《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》初めての戦闘
ふと気が付くと、見渡す限り何処までも続く広い草原がそこにあった。
げ!
なんだこの植!? 顔があるぞ!?
それに太が青い……青くっている!
驚いた。
本當に異世界とやらに召喚されてしまったわけか。
う~ん。どうしたものか。
ゲームで培った知識を參考にするならば、最初にするべきことは、『街を目指す』ことなのだろう。
幸いなことに俺の直ぐ近くには人が通った後のような道が見える。
この道を辿って行けば何時かは、人のいる街に到著するのではないだろうか?
「……魔だ」
暫く切り開かれた道を歩いていると、前方に長50センチにも満たない緑のをした小人を発見する。
どうやら向こうからは俺の姿は見えていないらしい。
どうする? 戦うべきなのか?
ゴブリンと言えば、ゲームの世界では割と序盤から登場するモンスター。
試しに戦闘を行うには、おあつらえむきの相手かもしれない。
けれども。
異世界に召喚されるにあたり授かった俺の職業は魔使い。
普通に正面から毆りに行くのは何かが違う気がする。
こんなとき俺のやっているオンラインゲームなら親切なナビゲーターが、チュートリアルの説明をしてくれるのだが……。
現実はままならないものである。
「……いや。待てよ」
名案を閃いた俺は、カプセルボールのスキルを使うことにした。
直後、俺の掌からは半明のカプセルが召喚される。
「おお。やっぱりいるみたいだ」
よくよく目を凝らしてみると、カプセルボールの中には金髪のアフロディーテの姿があった。
「ふふふ。もうどうにでもな~れ~」
しかし、先程までの威勢の良さは何処にやら。
アフロディーテは持っていた枕を座布団代わりにして、虛ろ気な眼差しでボールの中で育座りをしていた。
さて。
どうやったらボールの中から彼を出すことが出來るのだろうか?
スキルについては心の中で念じることで使用することができた。
ならばカプセルボールから魔を呼び出すのも、同じ要領で出來るのではないだろうか?
ものは試しに俺は心の中で『召喚』という言葉を念じてみる。
すると、次の瞬間。
カプセルボールはの粒子を発して、人の形を作るようになる。
の中から現れたのは、金髪巨の絶世の――。
アフロディーテであった。
「よお! また會ったみたいだな!」
「……ふぇ?」
アフロディーテは育座りの姿勢で地面に腰を落としたまま「何が何だか分からない」と言った表で、パチクリと瞬きをしていた。
「ちょっと! 貴方! なんてこと……なんてことを!?」
「いや。その節は悪かったよ。俺だって悪気があってやったわけじゃないんだ。許してくれ」
「あ@kjbxじゃs」scんあいぐすいッ!」
アフロディーテは、言葉にならない言葉を発しながらも俺の倉をつかんでブンブンと揺する。
「というか、この場所で騒ぐのは々とまずいって! 向こうにいる魔に気付かれちまう」
「はぁ? 魔ですって?」
アフロディーテはようやく俺の服を離すと、魔のいる方に視線を向ける。
「魔って。ハンッ! たかだかゴブリンじゃない」
「たかだかって……。もしかしてアフロディーテって、とんでもなく強かったりするのか?」
「當然でしょ。仮にもアタシは神なのよ? 神であるアタシが魔ごときに遅れを取るはずがないじゃない!」
「おお。そいつは心強い……! なら手始めにそこにいるゴブリンを追い払ってくれないか?」
「仕方がないわねー。それが終わったら々と話を聞いてもらうわよ!」
アフロディーテはゴブリンの方に向かってトコトコと歩くと、仰々しく右腕を天に向かって突き出し。
「哀れなる子羊よ。の神アフロディーテの名の元に神の裁きをけよ! ゴッドブレス!」
格好良く決め臺詞を口にする。
ところが――。
威勢の良い言葉を口にしたにもかかわらず。
ゴッドブレスどころか、そよ風の1つも吹きはしない。
「お、おかしいわね! ゴッドブレス! ゴッドブレス!」
アフロディーテは立て続けに技の名前を口にするが、相も変わらず周囲には何の変化も見られない。
それどころか大きな聲を出したせいで、ゴブリンにこちらの存在を勘付かれてしまう始末である。
「ソータ……。だ、だずけ……だずけで……」
「…………」
ゴブリンにヒラヒラの服を引っ張られたアフロディーテは涙目になっていた。
この神様は本當に……何から何まで頼りにならないやつであるらしい。
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