《お姉ちゃんがしいと思っていたら、俺がお姉ちゃんになったので理想の姉を目指す。》52話 桜舞落ち、花見をせよ乙 おぶ せかんど。

「もー!琴ちゃん遅いよー!」

「あはは、ごめんごめん。結構混んでてさぁ」

私の前にはリスのようにプクーっと頬を膨らませたみーちゃん。如何にも怒ってますというじである。両手を腰に當てて上半だけずいっとこちらに出してくるのなんてヒロイン。

こんなの男だったらイチコロですよね。てゆーか、現実でやる人初めて見たかも。

「ん、許す。でもあんまり心配かけちゃダメだよ?」

「もーみーちゃんは心配だなー」

「だって大事な大事な大事な琴ちゃんだもん」

「せ、せやな」

本當にみーちゃんは心配だ。というか過保護?そこまで気をむ必要も無いと思うのだけれど、こうして有無を言わせないように言われては首を縦に振るしか無くなるというもの。

「……」

「みーちゃん?」

みーちゃんは急に真顔になると、ずいっと私に顔を近付けてきた。そして何をするのかと思いきや、スンスンと鼻を鳴らしているではないか。

「……くんくん」

「ど、どうしたの?」

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突然の奇行に私はドキマギとしてしまう。いきなり鼻を鳴らされたらどないせっちゅうねん。てゆーかなに?私ってくさいの?なんかこんなじの前もあった気がするけれど!汗か!変な汗かいたからその臭いがするというのか!

私は不安になってきたので二の腕付近を鼻に近付けて嗅いでみる。が、自分の臭いなんてわかるか!周りの屋臺の匂いぐらいしかせんわ!けどすっげぇ気になるんですけれどー!!

「琴音?」

「はいっ!なんでしょう!」

私が自の臭いに気をんでいると、今度は両肩をガシリと摑まれ名前を呼ばれた。思わず丁寧語で返してしまったが、それをやったのは目の前にいたみーちゃんである。とゆーか、今久々に名前で呼ばれた気がする。

「なんかね、気のせいだと思うんだけど、琴音から知らないオトコのニオイガスル……」

「ひぇっ!?」

何を言い出すかと思えば、みーちゃんは平坦な聲で言った。

てかやめて!

そのハイライトのない瞳やめて!尋常じゃなく怖いからァ!!

取り敢えず、取り敢えず!弁解しないとヤられる!悲しみの向こうへと行ってしまう!みーちゃんの瞳にはハイライトの代わりに本気て書かれてるし!

「そ、そりゃこれだけの人がいるんだから知らないオトコ?の匂いもつくわけで……」

「へぇ〜?でもこんなにも濃く……ふふ、なんでたろうね?私の予想では犬系男子な、そうイケメンな同い年のオトコノコの匂いがするなぁ〜?ねぇ?ふふ、ふふふっ……」

「な、なななな何を仰ってるんですか鈴さん。いやぁ、ねぇ。私にそんな人なんていらっしゃらないのお知りでしょう?ははっ、ははは……」

「ふふふ……」

「は、ははっ……」

何故だ!

何故こんな浮気のバレた夫のようなことを私はしているんだ!てゆーかみーちゃん鋭すぎでしょ?!なんで匂いで、しかも僅かに付いてるか付いてないかでしかない僅かな匂いで神代君の人像がわかっちゃうわけ?!

ヤバイよみーちゃん!君FBIとかにれちゃうよ!特殊捜査待ったなしだよ!ワンちゃんもビックリだよ!

「悪い蟲、悪い蟲よね……。大丈夫だよ琴ちゃん?私が琴ちゃんにつく悪い蟲は払い落として上げるからね?悪い蟲は……消毒だよ……ふふふ」

「ひぃぃー……」

みーちゃん怖いよぉ!絶対こんな娘じゃなかったよ!私か!私が悪いのか!こんな娘にしてしまったのは私なのかぁーー!!!

「またいちゃいちゃしてるよ」

私が真っ黒みーちゃんにガクブルうひぃ……となっていると、耳障りの良い聲が聞こえてきた。それは最も聞き慣れている聲だ。

「け、けーちゃん!助けて!お姉ちゃん死んじゃうかもしれない!」

私は聲のした方にゴキブリの如く素早く寄っていき抱きつく。

「ぐえっ!ね、姉ちゃん苦しい!ていうか抱き著くな!」

「そんな悲しいこと言わないで!私にはもうけーちゃんとよーちゃんしかいないの!」

「だったら遙一に抱き著けよ!」

「えー、おれも嫌だー」

「ならもう、けーちゃんしかいないよ!」

「なんでそうなる!?」

みーちゃんが怖すぎるのでけーちゃんに抱き著いたわけだけども、抱き心地良き。やっぱりを分けた姉弟だから安心するのかな?

