《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》育座り
「ソ、ソータさん! この壁の中から鉱石に匂いがするッス!」
それから。
暫く歩くとシエルが、興気味な口調で巖壁の方角を指さした。
「おお! そうと分かればさっそく探してみよ……」
「待ちなさい!」
ツルハシを片手に採取に乗り出そうとする俺を制止したのは、アフロディーテであった。
「ソータ! ここは1つ……アタシに任せてもらないかしら? こう見えてアタシ……鉱石の採取に関しては腕に覚えがあるの」
「おお! マジでか!?」
人は見かけによらないんだな!
こういう場面で経験者がいるのは心強い。
「ええ。なんて言ったってアタシは他の神族たちとモソハンで狩りに出ているときも、みんながボスと戦っている時に1人で鉱石を採取しているよ! ポッと出のシエルちゃんなんかには負けないわ!」
「…………」
ゲームの話かよ!
それって単に他プレイヤーに寄生しているだけじゃねーか!
まあ、実のところアフロディーテの働きには最初からあまり期待していなかったわけだが。
「アタシの活躍に括目しなさい!」
大きなを張って宣言すると、アフロディーテはツルハシを力一杯に振りかざす。
「ゴッド……アタァァァァァァァックッ!」
スゲー!
これが神様の力か!
ツルハシを振るう度、アフロディーテの二つのはポヨポヨと大きく揺れる。
その破壊力たるやゴッドの名に相応しいものがある!
あ。
ちなみに採掘テクそのものは至って平凡なものであった。
「ちょ! アフロディーテさん! そんなに暴に扱って……石が傷ついてしまったらどうするんスか!?」
「……ダメなの?」
「ダメに決まっています! 自分に貸して下さい!」
アフロディーテからツルハシをぶん取ると、シエルは淡々と作業を開始する。
流石に武屋を切り盛りしているだけあってシエルは手先が用だな。
その採掘スピードはアフロディーテの3倍近くあるだろう。
シエルは丁寧でいて手際の良い仕事を続けていく。
「カハッ! 仕事ぉ……アタシの仕事がぁ……!」
一方のアフロディーテは、地面に育座りしてしょんぼりとしたじになっていた。
まったくこいつは……いつも空回りばかりしやがって……。
俺がアフロディーテを勵ましに行こうとした次の瞬間。
窟の中に盛大な発音が響き渡る。
「どわぁぁぁっ! キャロライナさん!? 何をやっているのですか!?」
「……道を使ってチマチマと掘っていくのは効率が悪くないでしょうか? ここは私の魔法で一気に破壊するのが正解かと」
「だからって……ファイアーボールを壁にあてるのは止めてしいッス!」
やはり趣味のことになると何処までも強気になんだな。
シエルは強引にキャロライナからもツルハシをぶんどると、1人でモクモクと作業を再開する。
「クッ……。このような屈辱は初めてです……!」
「うぅ……。どうしてアタシだけぇぇぇ……」
シエルに注意をけたアフロディーテ&キャロライナは仲良く(?)並んで育座りをするのであった。
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