《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》VS クラーケン
DXゴブリン號がき始めてから1時間の時が流れた。
大金を叩いて高級な船を購したこともあり、俺たちの航海はまさに順風満帆であった。
に當たる風が気持ち良い。
狀況が狀況であればのんびり釣りにでも興じたいところである。
「ソータさん。なんだか雲行きがし怪しくなってきたッスよ!?」
このまま順調に探索が進んでいくと思われた矢先であった。
その変化は――誰が予測したわけでもなく急激に訪れた。
海鳥たちが、一斉にして鳴き聲を上げる。
空は曇り始めて、心なしか海が荒れてきたような気がする。
「わわわっ! 急に降り出してきたッスよ!?」
ザザザザァァァァァ!
ポツポツと振り始めた雨は、勢いを増して、やがてはバケツをひっくり返したような狀態になっていく。
ま、まずいことになった!
こんなに揺れるのかよ! 嵐の中の船って!
「シエル! 帆を下してくれ!」
「了解ッス!」
「キャロ! アンカーの準備を!」
「――承知しました」
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こういう時は無闇にくのは得策ではない。
ひとまずアンカーを下して、嵐が弱まるまで待機しておくのが最善だろう。
う~ん。
結果的に高い金を出してでもガレー船を購したのは正解だったな。
いくら潛水魔法を使えるとは言っても、ここでケチってレンタルボートを使用していたら、俺たちは遭難間違いなしだっただろう。
「うわぁ~ん! ソ~タ~! アタシ、酔っぱらっちゃたみたい~!」
この極限狀態の中で最初に音を上げたのはアフロディーテであった。
まぁ、今回ばかりは仕方がないと思う。
嵐の中の船は揺れが凄まじく、俺の方も立っているのがやっとという有様であった。
「大丈夫か? キツかったらボールの中で休んでいて……」
「うげっ。おげええええええええええええええええええっ!」
突如として俺の言葉を遮る汚い音がした。
音のした方に目をやると、そこにいたのは船の床で仰向けに倒れているロストの姿であった。
ぐわあああああああああああ!
その姿、が見せていいもんじゃねーぞ!?
流石は安定のヘタレ!
ゲロを撒き散らしながらもロストは満創痍の様子であった。
こうなったからには仕方がない。
ひとまずロストは強制的にボールの中に戻しておくとしよう。
「ソータさん! 前方から何かくるッス~!?」
シエルがんだ直後であった。
ザバアアアアアアアアアアアァァァァン!
凄まじい水飛沫が上がったかと思うと、俺たちの目の前に1匹の巨大生が出現する。
クラーケン 等級B LV28/30
生命力 368
筋力値 722
魔力値 115
神力 353
スキル
筋力値上昇(大)
こ、こいつがクラーケンか!
はでかい。
頭の先から足まで含めると、優に20メートルくらいのサイズはあると思う。
スキルの効果によるものなのか、筋力値のステータスが異様に高い。
しかし、相手が誰であろうと関係ない。
こちらには一撃必殺の神スキル――カプセルボールがある。
「くらええええっ!」
揺れる船の中でキチンと狙いを付けられるかは普段であったが、なんとかボールはクラーケンの方を目掛けて飛んでいく。
そのままゲットして戦闘終了……のはずであった。
「なにィ!?」
クラーケンはその10本の手を活かして、パシンと、カプセルボールを弾き返してしまう。
気のせいかな。
たしか以前にも同じようなことがあったような気がする。
弾かれることで無効化されるカプセルボールのスキルは、こういう手系のモンスターを苦手なんだよなぁ。
當たる、と、弾かれるでは、別の判定を取られてしまうのである。
「キャロ!」
「――承知しました」
だがしかし。
俺たちのターンは終わらない。
相手が手を使ってボールを弾き返すのであれば、きを封じ込めれば良いのである。
「ウォーターストームー!」
キャロライナは得意の水屬魔法により、クラーケンに対して氷點下の冷気を浴びせにかかる。
の溫度を急激に下げられたクラーケンは徐々にそのきを鈍らせていく。
今度こそ決著がついた……と思われた矢先であった。
ザバアアアアアアアアアアアァァァァン!
大きな水飛沫を上げながらもクラーケンは海水の中に潛ってしまう。
まずい! その手があったか!
海の中で潛っていれば攻撃が當たらない上に自分のを溫めることもできる。
敵ながら効率的な戦法である。
「ぎゃわぁぁぁっ! ソータ! 船の中に水がってきているわよ――!?」
「なんだって――!?」
振り返ってみると、船の床は槍のように化したクラーケンの足によって貫かれていた。
クソッ!
もしかしたら最近はちょっとばかり戦力が増えてきて慢心していたのかもしれない。
単純な戦力で比較をすると俺たちが勝ってはいるのだろうが、この嵐の海は相手の土俵の上である。
格上の相手にむくらいの気持ちでいなければならなかったんだ!
「ライトマッシュ――!」
「「「ノコー!」」」
があったら塞げば良い!
そう考えた俺は同時に6匹のライトマッシュを召喚する。
スポッ。
スポッ。スポッ。スポッ。
よっしゃ!
船の中のはライトマッシュの柄の部分とジャストフィットしている。
キノコ傘の部分が良いじに蓋になってくれたので、これで暫く時間を稼ぐことができるだろう。
さて。
次はどっから手を出してくる!?
どこから出してきてもボールを命中させてやるぜ。
「ご主人さま! 後ろです!?」
「――しまっ」
直ぐそこまでクラーケンの手が迫っていた。
ま、間に合わない!
なんというスピードだ!
どうやら筋力値700というステータスは伊達ではなかったらしい。
クラーケンの巨大な手が俺のを貫こうとした瞬間であった。
「キュピィィィイイイイッ!?」
突如としてクラーケンは甲高い悲鳴を上げる。
「やれやれ。間一髪のところだったな」
「リックさん!?」
ギリギリのところで俺のピンチを救ったのは、小型ボードに乗ったリックさんであった。
「もう一発!」
どうやらリックさんが使用している矢には、特別な力が込められているらしい。
周りに風の力を宿したリックさんの矢は、嵐の中をものともせずにクラーケンに向かって飛んでいく。
しかも、その威力ときたらクラーケンのを突き破るほどのものであった。
「今度こそ!」
このチャンスを俺が見逃さない!
リックさんが弱らせてくれたおかげで今度は手によって弾かれずに當てることができた。
ところで海の生はボールの中で生活できたりするんだろか……。
クラーケンをゲットした俺は最後に素樸な疑問を抱くのであった。
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