《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》中腹の山小屋
マグマロックとの戦闘から更に一時間ほどが過ぎた。
相変わらずに俺たちはドラゴンを見つけることが出來ないままに登山を続けている。
「ソータさん。そろそろ戻らないと亀車に置いてきぼりにされてしまうッス」
「……分かっている」
帰り道は下りなので登るよりは楽だろうが、そのことを考慮しても探索に使える時間は僅かである。
くそう……。
アフロディーテはマグマロックの破片が手にって喜んでいるみたいだけど俺としては全く納得が行っていない。
せっかく遠出したのに収穫がリザードマンだけっていうのは果が渋すぎる。
何か――。
何かないものだろうか?
この際ドラゴンじゃなくても良い。
何か此処まで來て良かったと思える収穫が手にったら、今すぐにでも探索を中止して下山したいところであった。
「あれは……?」
そんなことを考えている時だった。
山の中腹に木材で作られた建を発見する。
最初は冒険者が使う休憩スペースか? とも考えたのだが、それにしては様子がおかしい。
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その小屋は「魔でも住んでいるのか」とツッコミをれたくなるような奇妙な形をしていた。
「うおおおおお! す、凄いッス!!!!」
突如としてテンションを上げたシエルは小屋に向かって走り始める。
「シエル。何か分かったのか?」
「この小屋は凄いッスよ! こんな山の中に置いておくのは勿ない! 高度な技法の數々によって作られた蕓品ッスよ! 見ているだけで職人魂が疼くッス!」
「そ、そうか」
気のせいかな。
キラキラと眼を輝かせるシエルは、以前に鉱石採取クエストに行った時と近い狀態に見える。
趣味の世界にったシエルは非常に面倒臭いから困る。
「扉も開いているみたい。ねぇ。ソータ。せっかくだから中で休憩して行きましょうよ」
「そうだな。一日中歩きっぱなしだったし……流石に足が棒になりそうだよ」
この小屋でし休んだら下山を始めるとするか。
珍しい小屋を見つけてシエルも喜んでくれたみたいだし、流石にこの辺りが引き際だろう。
~~~~~~~~~~~~
「うおっ。これは酷いな……」
中にるなり俺の視界に飛び込んできたのは、床の上を埋め盡くすかのような勢いで転がる空になった酒瓶の數々だった。
「やった! ソファがあるわよ! ソファ! ふぅ~。このフカフカ! 生き返るわ~」
「…………」
やはり奇妙である。
小屋の中の至るところに最近まで人が住んでいた形跡が存在していた。
だとしたら一誰が? どんな目的で?
こんな辺鄙な場所で暮らしているのだろうか。
「――くな。私は魔族狩りだ」
俺がそんな疑問を抱いた直後であった。
室に殺気の籠ったの聲が響き渡る。
リック・ガーバネント
種族 :ノーム
年齢 :23
聲のした方に目をやると、フードを被った1人のがそこにいた。
そのはキャロライナの首筋にナイフを突きつけて俺たちを睨んでいた。
「キャロ!?」
信じられない。
まさかあのキャロライナが背後を取られるなんて……!
いや、それより今この人『魔族狩り』って言ったよな?
どうしてキャロライナの正が魔族だと分かったのだろう。
人間モードのキャロライナを魔族だと見抜けるのは、アフロディーテのような神族くらいだと思っていたのだが。
「他の者たちは人間だな。何故だ! 何故、人間でありながら魔族と共に行している!?」
フードを被ったは怒った聲で俺たちに対して疑問を投げかける。
正確に言うと神が1人混じっているが、そのことを話しても事態が更にややこしくなるだけなので黙っておくことにしよう。
「その聲……もしかして師匠ッスか?」
「シ、シエル!? どうしてここに!?」
リックというはシエルの姿を見るなり、フードを外して驚愕の表を見せていた。
師匠だと……!?
そう言えば以前に聞いたことがある。
シエルの師匠は凄腕の鍛冶屋でありながも冒険者としても一流で、2年前に魔族の討伐に向かったっきり音信不通になってしまったと。
元々シエルが俺たちの旅に同行するようになったのは、師匠を探す目的を兼ねていたのである。
「……事は俺の方から説明します。だからひとまず仲間を離してやってくれませんか?」
「…………」
説得を試みると、リックは渋々と言った面持ちでナイフをポケットの中に仕舞ってくれた。
さてさて。
何処から話せば良いものか。
もちろん全ての事を打ち明けるのは論外だが、下手に噓を吐くと見破られた時のリスクが大きい。
だから俺は可能な限り誠実に今日まであったことを説明することにした。
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