《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》鬼メイドの目覚め

「大丈夫? ケガはなかったか?」

「……う、うん。ありがとう。お兄さん」

尋ねると、リンゴ売りのは丁寧にお辭儀をしてくれた。

今回のことでハッキリと分かった。

俺の《絶対支配》のスキルは、使い方によってはこの世界の常識を本から崩壊させかねない危険なものである。

幸いなことにゴブリン軍団を召喚したタイミングで、店にいた人たちは逃げ出してしまったらしい。

目撃者の數を最小限に抑えられたようで何よりである。

「ソータ。なんというかその……アタシからこういうことを言うのも不本意なんだけど……」

モジモジと恥ずかしそうに視線を伏せながらもアフロディーテは告げる。

「今日のことだけど。しだけ……格好良かったわよ」

「はは。そりゃあ、どうも」

まさかアフロディーテの口からそんな言葉が出てくるとは予想外であった。

神さまからお褒めの言葉をけることができるとは、栄な限りである。

よっしゃ。

事件も一段落したことだし宿屋に戻ることにするか。

あまりこの場に留まっておくのも賢い選択ではないだろう。

~~~~~~~~~~~~

ゴブリンたちの頑張りもあって、本日の冒険では予想していた以上の大金を稼ぐことができた。

というわけで今夜の宿は、浴室のついたリッチなものを選ぶことにする。

値段は一泊7000コルと昨夜に止まった宿の料金と比較をして2倍近かった。

けれども。

久しぶりに浴室で汗を流すことができるのだ。

このままではは臭くなる一方だし、発する価値は十分にある。

さてさて。

半日ほどボールの中でを休めていたからだろう。

森の中で出會った吸鬼のメイド、キャロライナはすっかりとの傷を癒していた。

「んん……」

「ああ。目を覚ましたか」

暫く宿屋のベッドの上で寢かせていると、キャロライナが自らの意識を取り戻す。

「……魔王……さ……ま?」

俺の姿を見るなりキャロライナは妙な言葉を口にする。

「えーっと。誰かと勘違いをしているんじゃないか?」

尋ねると、キャロライナはハッとなり我を取り戻す。

「……こ、これは申し訳ありません。私ったら記憶が混しているみたいで。えーっと。ここは一どこなのでしょうか?」

「ここはセイントベルの街の宿屋だよ。キミが森で倒れているいたから街まで運んだんだ」

「そうなのですか。この度は助けて頂きありがとうございます。本當になんとお禮を申し上げれば良いのやら。私の名前はキャロライナ。キャロライナ・バートンと言います。

親しいものからはキャロと呼ばれています。あの……よろしければお名前を教えて頂けませんか?」

「ああ。俺の名前はカゼハヤ・ソータっていうんだ」

「ソータさま……ですか。貴方が私のことを助けてくれたことは、朧気ながらも覚えています。

崖から落ちて木の上に引っかかっていた私を救って下さったのはソータさまですよね? おかしいですよね。意識は朦朧としていましたが、ソータさまの顔はハッキリと覚えていました」

「そうか。それは良かった」

々と説明の手間が省けたようで何よりである。

それから。

キャロライナは暫く何かを考え込んでいたかと思うと、ゆっくりと口を開く。

「あの……そこでソータさまに相談させてしいことがあるのですが。私の方からソータさまに何か恩返しさせて頂けませんか?」

「恩返し?」

「ええ。こういう言い方をすると、厚かましく聞こえてしまうかもしれないのですが……。

私はこのセイントベルに奴隷として連れてこられたのです。ここから出たところで私には仕事も、帰る場所すらもありません。なのでソータさんのお傍に置いて頂き、生活のお手伝いをさせて頂ければな、と」

「……俺としては大歓迎なんだけど、生憎とこっちにはメイドさんを雇うカネがないんだよなぁ」

「えっと。それなら大丈夫です。元々、無理を言っているのはこちらですし最低限の食さえ確保して頂ければ何も不満はありません」

キャロライナの言葉が本當ならばこんなに嬉しい話はない。

「こう見えて私は戦闘にし自信があります。冒険に連れて行って頂けばソータさまの役にも立てるかと思います」

おそらくキャロライナの言葉は本當だろう。

のステータスはとは思えないほど平均値が高いものであった。

「分かったよ。そこまで言うのならキャロのことを拒む理由はないかな」

「本當ですか!?  ありがとうございます! ご主人さま!」

「ご、ご主人さま……!?」

「ええ。これからソータさまは私のご主人さまになるわけですから、そう呼ぶのが適當かと思いまして。……何か変だったでしょうか?」

「変じゃない! 変じゃないさ! 是非とも今後は俺のことはご主人さまと呼んでくれ!」

なんということだろう。

どうやら今日から俺は、キャロライナのご主人さまになったらしい。

お金を払わずにの子から、『ご主人さま』と呼んでもらえる日がくるとは思わなかった。

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