《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》カジノリベンジ

數日後。

俺は盜られたカネを取り戻すために、カジノを訪れていた。

「……なるほど。たしかにこの建の中からは微弱ながらも同族の気配をじますね」

「分かるのか?」

「はい。もっとも……向こうからは私の気配は探知できないでしょう。おそらくそのカジノのオーナーというのは出來損ないの下級魔族と思われます」

今回は勝負に備えて強力な助っ人――キャロライナを連れてきた。

軍資金となる2000萬コルは、屋敷の中にあった不要な骨董品を売り払って手にれたものである。

額が額だけに適相場で引き取ってくれる店を探すのが難しくて、各地を奔走するハメになってしまった。

「すいません。ポーカーで遊びたいんですけど」

「かしこまりました。お客様は當ゲームのご利用は初めてでしょうか?」

「いいえ。2回目なのでルールの説明は大丈夫です」

この野郎……。

ほんの數日前にイカサマで俺から50萬コルを捲き上げたくせに覚えていないのかよ。

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毎日カモにしている相手が多すぎて客の顔なんて直ぐに忘れちまうんだろうな。

「ところでこのゲームの掛け金額って最大どれくらいのものなんでしょうか」

「上限金額は特に決められていませんよ。お客様が賭けたい金額を提示して下さい」

「そうですか。ならこれで……」

定員の許可を取ったところで俺は、事前に用意した袋から金るコインを取り出した。

その數……200枚。

2000萬コルを両替した得た手持ちのコインを全て吐き出した計算である。

「おい……! 見ろよあれ……!」

「正気かよ!? あの坊主……1回の勝負にどれだけの額を注ぎ込んだんだ!?」

ここまでは俺の計算通り。

前代未聞の大勝負の匂いを嗅ぎ取った客たちがテーブルの前に集まってくることになった。

「お、お客さま。念のために確認しておきますが、1度勝負が始まるとキャンセルは出來ませんよ?」

「もちろん。承知の上です」

「分かりました。それではゲームを開始します」

どうやら第一関門は突破したらしい。

最悪の場合は斷られることも覚悟の上だったんだけどな。

おそらくディーラーも自分の技……もとい幻魔法に絶対の自信があるのだろう。

「カードを配りますね」

ディーラーに配られたカードに目を配る。

右から順番に『スペードの1』・『ハートの3』・『ダイヤの7』・『クローバの4』・『スペードの6』か。

これは酷い。

清々しいくらいに見事なまでの無役である。

「カードの換はどうなさいますか?」

「お願いします」

スペードの1を殘して4枚のカードをチェンジした俺は配られたカードを確認する。

次も無役。

自力ではツーペアすら作ることが出來なかった。

これが1回・2回のことならば確率のゲームだと納得もしていただろう。

しかし、前日から続いてこの調子だからイカサマも疑いたくもなる。

ディーラーの方に目をやると、「してやったり」と言ったじで口元を緩ませている。

どう考えても幻魔法を使っているとしか思えない。

ここは本當に相手がイカサマを使っているか検査をかけてやる。

「ロイヤルストレートフラッシュだ」

俺がカードを見せた次の瞬間。

周囲の客たちからは割れんばかりの喝采が起きることになる。

「バ、バカな……! そんなことはありえない……!」

先程までの落ち著き払った態度から一転。

ディーラーの顔は蒼白なものになっていた。

しかし、それも無理のない話である。

店が定めたルールによると最高役のロイヤスストレートフラッシュで上がった場合は、掛けた金額の1000倍が戻ってくることになる。

これにより俺は20億コル相當のコインを手にれる計算であった。

「貴様……イカサマをしているだろう! 言え! どんな手品を使った!?」

ディーラーの聲がカジノの中に響き渡る。

タネが分かれば簡単なことである。

相手が幻魔法を使ってイカサマをするなら同じことをしてやればいい。

こちらには闇魔法のプロフェッショナルがいるからな。

俺はキャロライナに頼んで、ティーラーが使用するよりも強力な《幻魔法》でトランプの絵柄をロイヤルストレートフラッシュに揃えたのであった。

「んん? どうして俺がイカサマをしたって言い切れるんだ?」

「そ、それは……」

やはり黒だったか。

相手が俺のカードを見てイカサマと言い張れるということは、自分もまたイカサマを使用していた証明に他ならない。

良かった。

お前らがイカサマを使っているなら容赦はしねえ。

こっちも心置きなく毟り取る覚悟が出來たぜ。

「どうした! 何が起こっている!?」

騒ぎを聞きつけた吸鬼のオーナーが俺たちの前に現れる。

「ロ、ロスト様……! ひっ。ど、どうか寛大な処置を……!」

「…………」

自らの失態に気付いたディーラーは異常なまでに怯えていた。

無理もない。

數日前に顔面をボコボコに毆られたことをトラウマに思っているのだろう。

ロストはゴミでも見るかのような目でディーラーを一瞥すると、ニッコリと爽やかな笑みを浮かべる。

「お客さま。どうかこちらに。大勝したお客さまに今後の相談をしたくございます」

さてさて。

どうなるものか。

本音を言うと不正を糾弾して直ぐにでも取られたカネを返してしいところなんだけど、このまま店側が素直に俺の勝利を認めるとは思えない。

かと言って俺の方から実力行使で金品を奪っていくのも筋が通らないんだよな。

だから俺はひとまずロストの後に付いて行き、『今後の相談』とやらを聞いてみることにした。

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