《お姉ちゃんがしいと思っていたら、俺がお姉ちゃんになったので理想の姉を目指す。》48話 わたくしも母ですが……
「――以上ですか?では今度こそ行きますね。この後も予定がってますので」
私は、そう早口に言うと、これまた足早に家を出る。家の前に止めてある車に素早く、しかしみっともなく見えないように乗り込みシートベルトをし、エンジンをかける。エンジンがかかったのを確認したのでアクセルを踏み発進する。
ある程度進み、貴音たちの家が見えなくなった頃、私は近くのコンビニに車を止めハンドルに突っ伏した。
「……はぁ……やってしまいました……」
私は手痛い失敗をしてしまい心からしょげてしまっています……。何をやらかしてしまったのか、それはあの家での私の態度です。
「なぜ……何故……あそこであんな冷たい対応をしてしまうのでしょうか……」
まず一つは、貴音に対してです。
貴音は私がお腹を痛め産んだ娘。正真正銘の娘です。の繋がりも半分はあるのです。そんな貴音ですが、はっきり言いましょう。大好きです。娘可いです。例えそれが30過ぎになろうと私にとっては可い娘なのです。もう一度言いましょう。可い娘なのです。
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本當であれば抱きしめてそのままグルグル回りたいぐらいなのです。流石に年なのでできませんが……いえ、もし貴音が「ママお願い」なんて言って來たら腰を犠牲にしてでも回りましょうや。
それだけ私にとっては大切な家族なのです。貴音をごもってすぐに夫は消え、仕事も上手くはいきませんでした。その時はお腹の重みがただの重しでしかありませんでしたし、何よりにっくきあの男との子供だと思うと嫌悪しかありませんでした。ですが、おろすという選択肢は私にとってとてつもなく恐ろしいものであり、そんな勇気は結局生まれることはありませんでした。
しかしそれで良かったのだと今は思っています。いえ、貴音が産まれてきてくれたその瞬間からその思いは消えました。あるのはただの慈しみとしさだけ。貴音の皺くちゃな笑顔を見て、あぁ、私はこの子のために生きてきたのだと、そうじました。
貴音が産まれてから全てが変わりました。男には逃げた元夫のおかげで興味がなくなり、私の力源は貴音の存在だけでした。仕事も上手くいかなかったはずが、貴音のことを思えばどこまでも頑張ることができ、気付けば會社を立ち上げ、気付けばそれなりの財産を気付きあげていました。
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しかし私はどこがで間違ってしまったのです……。仕事が思う様に行き過ぎたが故に、娘に金銭的に辛い思いをさせないために必死で仕事をこなしてきましたが、逆に言えば仕事だけ。貴音のことは當時近くにいた妹に任せ、母親らしいことはおろか、顔を合わせることも多くありませんでした。家に帰るのもそれこそ1週間に1回帰れればいい方……貴音ニムが不足し、どうしてもダメな時だけ帰っていました。
それがいけなかったのです。仕事が軌道に乗り、既に私が會社に付きっ切りでなくてもよくなった頃には、貴音は結婚をし初孫である琴ちゃんが産まれていました。そして、私も私で、今まで全く向き合ってこなかったが故に、貴音にどのように接したら良いのかわからなくなってしまったのです……。
貴音もそれは一緒でしょう……いえ、貴音の方が苦しく辛いのでしょう。私という母親がいるのに、その母親との思い出は數える程しかない。お遊戯會や運會も……表立って応援することはできませんでした……何とか時間を作って除いては最高の瞬間を寫真に収めたりはしましたが……あ、貴音の寫真なら全て額縁にれて飾ってあります。青森の職場兼マンションにですが。厳重な警備の元、私の書斎に飾っているのです。それのおかげで今までやってこれたのですよ。それはもう。元気がなくなればひたすら寫真を見て、嬉しくなったら寫真に話しかけて……今思えば電話をすればよかったのですが……その時は猶更嫌われているのではないかと恐ろしかったのです。
結局、今となっては貴音に嫌われてしまい完全に目の上のたんこぶです。どうせ冷たいだけの金おばあちゃんとでも思っているのです……うぅ……。
ですがこれは私が招いてしまったことなので仕方ないのです。これぐれいの苦しみ……貴音がじてきたものに比べるまでもありません。
さて、話がそれましたが、つまり何が失敗だったのか。それは私の態度です。先ほども聞きました?ではもう一度言いましょう。私の態度です。
「なんなんですか……あの、如何にもお高くとまった態度。明らかに口煩い姑のもの……あれでは貴音が酷い態度をとってしまうのも頷けます……」
私も好きで……あのような態度をとっているのではないのです。それだけはを張って言えます。私、貴音のこと大好きなのですよ?してして、そりゃもう目にれても……痛いでしょうけれど気合でれれるくらい好きなのです。できることなら「貴音ちゃん大好き!もう離さない!」などと生娘のようなことを言って抱きしめたいのです。こののにある想いを曝け出したいのです。
ですが……ですが!!