ただ、けーちゃんの方ははなせー!と暴れているのでそうでも無いのかも。あ、また、が痛い……。

「まぁまぁ琴ちゃん落ち著いて?ほんの冗談だから。それに啓一君もそんなに暴れないの、ね?」

「う、うん……」

「じ、冗談?ホントに冗談?」

「ほんとだよ〜」

みーちゃんはまぁまぁとさっきまでとは打って変わり、いつも通りの優しげでぽわぽわしたじに戻っていた。

実はさっきまでのは私の幻覚だと言われても信じちゃうね。妖怪七変化だよ。てゆーか。てゆーかなんだけどー。

「じー……」

「な、なんだよ姉ちゃん」

私はジト目で両腕に収まってるけーちゃんの顔を見る。それでいてプクーっと頬が膨れていく。

けーちゃんなんですけど。けーちゃんなんですけどぉ!

「みーちゃんの言うことは素直に聞くんだ……お姉ちゃんには冷たいのにぃ……」

「べ、別に誰にでもそうだし!」

けーちゃんは私に抱き著かれたまま上目遣いで赤くなり慌てる。

何そのわかりやすい反応!今抱き著いてるのは私なのに!なんか面白くないー!

「ふふ、琴ちゃんヤキモチ?」

「そうかもだけど……そうかも!」

「じゃあ私も抱きついちゃおうー」

「うわー!やめろー!!」

みーちゃんと私に抱き著かれて茹でられたタコさんもびっくりなくらい真っ赤になるけーちゃん。正直羨ましいぞ。

前世でそんなイベントなんて皆無だったから、今生?のけーちゃんは幸せものだね!因みに今の私も合法的にの子に抱き著けるので、ある意味幸せ。

の子にサンドイッチ狀態のけーちゃんは腕をバタバタとかし先程よりも激しく暴れる。けれど私だけじゃなくみーちゃんも抱き著いてるわけだから抵抗も虛しく。

「うちの下も可いけれど、けーちゃんも可いよね!私のところの弟にならない?」

「えぇー?!いや、あの、それはちょっと……」

みーちゃんは怪しい笑顔を浮かべながらけーちゃんの頭に顎を乗せている。當のけーちゃんはというと満更でもなさそうにしている……満更でもなさそうにしているぅ!!

「むー!それはちょっとなに?なんなのー?私が姉だとダメなの?ねぇダメなの?こんなにもけーちゃんのこと大好きなのにぃ!」

「いや、それはその、あれだよ!言葉のあやというか……」

「本心じゃお姉ちゃんのことなんか嫌いなんだ!うわぁぁん!!」

「うげっ!やめろよ!いい歳こいて泣くなよ!」

「私だってまだ中學生だもん!子供だもん!泣いてもいいじゃん!」

「しるかよ!ていうか熱い!鈴も姉ちゃんもはなせー!」

「私はまだ寒いからもうしこのままがいいなぁー」

「うわぁぁぁぁぁ!みーちゃんに取られちゃうー!そんなのヤダー!!」

「うるせー!耳元でぶなよ!……って、姉ちゃん!鼻水、鼻水!」

「乙は鼻水なんか垂らさないもん!」

「垂らしてんだから乙じゃねぇよ!」

和気あいあいとしていたのは初めだけ、気付けばそこは地獄絵図楽園。けーちゃんはどせばいいの?とパニックになりあたふた。私はけーちゃんが養子に出てしまうかもしれないという危機に號泣。みーちゃんはそんな私とけーちゃんを見てニコニコ。

なんだこのカオスは……。

「わいは。けー、モテモテだな」

「んだね。みー、けーちゃんのこと嫁……じゃなかった。婿で貰ったら?」

鈴が相手なら……ま、いっか?」

當人達の一大事をなんのその、雪さんとお母さんはのほほんと會話していた。

だが、聞き捨てならないことがあったので私とけーちゃんは母達の方へ顔を向ける。全くの同タイミングだったのはやはり姉弟だからだろう。

「「よくない!」」

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