《お姉ちゃんがしいと思っていたら、俺がお姉ちゃんになったので理想の姉を目指す。》2話 お前がお姉ちゃんになるんだよ!
おかっぱ気味の肩近くまである若干茶髪がかった髪。髪のと同様ののシュッとした眉。若干キツそうな細めの黒い瞳。薄ピンクの健康的で瑞々しい。さが殘りあか抜けてもいない可らしいお顔。見た目からして中學生と言ったところか。そんな俺の妹であったはずの『琴音』が鏡には映っていた。
俺は鏡に映った琴音を見つめながら右手を上げてみる。すると鏡に映った琴音は左手を上げる。今度は左手を上げ萬歳の格好を取る。すると鏡に映った琴音も同様に萬歳をしている。つまりこれってよぉ。
「俺、琴音じゃん!!?」
何がどうなってんのか全くもって意味がわからないのだけれど、俺は妹であったはずの琴音になっていた。更に言うと過去に戻ってさえいる。本來の俺は今年で23歳だ。妹の年齢は3歳違いなので今年で20歳になっていなければおかしい。だが、鏡に映る自分の見た目と母親が言っていた『學式』。このことから導き出されるのは、俺こと琴音が今12歳であり中學生になるのだということだ。もうね正直々あり過ぎて頭がクラッシュ狀態です。うちの脳は現用系しかないため一度ハングアップしてしまうと予備系に切り替わるということはありえません。可用とはンゴゴゴゴゴゴゴ。
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「ほらぁ!啓一も遙一も早く起きなさい!お姉ちゃん ・・・・・もう起きてるよ!あんたたちも學校でしょ!!」
んん?待て、待て待て待て!今、お姉ちゃんって言ったかママン?!うち確かに3人兄弟でかつ妹であった琴音は一人娘になるため長だ。遙一が末っ子だから確かにお姉ちゃんであることは間違いではない。だけど啓一はつまり俺だ。そして俺が啓一であった時は長男でこの三人兄弟の一番上でお兄ちゃんであったはずなのだが、今のママ上の言い方ではまるで、琴音である俺が3人兄弟の一番上であるかのような言い方なんだけど……。
「ふぁ~……てあれ、姉ちゃんまだいたの?俺も洗面臺使いたいんだけど」
そんなこと考えていると一人の男のが顔を出してきた。俺が恐る恐るその男の子の顔を見ると、そこにいたのは紛れもなく俺自だった。
同じく若干茶髪じみた黒髪。眼鏡をかけてふてぶてしい顔。聲変わりはしていないため以前のようなイケボとは言い難いが、代わりにいいじのショタボイス。そしてそいつは俺こと琴音のことを『お姉ちゃん』と言った。
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「ん、んん。ねぇごめん。もう一回言って」
俺はあまりの衝撃にもう一度言えと目の前の俺に問いかける。いやいやだって俺が妹になってるってだけでも信じられずにいるっていうのに。あろうことか俺が俺のお姉ちゃんになってるって許容範囲オーバーもいいとこだよ。ナニコレ?ねぇ、なんなのこれ。
「え?だから早く洗面臺使わせて姉ちゃん」
かつての俺は訝し気な表をしながら俺のことを姉ちゃんと呼んだ。あ、やっぱり聞き間違いではなかったんですね。つまりこのショタは俺で……なんか俺って言葉がゲシュタルト崩壊してきてんな……もういいや、かつての俺は啓一君と呼ぼう。自分のことを名前で呼ぶってすごく違和あるけど。じゃなくて、啓一君は俺こと琴音の弟ということだ。つまり俺はこの兄弟の中で一番上の長というわけだ。助けて、もう頭がパンクしちゃいそう……。
「あ、うん。そう……だね。ごめん」
「別にいいけど……」
取りあえずこのままボーッとしててもどうしようもない。俺は適當に返事をして洗面臺を明け渡す。すると啓一君はそんな俺を見てコテンと頭を傾げる。
……あら可い。なんかグッとくるというか背中がざわつくというかを締め付けられて思いっきり抱きしめたくなるというか――っていかんいかん。それって完全に自分可いってやつやん!ただのナルシだよ!俺は邪念退散!と頭をぶんぶんとふり足早に部屋に戻る。取りあえず、取りあえず!今の俺は何故か妹である琴音になっており、かつ中學の學式であると。つまり、とにかく、今やらなければいけないのはなんだ。
俺はあえて気になっていることを無理やりそういうものだと納得し、やらなければならないことに集中することにした。
ハンガーにかかっている俺の制服と思われる生徒用制服を手に取り著替える。ものの制服なんて著たことはないが、の中學はブレザーとスカートなので著るのは難しくはない。ワイシャツに著けるリボンも爪でくっつけるタイプなので簡単。ものの數十秒で著替えは終わってしまった。とはいえ本當にきちんと著れているのか不安であったため、洗面所の鏡を使おうと思ったが今度は末っ子の遙一君が使っている。どこで確認するかなーと思った時、そういえばトイレの前に大きな姿鏡があるのを思い出しそこに自を映す。
「……」
うん。悔しいが似合っている。なんてありえない著ることはないと思っていたが、今の俺はなのだ。そのの子が生徒用の制服をきるのは至極當たり前で似合うのもまた當たり前だ。なんか神が男だけに凄く複雑な気持ちだが……。
「……(クルッ」
ちょっとターンとかしてみる。するとスカートがふわっと広がりひざからし上までがあらわになる。おぉこれがチラリズムというやつか……自分で言うのもなんだが結構これグッと來るな。このままイエイ☆みたいなポーズなんかもしちゃったり――。
「あら~可い。似合ってるじゃん。制服もらって嬉しくなるのもわかるけど飯も食いへ~」
ビシッとが固まる。
壊れたブリキのようにギギギと後ろを振り向けばそこにはお母さまがいた。
「~~っ!!」
見られた!今ターンしてまんざらでもない顔してるの見られた!!