「素直になれないのです……」
素直に……なれないのです。
原因はわかっています。私が仕事にかまけてしまい、気付けば距離を失ってしまったのです。娘との接がなすぎたが故に、私は……接し方がわからなくなってしまったのです。殘ったのは社長として常に鋭利な気配を漂わせることだけ……娘の前ではやるまいと思っていたのに、気付けばそれが平常として固まってしまったのです。
あんまりです!
私はただ、貴音ともっといちゃいちゃしたいのです!いいえ!貴音だけではありません!!
孫!
私の孫たち!
なんて……なんって可いのですか!!
あれはこの世に舞い降りた天使!あの子たちが実は名のある天使だと言われても私は驚いたりなどしません!寧ろ納得です!
よーちゃんはマイペースで、し人並み外れたと言葉遣いを持った天然年!決して目の前で笑ったりはしませんが、心の中では大笑しています!にやにやもしていますよ!!
続いてけーちゃん!あの子は普段はふてぶてしいお顔をしてらっしゃいますが、好きなもの食べたり見たり遊んだりしている時の表は最高です!ついでに可いお顔をしてますから、の子の格好をさせたらすっごく似合うと思うのです!!いつか著せて寫真に収めたいです!!
そして琴ちゃん!!あの子は……格別です……。川田3大天使の中で頂點に位置します。特に今日の姿。あれほど長した姿を見られるなど……信長公をリスペクトしなくて良かったですわ。人間50年ではあれほどのらしい姿を見ることはできませんでしたからね!
私のベストアイショットは、私を桜祭りにってくれたあの笑顔……なんなんですか?!可くて気配りもできる孫ってハイスペックじゃないですか?!私の孫なのに凄いです!……いえ、貴音の娘ですから流石貴音です!!貴音凄いです!!そして孫可いです!!!
「だと、だと言うのに……」
私は控え目にハンドルに頭を打ち付けます。
本當は激しくへどばんなるものをしたいのですが、それをしてしまうとクラクションや、最悪エアバックが出てきてしまいますからね。でもこの衝は抑えられないので軽く、コツコツコツと叩きつけます。
何故、何故私はあぁなのですか。娘も孫も可い。してます。世界で一番してます。本當はその想いをきちんと言葉にしたいのに……いざ目の前に立つと姑のように小言と堅苦しい言い方しかできないのです……。ついでに目も鋭いと前會社の人に言われてしまいました……絶対孫たち怖がってます……怖くないよ?おばあちゃん怖くないよ?
「あぁ……誰か、私に勇気を……」
本當に、ため息しか出ません……。
これが仕事を一心不にこなしてきた報いなのでしょう。家族を顧みなかった……わけではないのですが、それを大事にしなかった私への……。
「はぁ……」
またため息です。
ため息のだけ幸せは逃げると言いますし……あぁ、そうだ。ここは楽しいことを考えましょう。楽しいこと、いえ、嬉しくなることがありました。
「琴ちゃんが私と、著ででぇと」
明後日にようやくお休みを勝ち取ることができましたので、ここは一つ思い切ってってみようと思ったのです。きっと斷られてしまうと思い、期待していなかったのですが、琴ちゃんは私と著でぇとしてくださると言うではありませんか……!!
「く、くふふふ……」
笑みがれてしまいます。まだ明後日のことだと言うのに、既に幸せげぇじが頂點に上がろうとしています。
「琴ちゃんと、でぇと。楽しみです……」
あぁ、早く明後日なってくれないでしょうか?できれば貴音やけーちゃん、よーちゃんも來てほしいのだけれど……やはり難しいでしょうか。既に貴音には斷られていますし……。
そう思うとまた気分が落ち込みそうになります。ですが、琴ちゃんとでぇとすることを考えれば何とか私は元気になれます。壽命が5年程延びる勢いです。
そうと決まれば。
私は背筋をばし気合をれます。
この後の仕事を終わらせなければ明後日の楽しみは全ておじゃんです。ここは一つ頑張る時というものです。
「さて、頑張りますよ」
私はアクセルを踏み會社へと急ぐのであった。
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