《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》雙剣のクロウ
質問に答えた後はこちらのターンである。
同じ日本からの転移者ということで興味があったのでシンジには々な疑問をぶつけることにした。
「へー。ということはシンジ君は今、魔族狩りとして活しているのね」
「はい。ボクの所屬する≪深淵の帳≫は、アーテルハイド最強の魔族狩りです。いずれ復活を遂げると言われている魔王の打倒を目指して、鍛錬の日々ですよ」
どうやら地球からのやってきた異世界人っていうのは、シンジのように魔族狩りに所屬するケースが多いらしい。
組織に所屬をすれば、その能力に応じて裝備・金銭などの手厚いサポートをけることができる。
たしかに魔王の討伐を目標とするのであれば、合理的な選択なのかもしれない。
「今ではレベルも87にまで上がりました。今のボクがあるのは、アフロディーテ様が與えてくださった『聖騎士』のジョブのおかげです」
ケッ……!
隨分とまぁ、格好良いジョブをお持ちのようで!
どうせ俺はハズレ職業、『魔使い』ですよ。
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たまたま相の良い加護を持っていたから良かったが、そうでもなければ今頃は悲慘な底辺生活を強いられていたに違いない。
「それでシンジ君はどうしてセイントベルの街にいるのかしら?」
「はい。この報はでお願いしたいのですが、魔王軍の元師団長――人魚姫レミスを追っているのです。ある筋からレミスがこの街の近海に潛んでいるという報を手しましたので」
なるほど。
目的はリックさんたち『蒼穹の弓』と同じというわけか。
けれども、殘念だったな!
その報がガセだったということは、先日のクラーケン討伐クエストで確認済みである。
「そうだ! アフロディーテ様には是非とも紹介したい男がいるんですよ。ボクと同じ日本人なのですが、そいつがもうデタラメに強くて」
なにっ……?
シンジのような日本人がもう1人いるだと……!?
というか今更ながらに気付いたけど日本人、拉致られ過ぎだろ。
ゲーム文化が付いている分、外國人よりも適応しやすいと判斷したのだろうか。
「おかしいですね。さっきまではボクと一緒に歩いていたはずなのですが……」
シンジがキョロキョロと周囲を見渡し始めた直後であった。
「テメェッ! コラ! どこ見てを見てやがる!」
明らかにガラの悪そうな1人の男が突如として大聲を上げる。
背が高い。
おそらく長は190センチ近くあるだろう。
その割に付きはガリガリで、そこがまた言いようのない不気味な雰囲気を醸し出していた。
「坊主! 殺されてぇのか! アアアァァァン?」
うわっ。
絵に描いたような三下のチンピラ臺詞だな。
どんなに力を手にれても、ああいう風にはなりたくないものだ。
俺のような純粋無垢なピュアボーイとは、ある意味で対極の存在である。
クロス・リュウキ
種族 :ヒューマン
年齢 :15
チンピラに絡まれている男の名前を見た瞬間、ピンときた。
こいつがシンジの言っていたもう1人の日本人っていうやつだろう。
長は170センチにし屆かないくらい。
鳥の羽を模した黒のマントをに著けていること以外は、取り立てて、特徴的な部分は存在しない。
顔立ちは甘めに見積もって中の上。
ごくごく普通の、至って平凡な男であった。
「おい。こら。この糞ガキ! このオレたちを誰と思っているんだ? おおおん?」
うおっ。背が小さすぎて今まで気が付かなかった!
背の高いチンピラの傍にいたのは、背の低いチンピラその2としか形容しようのない人であった。
先程の男がゴボウのように細長い形をしているのに対して、こちらはジャガイモのようなズングリとした形をしている。
「いいか! オレたちベジルタ兄弟は、このセイントベルの街を拠點にして活しているAランク冒険者よ!」
「お前も冒険者なら名前くらいは聞いたことあるんじゃねーのか? 今から土下座をして謝罪をするなら態度次第では、見逃してやってもいいぜ」
Aランク冒険者だと……!?
この凸凹兄弟、そんなに強かったのかよ!?
この世界における冒険者がG~Sの8段階に分かれている。
Aランクの冒険者と言うと上から2番目の存在であった。
ちなみに俺はDランク冒険者。
悔しいが、このベジルタ兄弟よりも3ランクも格下の存在である。
「テメェ! シカトかよ! 待てゴラァッ!」
「舐め腐りやがって! 敗してやる!」
無言のまま通り過ぎて行こうとする男に対して、Aランク冒険者である2人は激昂する。
「あ……れ……?」
しかし、次の瞬間。
信じられないことが起こった。
2人の男の右腕に鋭く斬線が走る。
次いで、左腕、右足、左足、と順番に傷跡が出現して、男たちのをズタズタに切り刻んでいく。
「「ギャァァァアアアアアア」」
両手と両足の機能を失ったAランク冒険者はそのまま、イモムシのように地面の上を転がりまわる。
きが速いとかそういう次元じゃない。
男が見せた剣撃はまるで時間が止まったかのような錯覚を引き起こすものであった。
聖剣スターダストブレード 等級 S
(選ばれし者にのみ保有が許される聖剣。その一撃はすら切り裂く)
魔剣ディバインセイバー 等級 S
(選ばれし者にのみ保有が許される魔剣。その一撃は闇すら切り裂く)
おいおいおいおい!
よくよく見てみると、なんつー裝備をしているんだ!
聖剣と魔剣の二刀流かよ!
チート裝備にも程があるだろう!
「――くだらん」
2本の剣を手にした年は、そのまま何事もなかったかのように武を収める。
人を斬ったっていうのに眉一ついていない。
こいつ……本當に俺と同じ人間なのかよ!?
「どうです? 見て頂けたでしょうか? 彼がボクたち《深淵の帳》のエースにして――最強職業《勇者》を與えられた無二の存在。雙剣のクロウです」
心なしか得意気な表を浮かべてシンジは告げる。
「アフロディーテ様。安心してください。クロウに勝てる魔族など1人もいません。必ず彼が魔王を打ち倒しますよ」
最強職業《勇者》に選ばれたクロウと、最弱職業《魔使い》に選ばれた俺。
かくして俺は々な意味で対極の立場にある日本人と出會ってしまうのであった。
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