俺はママ上の不意打ちに顔を真っ赤にし聲にならないび聲を上げる。するとそれを見て更にママ上はニマ~といやらしい笑みを浮かべながら「早く飯食いへ~、ぷぷ」と言っていった。ておい!ママン最後笑ってたろ!!僕の神にこれ以上追い打ちかけるのやめれ!!
あーもう顔から火が出そう。ほんとなんなんだよも~。
俺はお母さんの言葉通り臺所に向かい、用意されている朝ごはんを食べ始める。
……最近ずっと一人飯っていうか、ちゃんとしたご飯を作って食べてなかったからか凄く味しくじる。ていうかなんか涙出そう。
「なぁに~?あんた中學生になるのが嬉しいからって泣くの早くない?」
「ちがっ、泣いてないし!」
「ふふ、はいはい。それ食べ終わったら歯磨きね。7:40には出るから、ほらいそぐ!」
あ゛ぁ゛ー!!!
また変なとこ見られた!なんなのなんなの!なんでこの人はそういうとこしっかりと見てくるかなぁ!俺もうズタボロなんですけど!!
母親の不意打ち二連発に心憤慨しながらも時計をチラッと見ると……07:20。
「って、もうじゃん!!やばいやばい!!」
「だから早くしへってさっきから言ってるじゃなー」
「そうだったね!そうだったよ!!」
俺は急いで、それこそ淑には似付かわしくない、技かきこみを繰り出し無理やり胃袋に納め、捨て臺詞のようにごちそうさまっと言い洗面臺へ向かい歯を磨く。ついでにさっき直し損ねた寢癖を櫛で直す。そしてそこへ続々と啓一君と遙一君がやってきて歯磨きをし出す。ぐ、人口度が……。俺は早々に洗面所から退散し學校指定鞄を手に持ち玄関で待機する。程なくして啓一君と遙一君、そしてママ上がやってきた。
「琴、啓、遙。忘れない?」
「うん、大丈夫」
「ない」
「ないと思う……ふああ」
口々に返事をし車に乗り込む。遙一君はまだ目が覚めないのか眠そうな足取りで後部座席に乗り込んでいる。俺は一瞬運転席に乗りそうになったが、今は未年でかつ免許もないJCだ。慌てて助手席に乗り込む。
「さ、いくよ~。シートベルトちゃんとつけなさい」
後ろからはめんどくさい~という弟二名の聲がするが、俺は言われるまでもなく既にシートベルトを締めてある。助手席危険だしね、多はね。
程なくして車は発進する。そしてお母さんは俺を見て嬉しそうにこう言った。
「し早いけど、中學學おめでとう。これでまたし大人に近付いたね」
「……ありがとう」
ごめんお母さん。大人に近付くも何も、神的には20超えた大人なんです。その純粋な祝福が俺の穢れた心を浄化していく……くっ、灰になっちまう。汚れすぎたから灰しか殘らねぇぞ。
途中でブラザーズを小學校に降ろし、しして目的地へとついてしまった。
校門を見てみると沢山の學生と親さんで溢れている。し右を見れば「東中學校學式」の文字。風が吹き舞っている桜の花びら。
しい景ではあるが……うん、やっぱり俺本當に中學生になっているんだなというのを再度思い知らされた。実はここまで妄想だよ☆みたいなのを期待して視線を自のに向けるが、そこにあるのは紛れもないの子のだ。
俺は頬に掛かる髪のを指でくるくると巻きながら吹っ切れた。というか吹っ切れないとおかしくなりそう。
うん。
もうあれだ。
けれよう。
なんか夢にしては覚める気配もないし。
だったらこれを俺の現実として生きるしかないんじゃない?人生諦めが肝心だし?
の子になるのを憧れてたことも……まぁあったし結果オーライ?ただ一つ不満なのは、俺はお姉ちゃんがしかったわけで、俺がお姉ちゃんになりたかったわけではないのだが……この際あれだ。俺が理想のお姉ちゃんとなって、俺の代わりに啓一君や遙一君を可がってやろう。うん!そうしよう!!
そのためにはそうだな。まずは一人稱を改めるとしよう。『俺』は封印して『私』にしよう。の子だしそっちの方が自然だものね。ついでに喋り口調もの子ぽくしないとだな……だね。
よっし!なんかまだし頭が混してるけど私は今の私をけれての子として生きてやる!そして理想のお姉ちゃんになってやる……なるんだから!
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