《従妹に懐かれすぎてる件》★五月十九日「従妹と五月病」
最近の私は不調だ。
なにをしてもやる気が湧かないし、寢付きが悪いせいで睡眠不足が続いている。おで頭が働かず、先日あった中間テストでは芳かんばしくない結果となってしまった。
「はぁ……」
登校中の今も溜め息ばかり零れる。病気では無いはずだけど、昨日ゆうにぃにも心配されたし、この狀態が続いたら病院に行ってみようかな。
「……あ」
駅に著き、いつものように鞄に手を突っ込んでから気付く。定期を家に置いてきてしまったと。
幸い財布は手元にあったので何とかなるが、このようなミスは不調と共に増えてきているのでやはり何とかしなくては。癥狀が悪化してからでは遅いからね。
それから切符を買ってホームへと向かう。しかし時間を見間違えており、乗りたかった電車は既に遠くの彼方へと消えていた。もうダメかもしれない、私。
◆
「それ……多分五月病……」
晝休みになり、いつもの二人と一緒にご飯を食べていると真緒ちゃんが無表のまま答えた。
Advertisement
「え、五月病って本當に存在するの!?」
「醫學的にはうつ病と診斷される事が多いらしいけど……確かに存在する……」
なるほどね……。でも眠いしやる気が出ないから癥狀は五月病っぽいかも……。
「最近の彩ちゃん、テンション低かったもんね。今まで気付けなくてごめんね」
「私も……彩音に相談されるまで分からなかった……」
「ううん、気にしないで! 私は大丈夫だから」
二人には心配を掛けないように元気に振舞っていたから分からなくて當然だ。私の問題なのに大切な友達にまで余計な迷が及んだら悪いからね。
「彩音……五月病を治す方法……知りたい?」
「え、うん、知りたい!」
私が答えると舞緒ちゃんはにっこり笑った。し怖いじがするけど……気のせいだよね。
「まず私の右側にいる子を教室から追い出して……それから彩音は私を包み込むようにハグすれば……治る」
「え、本當に!?」
「いや噓に決まってるやないかーい!」
即座に遙香ちゃんがツッコむ。一瞬信じちゃったけど噓だったんだ……。
「水窪さん……ネタバレ止……」
「いやいや、今のは黙っていられないでしょ! 何気に私を追い出そうとしてるし」
「…………バレたか」
「バレバレだよ!」
二人はまるで漫才のようにテンポよく會話を繰り広げている。舞緒ちゃんは相変わらず遙香ちゃんに冷たい態度をとっているけど、本當は仲良くなりたいのではないかと私は思っている。嫌いだったらこうやって三人でご飯を食べる事も無いだろうし。
「でもいつになったら治るのかなぁ。もしかして六月になるまでこのままかも……」
「それなら大丈夫……。確実では無いけど、癥狀を和らげる方法……知ってる」
先程とは異なり、舞緒ちゃんの表は真剣だった。今度は本當の事を教えてくれるようだ。
「彩音は……彩音のお兄さんが好きなんだよね?」
「うん、大好きだよ!」
「…………五月病は親しい人と一緒に居るとリラックスできて治ると言われてる……」
「そっか……。でも私はいつもゆうにぃと一緒だけどなー」
最近はあまりできてないけど、日々のスキンシップもしているし、ゆうにぃに対して不満は無いはずだけど……。
「……きっと刺激が足りないのかも……」
「刺激!? じゃあゆうにぃにもっと……!」
抱き著くだけじゃ駄目なのかな。となると…………キス? いやいや、それよりもっと激しいのだと――――何があるのだろう。よく分からないけどとてつもなく恥ずかしい気がする。
「ちょ、彩ちゃん!? 凄く顔が赤くなってるけど大丈夫!?」
「え! あ、あぁうん、私は平気だよ」
「彩音…………今エロい事考えてたでしょ」
な、なにぃぃぃ!?
