《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》1-4.報酬は山分けするのが當然ですよね?

「今の斬撃は?」

は不思議そうに大剣を見つめていた。オレの強化エンハンスが切れたことによって、その剣はすでにチカラをなくしている。

「オレの強化で、君を強化させてもらった」

「尋常じゃない、強化でありました」

「ああ。まぁ、こう見えてもオレは元勇者パーティだからな」

「元?」

と、は首をかしげた。

追放されたんだなんて言えないので、曖昧に笑ってゴマかしておいた。

「オレはナナシだ。よろしく。ナナシ・コンベ」

「マグロは、マグロと言います。マグロ・リーサ」

「魚みたいな名前だね」

「よく言われます。あなたこそ存在のなさそうな名前でありますね」

「よく言われる」

お互い、見つめ合う。

変な空気になった。

おや。待てよ。

これは、はからずも【怯えてる冒険者を仲間にする作戦】が上手く運んでいるのではないのか?

このマグロとかいうの心境は、いまやオレへの稱賛であふれ返っているはずだ。

(強化強すぎ! この人はここで手放しちゃいけない人材だわ。是非ともパーティを組んでもらわないと。しかもイケメンだし、もうマグロ惚れちゃいそう! この人のお嫁さんになりたい!)

そうをときめかせているに違いない。

ならば仕方あるまい。

コホン。

オレは咳払いをした。

「さて、ひとつ提案なんだが……って、いねぇぇッ」

スケルトン・ナイトのカラダが骨となって散らばっていた。その中には、紫にかがやく魔結晶がまぎれていた。

スケルトン・ナイトがドロップしたのだろう。

けっこう大きな塊が5つ。はすぐさまその5つを回収しにかかっているのだった。

「どうかされましたか。ナナシ殿」

「どうもこうもねェ。スケルトン・ナイトを倒したのは、協同作戦だっただろう。その魔結晶は山分けだ」

は魔結晶を、小さな房の間にかかえていた。決して渡さぬぞ、という強い意思をじる。

「いいえ。前線を張っていたのはマグロであります。マグロはあなたの命を救いました。そしてナナシ殿は、マグロのことを置き去りにして逃げ出そうともしていました」

「うっ」

痛いところを突く娘だ。

「よって、この魔結晶は、マグロがいただくことにします」

「オレの強化を見ただろ。オレはすごい強化師なんだぜ。オレがいなけりゃ、いまごろ君も死んでるんだからな」

「それでは……」

マグロはしぶしぶといった様子で、魔結晶をひとつ差し出してきた。

「うん。ありがとうね。……ってなるか! 5つあるだろうが。せめて2つは寄越せ」

「えー」

「なんでそんなに厭そうなんだよ。普通に考えて山分けだろ」

「えーっと……。そうだ! マグロには、病気の母がいます。母のことを診てもらうためにも、魔結晶がたくさん必要なのです」

「うっ。に訴えかけるとは卑怯な……。まぁ、そういうことなら仕方ない。1つで我慢しておこう。オレは優しいからな」

1つけ取った。

魔結晶は不思議な熱を帯びている。溫もりが手の平に伝わってきた。

「このスケルトン・ナイトの骨を持ち帰れば、多は魔結晶に換してもらえるでしょうか?」

散らばっている骨を、マグロは軽く蹴った。カランコロンと、石畳の上を骨が転がった。

「そうだな。ギルドはモンスターの素材を買い取ってくれるからな。スケルトンの骨も換してくれるはずだ。あまり期待できるほどにはならないだろうけど」

「そうでありますか」

マグロは魔結晶をサイドバッグに詰めると、骨も余さず拾い上げていた。

母親のために健気だな。を抱きつつも、獨り占めされてはかなわないと思い、オレもシッカリと回収しておいた。骨だけでなく、剣と盾も落としていたので回収しておいた。

「おい、そろそろ閉まるぞ。あそこから出てしまおうぜ」

ダンジョンに開いた。ダンジョンは傷ついても、すぐに修復する。

閉まらないうちに、そこから出することにした。

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