《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》和解

「んんっ……」

それから。

10分くらいの時間が経っただろうか。

傷口を塞いでから暫く経つと、リックさんはゆっくりと目を開ける。

「……そうか。私は敗れたか。しかも魔族相手に治療をけるとは笑い草だ」

キャロライナから回復魔法をけたことを知ったリックさんは、自的な笑みを浮かべていた。

「あの……今度はこっちが事を聞いても良いですか?」

「……ああ。なんだろう」

「どうしてリックさんは魔族を恨んでいるんですか? シエルに聞きました。以前はこれほど魔族に対して敵対意識を持っていなかったんですよね?」

「そうだな……。もはや無関係というわけではないからな。キミたちには話しておくべきか」

そこで俺はリックさんから、魔族についての報を々と聞くことになる。

「――とある日のことだった。セイントベルの街で冒険者をやっていた私は、とある魔族の消息を追っていた。

これは後で知ったことなどだが……その魔族の名前は《竜王》、クルル・カニャック。魔王軍の『元』師団長だったらしい」

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「…………ッ!」

俺の思い過ごしだろうか?

クルルという名前を聞いた途端、キャロライナの顔が変化したような気がした。

「クルルは最悪の魔族だった。腹を空かせれば小さな村を焼き払って人を食らうし、彼に殺された人間は枚挙に暇がない。

私は……私を含めた6人のAランク級の冒険者パーティーでクルルの討伐に向かったが……呆気なく返り討ちにされてしまったのだよ。みんな……私にとっての掛け替えのない仲間だった。駆け出しの頃から一緒に冒険を繰り返して……苦楽を共にしていた仲間だった」

當時のことはトラウマになっているのだろうな。

説明している最中にもリックさんの聲はところどころで震えていた。

「クルルだけはない。魔王軍の殘黨は今も世界各地に散らばり、人間たちを苦しめている。だから私は仲間たちの無念を晴らすために『魔族狩り』として活することを決めたのだよ。

セイントベルの街を離れてシエルと別れたのも同じタイミングだった。シエルには悪いが、別れを告げると決心が鈍ると思ってね。誰にも何も告げずに街を離れさせてもらった」

「そうだったのですか……」

知らなかった。

キャロライナとユウコのような魔王軍とは無関係の善良な魔族もいれば、そんな最悪な魔族もいるんだな。

俺だって大切な仲間を殺されたらリックさんと同じような行を取るかもしれない。

「……それでリックさんはどうして飛竜の山脈に? もしかして『魔族狩り』としての活と何か関係があるんですか?」

「その通り。先程も話に上がった竜王クルルは飛竜の山脈を出りしているという報を組織の人間から聞かされてね。山の各地に拠點を作ってクルルの行方を追っているのだよ」

「…………!」

なるほど。

これで話が繋がってきた。

シエルがやたら小屋のデザインに心していたのは、作ったのが師匠だったからなんだな。

「ご主人さま。積もる話があるのは分かりますが、流石にそろそろ下山を始めないと時間が――」

「うおっ! そうだった!?」

危なかった!

今の今まですっかりと忘れていた。

俺たちは現在、山の麓に亀車の運転手さんを待たせている最中なのである。

もし運転手さんに置いてかれてしまうと、セイントベルの街に戻るのに半日以上の時間を費やしてしまうことになる。

「リックさん。また近いうちに此処に來ます」

「……そうか。麓で亀車を待たせているのだったな。ならせめて最後にこいつをけ取ってくれ」

即死回避の指 等級A

(死に至るダメージを回避する指。効果の発は1日1回まで)

そこでリックさんが俺に手渡したのは、初めて目にするランクAのアイテムであった。

「これは……!?」

「冒険には危険が付きものだろう。その裝備はシエルに渡してやってくれないか? 対魔族用の裝備として組織から支給されたものなのだが……どうにも高価な裝備というのは私のには合わなくてね」

なるほど。

リックさんは弟子想いの人なんだな。

たしかに俺たちの中ではシエルのステータスは低い。

この裝備があるとシエルが大ダメージをけるリスクを格段に減らすことが出來るだろう。

「私は向こう半年は『飛竜の山脈』に滯在するつもりでいる。もし何か竜王に関する報がったら教えてはくれないだろうか?」

「――分かりました。何か分かったら知らせに來ます」

なんだかんだで飛竜の山脈に來たのは正解だっただろうか。

目的のドラゴンに會うことは出來なかったが、今回の遠征では々と想定外の収穫を手にすることができた気がする。

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