舞緒ちゃん、そんな恥ずかしい事よく人前で堂々と言えるなぁ。しかも無表だし。
「違うってば! …………多分」
「隠す必要は無い。な彩音も……悪くないから」
「うぅ……でも私は嫌だよ……」
もしこれをゆうにぃに聞かれたら絶対嫌われるもん……。私は私らしく健全な方法でゆうにぃに好かれたいのだ。
「ごめん彩音…………言い過ぎた」
「うん、次から気を付けてね。私こういうの苦手だから……」
舞緒ちゃんの表は相変わらず汲み取りづらいけれど、心なしか眉が下がっているように見えた。私は別に怒ってないし、気分を切り替えていかないとね!
「でさぁ、結局どうしたら彩ちゃんの五月病が治るの?」
若干話題に置いてけぼりの遙香ちゃんが退屈そうに紙パックのジュースを手に持ちながら答えた。
「それは…………彩音のお兄さんが彩音に何かしてあげる必要があると思う。例えば…………遊びにうとか」
「なるほど、サプライズってヤツだね!」
何故か私よりもテンションを上げて返事をする遙香ちゃん。おかげで握っていた紙パックのジュースがし零れてしまった。
それにしてもゆうにぃが私を遊びにう、か……。そういえばゆうにぃの家で暮らすようになってから二人で遊びに出掛けた事ってまだ無いんだよね。あぁ、ゆうにぃと遊びに行きたいな……。
「舞緒ちゃん、ありがとう! 私もうし頑張ってみるね!」
「あ、うん…………分かった」
何をするにも面倒だと思う日々が続いたけど、今はほんのしだけ元気になれた気がする。家に帰ったら早速ゆうにぃに甘えてみようかな。
【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの少年は、眠りからさめた女神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】
サーガフォレスト様より、1巻が6月15日(水)に発売しました! コミカライズ企畫も進行中です! 書籍版タイトルは『神の目覚めのギャラルホルン 〜外れスキル《目覚まし》は、封印解除の能力でした〜』に改めております。 ほか、詳細はページ下から。 14歳のリオンは駆け出しの冒険者。 だが手にしたスキルは、人を起こすしか能がない『目覚まし』という外れスキル。 リオンはギルドでのけ者にされ、いじめを受ける。 妹の病気を治すため、スキルを活かし朝に人を起こす『起こし屋』としてなんとか生計を立てていた。 ある日『目覚まし』の使用回數が10000回を達成する。 するとスキルが進化し、神も精霊も古代遺物も、眠っているものならなんでも目覚めさせる『封印解除』が可能になった。 ――起こしてくれてありがとう! 復活した女神は言う。 ――信徒になるなら、妹さんの病気を治してあげよう。 女神の出した條件は、信徒としての誓いをたてること。 勢いで『優しい最強を目指す』と答えたリオンは、女神の信徒となり、亡き父のような『優しく』『強い』冒険者を目指す。 目覚めた女神、その加護で能力向上。武具に秘められた力を開放。精霊も封印解除する。 さらに一生につき1つだけ與えられると思われていたスキルは、実は神様につき1つ。 つまり神様を何人も目覚めさせれば、無數のスキルを手にできる。 神話の時代から數千年が過ぎ、多くの神々や遺物が眠りについている世界。 ユニークな神様や道具に囲まれて、王都の起こし屋に過ぎなかった少年は彼が思う最強――『優しい最強』を目指す。 ※第3章まで終了しました。 第4章は、8月9日(火)から再開いたします。
8 98勘違い底辺悪役令嬢のスローライフ英雄伝 ~最弱男爵家だし貴族にマウント取れないから代わりに領民相手にイキってたらなぜか尊敬されまくって領地豊かになってあと王子達にモテたのなんで???~
