック百二十八円(稅込)という記載を見て、買わずにはいられないと思っていたのだ。一人暮らしを続けるとこういった主夫力も自然とに付くのである。
「ねぇゆうにぃ、手繋ご?」
「やだよ、恥ずかしい」
彩音は外出時であっても平気で俺に甘えてくる。多は自重しているようだが、俺は恥ずかしさと周りの目が気になって仕方ないのだ。
「えぇー。でも普通に繋いでいる人もいるじゃん」
「それはカップルの話でしょ」
「え……。私とゆうにぃってカップルじゃなかったの?」
「いや、違うだろ」
そんな純度マックスな疑問の顔をされても困るんだが……。
「ゆうにぃは私のこと嫌い……?」
「嫌いじゃない……けど俺達従兄妹同士だし……」
「安心して。いとこは結婚もできるんだよ?」
一気に詰め寄られ、二の腕に彩音の肩が當たりそうになる。距離が近すぎないか……?
「民法七百三十四條によると傍系族の三親等以の婚姻を止してるけど、私達は四親等だからセーフなの。日本の法律が許してくれてるから思う存分好きになっていいんだよ?」
「いや知ってるけど……というか彩音は博識だな……」
「えっへん。ゆうにぃの為なら勉學も苦にならないからね!」
し得意げな顔の彩音。まあ実際、彼の績は當時の俺よりも遙かに良い訳で、都ナンバーワンで名高い進學校に余裕で學できるくらいなのだから、俺が文句を挾む余地は皆無だ。
「分かったから……取り敢えず外では大人しくしててくれ」
「むむぅ……。ゆうにぃがそう言うなら仕方ないなぁ」
「よしよし、素直な子は可いぞ」
「えへへ、照れちゃうじゃん、もうっ!」
「おいこら抱き著くな。離れろって!」
腕にしがみつく彩音をなんとか引き剝がす。
――やっぱ甘やかし過ぎはだな。
長らくお待たせしました!
今後暫くは1、2週間に1回程度更新できると思いますので引き続きよろしくお願いします!
乙女ゲームのヒロインで最強サバイバル 【書籍化&コミカライズ】
【TOブックス様より第4巻発売中】【コミカライズ2巻9月発売】 【本編全260話――完結しました】【番外編連載】 ――これは乙女ゲームというシナリオを歪ませる物語です―― 孤児の少女アーリシアは、自分の身體を奪って“ヒロイン”に成り代わろうとする女に襲われ、その時に得た斷片的な知識から、この世界が『剣と魔法の世界』の『乙女ゲーム』の舞臺であることを知る。 得られた知識で真実を知った幼いアーリシアは、乙女ゲームを『くだらない』と切り捨て、“ヒロイン”の運命から逃れるために孤児院を逃げ出した。 自分の命を狙う悪役令嬢。現れる偽のヒロイン。アーリシアは生き抜くために得られた斷片的な知識を基に自己を鍛え上げ、盜賊ギルドや暗殺者ギルドからも恐れられる『最強の暗殺者』へと成長していく。 ※Q:チートはありますか? ※A:主人公にチートはありません。ある意味知識チートとも言えますが、一般的な戦闘能力を駆使して戦います。戦闘に手段は問いません。 ※Q:戀愛要素はありますか? ※A:多少の戀愛要素はございます。攻略対象と関わることもありますが、相手は彼らとは限りません。 ※Q:サバイバルでほのぼの要素はありますか? ※A:人跡未踏の地を開拓して生活向上のようなものではなく、生き殘りの意味でのサバイバルです。かなり殺伐としています。 ※注:主人公の倫理観はかなり薄めです。
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