《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》勇者で魔王

とんでもない人に出會ってしまった。

諸々の説明をけたキャロライナは、驚きを隠せないでいた。

地上で最上級の神族と出會ってしまうということもそうだが、キャロライナにとってそれ以上の衝撃だったのが、神族を従える人間の存在であった。

魔王復活の予言をけて、別世界から勇者が召喚されていることは知り合いの魔族から聞いていた話であった。

けれども。

神すらも従えることの出來る加護については、300年以上の年齢を重ねたキャロライナすら聞いたことのないものであった。

……いや、正確には過去に1人だけそれに近い力を持った存在を知っていた。

大魔王――イブリーズ。

300年前にアーテルハイドに君臨して、人々に恐れられた存在である。

イブリーズはアーテルハイドに存在する『全ての魔を支配する力』を以て、絶対的な地位を確かなものにしていたのである。

何故だろう。

一目見たときから、ソータの姿には魔王の面影が重なって見えていた。

もしかしたらこの、異世界に勇者として召喚されたカゼハヤ・ソータという年は、魔王の生まれ変わりなのではないだろうか?

キャロライナの中に芽生えた疑は、次第に確信へと変わっていった。

拠としては2つある。

1つは、近日中に魔王が復活するという予言が高名な予言師の口から出ていること。

イブリーズのような強大な力を持った魔族は、たとえが朽ち果てようとも魂までは完全に消失することはない。

こういったケースの場合は、數百年という年月をかけて別のに転生することが常とされていた。

もう1つは、長きに渡り魔王の元に仕えていたキャロライナの勘である。

誰よりも近くてイブリーズの傍で仕えて、彼のことを心の底からしていたキャロライナだからこそ分かる。

間違いない。

カゼハヤ・ソータという年は、魔王イブリーズの生まれ変わりである。

本人には自覚はないようだが、予言が確かであれば、やがて彼は魔王の力に目覚めてアーテルハイドの頂點に君臨する存在となるだろう。

ならば自分の使命は、全力を以てして彼の手助けに応じることである。

(しかし、奇妙な巡り合わせもあったものですね。貴方とまたこうして巡り合う機會を得ることができるとは……)

誰よりも強く、絶対的な存在であったイブリーズはキャロライナにとって憧憬の対象であった。

(ふふ。私としてことが……気持ちが昂ぶってしまっていけません)

キャロライナは再び魔王の元に仕えることが出來る喜びに打ち震えるのであった。

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