俺とヒュンケルの命がけのバトルは続いた。

條件が整うまでの時間を１秒でも稼ぎたい俺は、手を変え、品を変えて、ヒュンケルを翻弄する。

だがしかし。

超強力な理攻撃、魔法攻撃を有するヒュンケルは、次々に俺のモンスターを葬っていく。

「どうした？　逃げないのか？」

質問をけるが、返事はしない。

というよりも今の狀態では返事をすることが出來ないのである。

ピチピチッ。

ピチピチッ。ピチピチッ。

ああ。

俺は今、まな板の上の鯉の気持ちが初めて分かったような気がするよ。

絶絶命の狀況に置かれた俺はそこでステータスを確認。

カゼハヤ・ソータ

職業 魔使い

レベル　1

生命力　10

筋力値　10

魔力値　10

神力　5

加護

絶対支配

スキル

水屬魔法（初級） カプセルボール　鑑定眼　魔配合　コンタクト　神作　スキルレンタル　変

使役

アフロディーテ

キャロライナ・バートン

シエル・オーテルロッド

ユウコ

ロスト・トリザルティ

レミス・リトルフォールド

ルーミル・フォンネル

スパイフィッシュ

最後に俺が神作でを借りた魔は、スパイフィッシュであった。

自分のを明に変えることの出來る特も、地上では発できずに何の役も立たない。

無様に地面を跳ねることしか出來ない――正真正銘の最弱の魔であった。

「誇りに思うがいい。ここまでボクの攻撃を凌いできたことだけは褒めてやろう……」

クソッ！　準備の方は結局、整わなかったか。

ヒュンケルの掌が俺のを目掛けて飛んでくる。

俺の悪運もここで盡きたか……。

生に対する執著を捨てて、諦めて目を閉じようとしたその時だった。

（――準備は整ったわよ。ソータ）

求めて続けていた最後のピースがピタリと縁にハマる。

最後の最後のところで首の皮が一枚繋がった。

ここまで命を繋いでくれた魔たちに謝だな。

「なんだ……と……!?」

ヒュンケルが目を見開いて驚くのも無理はない。

何故ならば――。

防魔法を使ってヒュンケルの攻撃を防いだのは、今の今まで無能と呼ばれて、周りからバカにされてきた神さまの姿だったのである。

「貴様……！　神族か……！」

攻撃の手を止めて勢を整えたヒュンケルは困した表を浮かべていた。

「ありえない……！　仮に神族であったとしても地上でボクの攻撃をけ止めることなど出來ないはず

だ……！」

そうだろうな。

アフロディーテたち神族は強力過ぎるステータスの反か、地上に降りると大幅な弱化を余儀なくされている。

普通に考えれば、この地上に魔王の攻撃をけきれる生は存在していないのである。

「ま、まさか……！」

何かに気付いたヒュンケルはパチンと指を鳴らす。

すると、どうだろう。

これまで謎に包まれていた玉座の間の異空間は、魔王城の外の景を映し始める。

そこにあったのは、一面の雲の世界。

雲の上に様々な建が並んだメルヘンチックな空間だった。

「て、天界……だと……！」

事前に魔王城の『縦室』を制圧しておいたのは、今この瞬間を見越してのことだったのである。

縦室に送り込んでおいたシエルには、『俺が玉座の間にった瞬間、可能な限りで魔王城の高度を上げてしい』という指示を送っていた。

高度を上げるタイミングが早すぎると敵に作戦がバレる可能が上がるし、遅すぎると最後の戦いに間に合わなくなるかもしれない。

この作戦が功するかは本當に賭けであった。

「クッ……！　だからどうしたというのだ！　ボクはまだ負けてはいない！」

ヒュンケルの言葉は正論である。

ここまで準備を整えても狀況は未だに五分と五分だろう。

力を取り戻したアフロディーテのステータスを確認してみる。

アフロディーテ

レベル　3620

生命力　29778

筋力値　19822

魔力値　68810

神力　38240

スキル

UNKNOWN

やっぱりな。

アフロディーテ（天界ＶＥＲ）のステータスを確認したのは１度きりだったが、こんなじの數値だったとは記憶していた。

ステータスの合計値こそアフロディーテが上回っているものの、戦闘における最重要指標である筋力値は大きくヒュンケルが勝っており、勝負の行方はどちらに転ぶか分からない狀況であった。

「も～。ソータったら、不安な表しているでしょ？」

な、何故バレたし!?

無殘にも魚になった俺の表を読み取るとは……お前はエスパーかよ!?

「そんな顔しないでいいのよ！　今度こそアタシのとっておき、見せてあげるから！」

んん？　今度こそ？

コイツは一何を言っているのだろう？

俺がアフロディーテの本気の魔法を見たことなんて過去に一度もなかったはずだぞ？

「哀れなる子羊よ。の神アフロディーテの名の元に神の裁きをけよ！」

そこでアフロディーテが口にした呪文は何処か聞き覚えのあるものだった。

こ、この魔法はもしかして……！

初めて異世界に召喚された時の草原で使っていたやつかよ！

あの時の……ゴブリン相手に不発に終わった魔法は伏線だった!?

「ゴットブレス！」

アヅロディーテが高らかにんだ直後だった。

一筋のが《玉座の間》の天井を突き破り、ヒュンケルのに降り注ぐ。

「バ、バカな……！　ボクは魔王だぞ……！　この世界で最強なんだ……！　誰にも負けはしないんだ……！」

強気な言葉を紡ぐヒュンケルであったが、その表は苦痛に歪んでいた。

はやがて威力を増して、ヒュンケルのを焼き盡くす。

「こ、こんなところでえええええええええええええええええええええええ！」

アフロディーテＳＵＧＥＥＥＥＥＥＥ！

流石は森羅萬象を灰燼に変えるゴッドブレス！

まさかあの序盤でゴブリン相手に使おうとした魔法が魔王を一撃で打ち破る威力のものだったとは思わなかったぜ。

それにしても俺の正って本當に魔王？　なんだよな。

ラスボスとの最終決戦にもかかわらず、ピチピチと跳ねているだけで何の見せ場もなかったような気がするぜ……。