《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》竜王

食事が終わった後は仕事の時間である。

部屋に戻って著替えを済ませた俺は、本日の遠征地について考えていた。

う~ん。

今日は何処に行くべきなのだろうか。

以前に行った『飛竜の山脈』は完全にハズレだった。

に時間がかかるだけではなく、目的であるドラゴンも見つけることが出來ずに散々だった。

かと言って今のところ他に特に行きたい場所っていうのはないんだよな。

「カゼハヤ。っても良いか?」

俺が頭を悩ませていると、聞き覚えのある聲が部屋に響く。

部屋の中にってきたのはサキュバスのロストである。

「どうした? 急に」

「キャロライナ様から話は聞いている。お前たちはこれから討伐クエストに向かうのだろう?」

「ああ。そうだけど……」

「もし目的地がないのなら……飛竜の山脈に向かってしいのだ」

いきなりどうしたんだろう?

ロストの口調は何時になく真剣なものであった。

「理由を聞いてもいいか?」

「いいや。それは出來ん。これは他でもないキャロライナ様にすらにしていることだからな。人間ごときに教えられるはずがないだろう」

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「…………」

おいおい。

それが人にものを頼む態度かよ。

の姿をしているからギリギリ許せるが、以前の男の姿のまま同じ臺詞を言われてたらカチンと來るところだったな。

「分かった。事を話せないのなら仕方ないな。飛竜の山脈に行くのは大変だし、別の機會にすることにするよ」

「なっ。ちょっと待ってくれ!」

冷たくあしらうと、ロストは縋るような眼差しで俺の肩を摑んでくる。

近い近い!

お前はもうムチムチのサキュバスなんだから……しは自覚を持ってくれよ!

距離が完全に男同士のままなんだよなぁ。

「事があるなら話してくれよ。それで俺が納得したら飛竜の山脈に行ってやるから」

「……グヌッ。だ、だが、それだけは出來ん。このは墓場の中にまで持っていかなければならないのだ……!」

「…………」

へぇ。

こいつ、単なるヘタレかと思っていたら意外に頑固なところがあるんだな。

ロストがここまでしてにしておかないければならないものはなんなのだろうか?し興味が湧いてきた。

「仕方ないな。それなら俺が正直になれる魔法をかけてやるよ。【隠していることを全部話してくれ】」

そこで俺は『命令権』を使用することにした。

おそらくロストは知らないだろうが、魔使いは使役した魔に対して何でも言うことを聞かせることが出來るのである。

「ボクが飛竜の山脈に行きたいと考える理由……それは竜王クルル様にお會いしなければならないからだ」

「――――っ!」

こいつ……今なんて言った!?

竜王クルル。

それは魔王軍の元師団長にして今尚、多くの人間の命を奪っていることで知られる最悪の魔族である。

以前にシエルの師匠であるリックさんから々と聞いたことがあった。

「クソッ! き、貴様! ボクに何をした!? 口が……口が勝手にいたぞ!?」

「いいから。続きを話せ。どうしてクルルに會わないといけないんだ?」

「それは……元々ボクがクルル様に仕える部下だったからだ。ボクはクルル様の命により、カジノのオーナーとして働き、その収益金をクルル様に納めていたのだ。しかし、今回のことで事が変わった。

今後ボクはキャロライナ様に仕えることになったからな。クルル様には謝罪をしておかないと筋が通らない」

「なるほど。そういう事があったのか」

ロストがクルルの元に仕えていたというのは驚きである。

しかし、これで々と話が繋がってきた。

どうして魔族であるロストがカジノで働いていたのか疑問に思っていたんだよな。

「ところでロストはどうしてキャロライナの元に仕えることを決めたんだ? 結果としてはクルルを裏切ることになっちまったんだな?」

「愚問だな。キャロライナ様はボクたち吸鬼族なら誰もが憧れる英雄だ。仕えるチャンスがあるならば全力で摑みに行くさ」

知らなかった。

キャロライナって魔族の間ではそんな有名人だったのか。

しかし、これまでのキャロライナの活躍を考えると別に不思議な話ではないだろう。

「……ボクは以前から本當にこのままクルル様に仕えて良いのか疑問に思っていたのだ。クルル様は強い。しかし、その人格については正直に言うと尊敬ができないものがあったのだ」

「…………」

この辺りのことはリックさんから聞いていた報と一致する。

非道の限りを盡くすクルルの名前は魔族狩りの間でも有名らしい。

「なぁ。1つ気になることがあるんだが……。そのクルルってやつは新しい主人が出來たから縁を切りたいと言って許してくれる奴なのか?」

「うぐっ。それについてはボクも不安に思っている。クルル様は些細なミスも許さない厳しい方だ……。おそらく良くて半殺し……最悪、そのまま殺されることになるだろうな」

當然そうなるだろうな。

話に聞く限りではクルルっていう奴は殘非道でプライドの高い魔族みたいである。

自分を裏切った部下を無傷のまま返すとは到底思えない。

「……ならどうして危険な場所に行こうとするんだよ?」

「このままでいればクルル様は絶対にボクのことを許さない。地の果てまで追いかけてボクのことを殺そうとするだろう。

そうなってしまうとキャロライナ様に危険が及んでしまう可能がある。だからこの問題はボクが1人で解決しなければならないことなのだ」

「…………」

なるほどな。

そういう事があったのか。

ロスト。

ちょっとだけお前のことを見直したぜ。

仮に自分が死んだとしてもキャロライナには迷をかけたくないというわけか。

単なるヘタレと思っていたけど……なかなか男気があるじゃないか!

に対して『男気がある』と言うのも妙な話であるが。

「よし分かった。そういうことなら今日は飛竜の山脈に行くことにする」

「……なに!? 本當か!?」

俺が許可すると、ロストはパァッと花が咲いたかのようなスマイルを浮かべる。

「ああ。ただし1つだけ條件がある」

「條件……?」

「クルルのアジトに行くのは俺も一緒だ。1人で危ない橋を渡るような真似は絶対に許さないからな」

「……いいのか? クルル様は絶対のボクのことを無傷では返さない。一緒に付いていくことになればお前も危険な目に合うんだぞ?」

「勘違いするな。お前のためを想ってのことではない。俺はただ……俺の所有を他のやつに勝手に壊されるのが我慢ならないだけなんだ」

「カ、カゼハヤ……!」

俺の言葉をけたロストは心なしかで目を潤ませているようにも見えた。

なんだろう。この空気……。

これでロストの中が正真正銘のだったら結構良い雰囲気な気がするのだが……。

騙されるな! 奴は男だ!

おっぱいはバインバインで太モモもムッチムチだが……神的には男なのである。

ロストが仲間になってからというもの自分の中に歪んだ癖が芽生えてしまいそうになって困る。

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