《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》早贄

それから。

2時間くらい森の中を彷徨い歩いただろうか。

の臭いを嗅ぎ分けるという、キャロライナの特技も手伝ってついに俺たちはコカトリスの居場所を突き止めることに功する。

コカトリスはカスールの森の中にある樹の中でも一際背の高い大樹の上に寢床を作っているようで、現在は巣の中でを休めている最中であった。

「それにしても……酷い臭いだな」

コカトリスが寢泊まりしている大樹の枝には、ウルフを始めとする様々な生の死骸が串刺しになっていた。

を當てて、干しでも作るつもりなのだろうか?

ちょっとした地獄絵図である。

そう言えば日本にいる百舌鳥という鳥にも似たような習があったっけ。

「……って。何でアタシはこんな目に合わされているのよー!?」

自ら置かれた危機的な狀況に気付いたアフロディーテは、悲鳴にも似た聲を上げていた。

「おいおい。何でもするって言ったのはディーの方だろ」

「うぅぅ……。たしかに言ったけど……。言ったけどぉ……! 囮役を回されるなんて聞いていないわ! 限度っていうものがでしょぉっ!」

今現在。

アフロディーテは、コカトリスの寢泊まりしている大樹の近くにある木の幹に磔にされていた。

縄でを拘束されたアフロディーテは、元が良いじにはだけて、太わになり、扇的な雰囲気を醸し出していた。

ちなみにこの縄はシエルが植の蔓を加工して作ってくれた特別製である。

名付けて……コカトリス作戦!

それこそれが、俺の編み出した今回の任務における必勝法であった。

「ソータの鬼! 悪魔! カゼハヤ・ソータなんて無駄に爽やかな名前の癖に! やっていることは鬼畜そのものじゃない!」

名前は関係ないだろう。名前は。

「まあ、そう言うな。これは神である……お前にしか出來ない仕事なんだ」

「アタシにしか出來ない……仕事……!?」

「ああ。普通のの子には、モンスターをすることなんて不可能だろ? これは神であるアフロディーテにしか出來ない仕事なんだ!」

「……!?」

俺が説得すると、アフロディーテはハッと何かに気付いたような面持ちになる。

「フフ。フフフ。仕方がないわね~。も~っ。ソータったらアタシがいないと何にもできないんだからっ」

「ああ。ディーには何時も助けられっぱなしだな」

當然、何もかも噓だ。

あの鳥のバケモノにの容姿の良し悪しが分かるとは思えない。

本人の前では口が裂けても言えないのだが――。

桁外れの生命力を持ったこいつなら、何かアクシデントがあっても簡単に怪我を負ったりしないだろうから囮役には最適だと考えていた。

「ご主人さまは……普段は蟲も殺さなそうな顔をしているのに時折、驚くほど酷いことをするのですね」

「上手く口車に乗せて神さまを生贄にするなんて……。ソータさんは非道ッス……。鬼畜ッス……」

俺の考えを見かしたキャロライナ&シエルは、チクリと刺すようなツッコミをれる。

くっ……。

俺だって罪悪がないわけではないんだぞ?

けれども。

何より今はコカトリスを倒すことを優先したい。

そのためには手段を選んでいられる余裕がないのである。

この作戦が上手く行ったらアフロディーテには、後で好きな服を買ってやることにしよう。

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