《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》家宅捜査

それから翌日のこと。

何時もと変わらない朝食の時間。

けれども、テーブルの席には『そこ』にいるはずのの子が1人だけいなかった。

ただでさえ広い屋敷の居間が余計に広くじられる。

いなくなってしまったから改めて知った。

俺たちにとってキャロライナの存在は、あまりにも大きすぎるものだったのである。

「――クソッ。キャロライナ様がいないのであれば、何のために給仕の仕事をしているのか分からないではないか!」

苛立ちながらも屋敷の壁を叩くメイドの名前はロスト・トリザルティ。

ムチムチとした気のあるに騙されてはならない。

々と訳があって、♂から♀にと転換を遂げた、TS屬である。

「まったくじゃ。何が悲しくて忌々しい人間の下で働かなくてはいかんのじゃ」

ロストに同調して不満を零すはレイスのユウコである。

2人の気持ちはよく分かる。

ロスト&ユウコは俺ではなくキャロライナを慕って、屋敷の中で働くようになっていたからな。

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主であるキャロライナが不在となった以上、2人がこの場に止まる意義が薄れてしまっているのだろう。

「ちょっと2人とも! 今のセリフをは聞き捨てならないわよ!」

「そうッスよ! こういう時こそ力を合わせて、キャロライナさんを取り戻す方法を考えましょう!」

2人の不満をけたアフロディーテ&シエルは、俺たちの仲が崩れないようにフォローに回ってくれた。

流石にこのままじゃダメだよな……。

キャロライナという潤剤を失うと、俺たちの関係を繋ぎとめるものが何処にもない。

あと1週間、2週間くらいならば騙し騙し今の関係を維持できるかもしれないが、結局のところキャロライナを取り戻さないことには、俺たちの関係が改善することもないのである。

「ソータさま~。玄関にお客さまが見えていましたよ~」

ギスギスとした雰囲気の中でもレミスさんだけは普段と変わらないマイペースだった。

流石はレミスさん。

今となってはレミスさんの存在だけが癒しだぜ。

「何やら険悪な雰囲気のお客さまでした。ソータさま。どうかお気をつけて」

はて。一誰が來ているのだろう。

俺たちの家に來客が訪れるなんて何気に初めてのことなんじゃないだろうか。

世の中にはもの好きなやつもいるんだなぁ。

リック・ガーバネント

種族 :ノーム

年齢 :23

外靴を履いて屋敷の門にまで足を運ぶと、見知った顔がそこにあった。

「あれ……。リックさん……?」

モデルのようにスレンダーな付きをしたリックさんは、以前に飛竜の山脈で知り合った人である。

もともとはセイントベルの街で武屋と営んでいたリックさんは、俺たちとは何かと縁に恵まれていた。

「――すまない。ソータくん。渉はしたのだが、これ以上キミを庇うことは出來なかった」

微妙に目線を反らしながらもリックさんは頭を下げる。

「えーっと……何を言っているですか?」

いつも気なリックさんらしくもない。

何か俺、リックさんに謝られるようなことしただろうか?

疑問に思った直後だった。

ドタドタドタッ!

無數の足音と共に屋敷の前に鎧をに著けた男たちが集まってくる。

ぬおっ!

なんだよこいつら……!?

人の家を土足で踏み荒らしやがって!

「カゼハヤ・ソータだな。貴様を國家反逆罪の容疑で逮捕する!」

「……はい?」

鎧をに纏った男の1人は奇妙な言葉を口走る。

國家反逆罪?

この人は一何を言っているのだろう?

「ドケッ! 家の中を調べろ! この男は屋敷の中に魔族を匿っているはずだ!」

「ちょっ! 待ってく……」

慌てて男を呼び止めようとするが、逆に抑え込まれてしまう。

ぐはっ……!

なんて力だよ……。

使いの非力な筋力値では、男たちの拘束から逃れられそうにない。

更に悪いことに両手を取られている狀態ではモンスターを召喚することも出來なかった

落ち著け。

こういう時こそ機転を利かせろ。

「は、な、せええええええええええ!」

抑えつけてきた男のを強引に持ち上げる。

スキルレンタルのスキルでクラーケンから『筋力値上昇(大)』俺ならばパワー勝負でも負けはしない。

スキルレンタル 等級A アクティブ

(使役している魔のスキルをレンタルするスキル。ただし同時にレンタルできるスキルの數は1つまで)

「なんて力だ……! このままでは……!」

「落ち著け! 早く拘束薬を投與しろ!」

俺が持ち上げた男のを家の外に放り投げようとした直後だった。

チクリッ。

突如として首筋に鋭い走った。

あ……れ……。

なんだか急に……視界が遠くに……。

やがて2本の足で立つことすら覚束なくなった俺はそのままガクリと地に伏せる。

「容疑者1名、確保しました! これより監獄塔に強制連行します!」

薄れ行く意識の中で俺は最後にそんな言葉を聞いたような気がした。

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