「いや～。クロウさんが宿を紹介してくれて助かったッスね～」

無事に監獄塔からの出を図った俺たちは、王都から離れた街に拠點を移すことにした。

獄した手前、流石に王都に止まっておくのはリスクが高すぎるし、セイントベルの街の自宅に戻るのも自殺行為である。

クロウの所屬する魔族狩り《深淵の帳》は、世界中に沢山の拠點を構えていた。

どうやら俺たちが紹介してもらった宿もその１つで、政府に目を付けられにくいように様々な工夫が施されているらしい。

當のクロウはというと無事に《深淵の帳》のメンバーと合流して、今は仲間たちのところにいるみたいだ。

今回の一件を通じて魔王討伐の時は、クロウと共闘の約束を取り付けることが出來たので、長い目で見ると監獄塔の中に閉じ込められたことはプラスのことなのかもしれない。

「それにしても酷いボロ宿ね。ソータと初めて過ごした夜のことを思い出すわ」

「……ハハッ。そうだな」

あの時はまだ仲間のの子はアフロディーテしかいなくて、使役している魔もゴブリンだけであった。

當時のことを考えると俺たちパーティーも隨分と大所帯になったと思う。

「ぬ。なんじゃ。この宿のシャワー。１日に２０分しか使えないと書いておるぞ」

シャワー室から出てきたユウコは不穏な言葉を口にする。

うげっ。マジかよ。

たしかに日本の安宿でも〇〇分しか使えない△△っていうのが時々あるよな。

これはまずいことになった。

監されていた俺は１週間近く風呂にっていないわけで、是が非でもシャワーを浴びておきたい。

「ちょっと～！　アタシ、シャワーだけは絶対に譲れないんですけど！　ギリギリまでトンネル掘りを手伝っていたから髪のが土っぽいのよね」

この事態に対して一番最初に聲を上げたのはアフロディーテであった。

の神を自稱するだけあって、アフロディーテは容に対する拘りが人一倍強いのである。

「あ。そういうことでしたら自分は良いので。自分の時間を使ってください」

アフロディーテとは対照的にアッサリと権利を放棄したのはシエルである。

もともとノームという種族は土の中で暮らしていたからか浴に対する執著がないのだろう。

「ダメよ！　絶対にダメッ！　それって子としてどうなの！？　今日一番、土にれていたのはシエルちゃんじゃない！」

「えっ。えええええ！？」

アフロディーテから理不盡なダメ出しをけたシエルは困しているようだった。

お前それ、２０分しか使用できないっていう前提條件が抜け落ちているんじゃねーか？

「うふふ。こうなったからには６人で一緒にって、互いに洗いっこするしかないですね」

「「「「「…………！？」」」」」

レミスさんの放った一言によって場の空気に張が走る。

さ、流石はレミスさん。

説明しよう！

い外見ながらも母本能が強すぎるレミスさんは、他のの子たちよりもに対する恥心が薄いのである。

「それ、ナイスなアイデアですね。たしかに６人で一緒にれば２０分で洗い終わります」

努めて爽やかな笑顔を作りながらも同調しておく。

お、落ち著け。俺。

ここで余裕のない態度を見せてしまうと、の子たちに余計な警戒心を植え付けてしまいかねない。

一週間近くしてせいかがしくなっている。

アフロディーテの巨が、ロストのムチムチエロボディが、シエルのロリ巨ボディが、ユウコのペタンコロリボディが、レミスさんのプニプニのほっぺが、なんだか無にエロく見えるぞー！

「ちょっ！　どうしたのよ！　ソータ！　目が走っているわよ！？」

ふぅ……。いかんいかん。

今日までロクにの子のを見ていなかった反か、んなところが敏になっているようだな。

子たちに下心を悟られてしまっては、せっかくのチャンスが水の泡である。

「あ！　こういうのはどうっスかね？　男子と子で分かれて、互いに時間を１０分ずつに分けるッス。そうすれば公平になるッスね」

「流石はシエルちゃん。あったまいい～！　なんだかソータが得する気がするけど、の子同士で洗いっこなら余計な気を使わないで済みそうね」

ぐぬ。ぐぬぬぬぬ。

シエルめっ。小癪な真似を！

たしかにアフロディーテの言う通り１人でシャワーを使えるという部分においては得であるが、それでは溜まりに溜まった俺のが行き場を失ってしまう。

「とっととってこい！　せめてもの慈悲だ。貴様には特別に先にる権利をくれてやろう！」

同じ男として俺の下心に気付いたのだろう。

冷たい視線を向けるロストは、そのまま俺のを蹴り飛ばす。

「む。ロストよ。何を言っておるのじゃ？」

「――ハッ。申し訳ありません。ユウコ様。出過ぎた真似だったでしょうか。ですが、こうしてカゼハヤを先にれてしまう方が奴の毒牙からを守れるかと」

「妾の言っていることはそういうことではない！　何を面しているのじゃ！　貴様も男じゃろうー！」

「えっ。えええええええっ！」

ユウコによってを蹴られたロストはそのまま俺のいる所にダイブする。

この期に及んで『男認定』されたことに対してロストは驚きを隠せないでいるようであった。

ロストよ。

お前はそれでいいのかよ。

自分が『男扱い』されて困するって……お前の神は完全にの子になっているじゃねーか！

「さぁ。ロスト。男は男同士、を洗いっこしようか……」

「ひっ。ひいいいい！？」

うひょ～！　久しぶりのじゃ！

ペタンとのまま地面に腰を下ろしているロストの姿は嗜心を煽るものがあった。

「――ま、待て。カゼハヤ。冷靜になって考えろ。貴様はそれでいいのか！？　仮にもボクは男だぞ！」

「どうでもいい。俺は今、誰でも良い気分なんだ……」

男の子には時々こういう気分になる時がある。

男に生まれた人間ならば誰しも１生に１度は『俺、今ブスでも抱けるんじゃね？』という瞬間を経験しているのではないだろうか。

頻度は人それぞれだが、過去の経験則から言うと、明けになると発生確率は飛躍的に高まるのである。

「ま、待て！　カゼハヤ！　早まるな！　アッ、アアアアアアアア――ッ！」

浴室の中にロストの悲鳴が響き渡る。

俺とロストの斷の洗いっこは、子メンバーが止めにるまで続くことになるのだった。