男爵令嬢のカリンは、幼少期に連れられたパーティーで、主催者である伯爵令嬢に心無い言葉を投げかけられて――彼女のようにズケズケとものを言っても許されるような存在になりたいと心の底から思ったのだった! カリンは悪役令嬢を目指すことを決意する! そして十三歳となった時には、カリンはその地位を確立していたのだった! ――領民相手に! パンをパシらせてはご褒美という名の餌付けをし、魔法も使え剣の指導も受けているカリンはすっかりガキ大將となった! そんなカリンに待ち受けているのは、小麥の高騰によりパンを作れなくなったパン屋、畑を荒らす魔物、そして風俗狂いの伯爵令息! さらには、そんな困難に立ち向かう姿を見初める王子達…! 貧乏領地で細々と領民相手に悪役令嬢っぷりを振りかざすだけで満足していたカリンは、しかしその思惑とは裏腹に、誰もが彼女に好意を寄せることとなるのだった。
8 129高校生である私が請け負うには重過ぎる
海野蒼衣(うみのあおい)、高校三年の春。 そんな時期に転校してきたのは黒衣をまとった怪しげな男子高生。 彼には決して表向きには行動できないある『仕事』を行なっていた⁉︎ そしてひょんな事から彼女は、彼の『仕事』へと加擔せざるを得ない狀況に陥ってしまう。 彼女の奇妙で奇怪な最後の一年間が始まろうとしていた。
8 159複垢調査官 飛騨亜禮
某IT企業に勤務する《複垢調査官》飛騨亜禮と、巨大小説投稿サイトの運営スタッフの神楽舞とが繰り広げるドタバタコメディミステリー。 第二章では、新キャラの坂本マリアとメガネ君も活躍します。 第三章ではネット小説投稿サイト三國志的な話になってます。 第四章 僕の彼女はアンドロイド 少年ライトとアンドロイド<エリィ>の物語。ベーシックインカムとかアンドロイドが働いて家族を養ってくれる近未來のお話です。 第五章 複垢調査官 飛騨亜禮2 TOKOYO DRIVE(複垢狩りゲーム) 『刀剣ロボットバトルパラダイス』に実裝された<TOKOYO DRIVE>の謎を巡って展開する異世界バトル。 http://ncode.syosetu.com/n6925dc/ 第六章 《複垢調査官》飛騨亜禮の華麗なる帰還 《複垢調査官》飛騨亜禮が新ネット小説投稿サイトの調査に赴く。彼はそこで想像超えた恐るべき小説たちと出會うことになる。 第七章 AIヒューマン 「複垢調査官 飛騨亜禮」は第四章〜六章が未完になってますが、まあ、人工知能✕VALUの小説を書いてみようと思います。 複垢調査官 飛騨亜禮 https://kakuyomu.jp/works/4852201425154917720 書きたい時が書き時ということで、第四章なども書きながら完結させていきたいですね。 第四、五、六、七章は同時更新中です。 ほのぼのとした作品を目指します。
8 153異世界転生〜貰ったスキルはバグ並みでした〜(仮題)
普通の高校1年生の主人公の八神優羽(やがみゆう)は、一緒に學校から帰っていた幼馴染の桜井結月(さくらいゆづき)を助たが、優羽はその車に轢かれて死んでしまった。そして、神たちと出會い貴族のヘンゼル家の三男アレク・ヴァン・ヘンゼルとして異世界で第二の人生を歩んでいく。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 作者はこれが初作品ですので、読んでみてどんな感じか、どこを改善したほうが良いかなどを、コメントでやさしーく、やさしーく教えてください!(豆腐メンタルが傷付きます…) 題名などはまだ仮なので変えるかもしれません…。
8 62永遠の抱擁が始まる
発掘された數千年前の男女の遺骨は抱き合った狀態だった。 互いが互いを求めるかのような態勢の二人はどうしてそのような狀態で亡くなっていたのだろうか。 動ける片方が冷たくなった相手に寄り添ったのか、別々のところで事切れた二人を誰かが一緒になれるよう埋葬したのか、それとも二人は同時に目を閉じたのか──。 遺骨は世界各地でもう3組も見つかっている。 遺骨のニュースをテーマにしつつ、レストランではあるカップルが食事を楽しんでいる。 彼女は夢見心地で食前酒を口にする。 「すっごい素敵だよね」 しかし彼はどこか冷めた様子だ。 「彼らは、愛し合ったわけではないかも知れない」 ぽつりぽつりと語りだす彼の空想話は妙にリアルで生々しい。 遺骨が発見されて間もないのに、どうして彼はそこまで詳細に太古の男女の話ができるのか。 三組の抱き合う亡骸はそれぞれに繋がりがあった。 これは短編集のような長編ストーリーである。
8 161