《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》対立

「――そうか。そういう事があったのか」

俺はこれまでの出來事をリックさんに対して々と説明することにした。

もちろん全てを話すわけにはいかないので、所々にウソはえている。

そもそも俺が別世界から召喚されたってことは仲間の中では、アフロディーテ以外知らないわけだしな。

「ソータくん。まずキミには禮を言わなくてはなるまい。シエルのことを救ってくれてありがとう。まさか私がセイントベルの街から離れている間にシエルがそんなことになってるとはな……」

「いえいえ。俺もシエルには何時も助けられているのでお互い様です」

元々、俺とシエルが出會ったのは父親の殘した借金によって奴隷商人に目を付けられていたタイミングだった。

リックさんはシエルが窮地に陥ったのは自分の責任と考え、落ち込んでいるようであった。

「……で、そこにいるキャロライナという魔族もバクラジャ商會に捕まりそうになっている所をキミが助けたというわけだね」

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「そうなんです。だからキャロはリックさんが思っているような悪い魔族ではないんです!」

「ふむ。たしかにバクラジャ商會に関する悪い噂は常々聞いていたからな。キミの勇気ある行は賞賛に値するものだろう」

良かった。

気強く説得するとリックさんは俺の考えを認めてくれたようである。

なんとかこれで最悪の事態だけは回避できそうだな。

俺がホッとで下ろした直後であった。

「――しかし、殘念だな。どんな事があっても私は魔族を見逃すわけにはいかないのだよ」

「なっ!?」

リックさんは腰に刺した雙剣を抜くと、キャロライナに向かって飛びかかる。

奇襲をけたキャロライナはヒラリとを躱して臨戦態勢にる。

「ほう……。先程とは違って大した反応速度じゃないか……! やはり私に後ろを取らせたのは仲間を気遣ってのことだったのだな!」

「リックさん……。どうして!?」

「ソータくん。キミは1つ勘違いをしているよ。この世界に良い魔族なんてものは存在しない。キミはそこにいる魔族に騙されているだけなんだ!」

「…………」

違う!

リックさんは間違っている。

俺にはキャロライナが悪い魔族であるようには思えない。

もしキャロライナが本當に悪い魔族だったら、俺は利用されるだけされて殺されているだろう。

「ちょこまかと! こうまで私の攻撃を躱し続けるとは……さては貴様、魔王軍に籍を置く上級魔族だな!?」

「違います! キャロはリックさんが思っているようなやつじゃありません!」

魔王軍に籍を置く上級魔族だって?

いい加減にしろよ!

心優しいキャロライナが魔王軍のような恐ろしい組織に協力しているはずがない。

ここまでくるとリックさんの勘違いも病的である。

「ご主人さま。下がっていてください。魔族を憎んでいる者に何か言ったところで無意味です」

「……分かった」

これ以上、首を突っ込んだところでキャロライナの足を引っ張ってしまうだろう。

だから俺は黙って2人の戦闘を見守ることにした。

「ふんっ。人間にしてはそこそこの攻撃ではないですか」

キャロライナが認めるだけのことはある。

2本の剣を巧みにるリックさんのきは、素人目に見ても人間離れしているものがあった。

神をゲットして大量の経験値を獲得した俺ですらリックさんと同じスピードではけないだろう。

「くっ。減らず口を!」

「良いでしょう。貴方の武に敬意を払い……私も本気を出すことにします」

キャロライナが宣言したその直後。

の背中からは蝙蝠の羽が生えて、口からは大きな牙を覗かせることになる。

鬼 等級S LV173

生命力 1732

筋力値 1240

魔力値 1520

神力 1428

スキル

火屬魔法(上級) 風屬魔法(上級) 水屬魔法(上級) 闇屬魔法(上級) 魔法(中級)

そこにいたのは人間の姿を捨て――吸鬼となったキャロライナの姿であった。

結論から言うと、2人の激闘は意外にも呆気なく幕を下ろすことになる――。

鬼モードとなったキャロライナの拳がリックさんのわき腹を捉えた。

「――グフッ!」

どうやら1000を超える筋力値から超えるキャロライナの打撃は、想像を絶する威力のものだったらしい。

「リ、リックさん!?」

流石にやり過ぎだろ!

もしかしたら今の一撃で死んじまったんじゃないか!?

キャロライナの攻撃をけたリックさんは、口からを流して気絶しているようであった。

「ご安心を。殺さない程度に手は抜いておきました」

「そ、そうか。なら良いんだけど」

「もっとも……このまま放っておけば1時間もしないに出で命を落とすことになるでしょうが」

「全然良くなかった!?」

キャロライナは俺以外の人間に対しては全く加減をしないから困る。

「なぁ。キャロ。お前は魔法が使えるんだよな? なら回復魔法でリックさんの傷口を塞いでやることって出來ないかな?」

「じ、自分からもお願いするッス! たしかに師匠はだらしのないところもありましたが……こんなに魔族を憎んでいる人ではなかったはずです。きっと何か事があると思うッス!」

「了解しました。直ぐに処置を施します」

元々こうなる事態をどこかで予想していたのだろう。

説得するとキャロライナは、素早くリックさんの治療に取り掛かってくれた。

こうして俺たちはリックさんの傷が癒えるのを待つことにした。

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