《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》1-1.勇者パーティーから追放されました!

「あなたは、お荷なのです」

ハッキリとそう言われたときには、脳天をガツンと毆られたような衝撃をおぼえた。

冒険者ギルド。

付嬢の言葉である。

えげつない言葉とはウラハラに、らしくネコ耳が頭上にてヒョコヒョコといている。

「いや、しかしですね……」

と、オレは冷や汗が吹き出るのを覚えた。

みずからの汗が、したたり落ちて、カウンターテーブルの上にシミをつくった。

「しかしも何もありません。勇者パーティは冒険者たちのなかでも、もっとも優れた者たちの集まりです」

「ええ」

果を出せない者が、勇者パーティにとどまることは許されません」

そうしてオレは、勇者パーティから追い出される運びとなったのである。

これからどうするかなぁ……。

とりあえずモンスターを倒さないことには、今日の収がない。しかしモンスターを倒すことは、オレひとりのチカラではし遂げられない。

なにせオレは強化師エンハンサーである。

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仲間を強くして、仲間に戦ってもらうという、なんとも人任せな職業である。――なんて、いやいや、そんなことはない。

ときに颯爽と仲間を強化して、ときに鮮やかに仲間を強化したり、そしてときには華麗に仲間を強化したりするのだ。……まぁ、仲間を強化するほかにすることはないんだが、決して無下にされて良い職業ではない。いわゆるまぁ、あれである。縁の下のなんとやらである。

「えい、くそっ」

いまごろオレを追放した勇者パーティも、えんえんと泣きわめいていることだろう。いなくなって、はじめて実するありがたみというヤツである。

『影ながら、あんなに活躍していたのか』『こりゃ參った』『ヤッパリ戻って來てもらおう』『うん、それが良い』……なんてことになって、そろそろ『戻って來てくれないか?』と、聲をかけられるはずである。そしてオレは、鼻息を荒げて言い放ってやるのだ。

「いまさら戻って來てくれと言われても、もう遅い」

と。

なんて華麗なるザマァだろうか。

しかし、待てよ。

いまの自分の境遇を考えてもみよ。

付嬢から追放宣告をされて、ギルドの前の石段に座り込んでいる。さながら浮浪者である。今日の食費にも困っているありさまである。さながら――っていうか、ガチの浮浪者である。

こんな狀態で、「今さら戻って來てくれと言われても、もう遅い」とか言っても、それはただの強がりにしか見えないことだろう。逆にミジメである。

華麗なるザマァ達のためには、自分が相手より良い立場になっている必要があることが理想だ。

そのためには、どうすれば良いか。

オレは冒険者だ。モンスターを倒して名をあげる。これがイチバンの近道だ。でもオレは、モンスターを倒せない。だって強化師だし。

「はっ」

堂々巡りである。

あやうく無限ループに陥るところであった。

「よし」

掛け聲とともに立ち上がった。

とりあえずいっしょに戦ってくれる仲間が必要である。「オレは強化師だから、君が戦ってね」という條件を呑んでくれる、都合の良い駒――ゲフン、ゲフン、仲間が必要なのである。

まぁ、大丈夫だろう。

なにせ元勇者パーティだ。追放されたとはいえ、そのブランドはなかなかのものがあるはずだ。

オレのほうから勧する間でもない。むしろ、「うちのパーティに來てくれませんか」「いいや、オレのパーティに來てくれ」と引く手あまたとなるはずである。ほら。後ろを振り向いてみれば、いまにも勧がかかる……。

ヒュゥゥゥ……――。

むなしさを演出するような、一陣の風が木の葉をさらってゆく。

「なんだよォ、なんなんだよッ。オレは元勇者パーティだぞ。勧してくれても良いじゃねェか」

怒鳴った。

メッチャ小さい聲で、誰にも聞こえないぐらいの大きさで怒鳴った。そんな鬱憤を大聲で発する度は、いかんせんオレは持ち合わせていない。オレは、慎ましいのだ。

こうなれば恥を忍んで、こちらから頭を下げるしかない。

「あ、あの。すみません。パーティの空枠とかありませんかね」

冒険者ギルドにろうとしている、2人に聲をかけた。パーティなら誰でも良いわけではない。人だったから、聲をかけた。つつましいオレにしては、なかなかの勇気である。

「はぁ? キモ。お荷くんじゃん」

「ほら、行こ、行こ」

と、オレの起などしらず、2人はすたこらさっさとギルドにって行ってしまった。

嗚呼……無……。

「ウォォォッ!」

心臓破壊ハートブレイクと言えば、何かの技名みたいでカッコウ良いかもしれないが、要するにめっちゃショックである。傷つく。そんなことを言われたら、二度と立ち直れない。

わかっていた。

オレのお荷っぷりは、勇者パーティのみならず、ほかの冒険者たちからも有名なのだ。

こればかりは、マジメに言わせてもらうが、ギルドの制度が悪いのだ。オレは世界で最強の強化師だ。1番目じゃなくても、2番目か3番目――まぁ、10番以にはっていることだろう。

しかし、強化師というのは単獨では評価されない。なにせギルドでは、「モンスターの討伐數」によって評価される。

討伐數である。

ンなもん、強化師が不遇になるに決まってるだろ、ハゲ。そんな制度を決めたヤツに、まっこうからそう言ってやりたいね。まぁ、もちろん、イザそんなことを言う度は、オレにはないんだけどね。

「討伐數」が多いほど、世間も評価するわけで、強化師も魔師との二足のワラジという場合パターンが多い。

じゃあお前も、魔師やれば良いじゃん。誰もがそう思うことだろう。

ふはは。殘念である。

オレは、強化エンハンス全振り男なのだ。

強化のみを極めし男なのだ。ふはは。

……笑いごとじゃねェ

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