《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》2-1.パーティにれていただけませんか?

ギルド。

都市のなかでも、丘の上にあって、石段をのぼっていく必要がある。

の形は、あれに似ている。エリンギ。斷固として言っておくが卑猥な意味ではない。屋じとかが、まさしくエリンギなのだ。

石段をのぼってエリンギの中にると、木造の円形の部屋が広がっている。冒険者たちがうごめく部屋の中央に付がある。

「いらっしゃいませ」

あろうことか、オレとマグロの応対をしてくれた付嬢は、オレに勇者パーティからの解雇を言い渡した付嬢だった。

解雇を言い渡したのも仕事であって、たぶん悪気はないのだろう。

「どうも」

「あ、勇者パーティを解雇されたお荷さまですね」

「お荷さまって言うなッ」

前言撤回だァ。

ゼッタイ悪気がある。

「これは失禮しました。冒険者たちの數が多くて、ちくいち名前を覚えておりませんので」

「じゃあ、お荷さまも忘れてくれ。モンスターの素材を持ってきたんだ。買い取ってくれ」

「承知いたしました。これは……スケルトン・ナイトの骨ですね。ナナシさまが討伐されたのですか?」

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「名前覚えてンじゃねェーかよ!」

「失禮いたしました」

討伐したのはオレではなくて、マグロだと説明した。マグロの討伐數に換算されていた。

強化ではどうやっても、自分の手柄には出來ない。

スケルトン・ナイトの骨と武を買い取ってもらった。200ポロムの魔結晶に換してもらった。コブシ大ほどの魔結晶2つ分である。

マグロにかすめ取られないうちに、その2つはオレがけ取った。

ギルドを出る。

もう夕方になっていた。

「今日は世話になりました」

マグロがそう言って、頭を下げた。

素直に謝されるなんて思ってなかったので、虛を突かれてしまった。

「いや。こちらこそ世話になった」

「それでは」

と、マグロが背を向けて立ち去った。

今日は苦難もあったが、出會いもあって悪くない1日だったな。明日も良い1日になれば良いなぁ。よーし、宿屋にでも泊まってユックリと休むとしようか……。

じゃねぇ!

仲間を探しているのである。このままマグロを逃がす手はない。了承してくれるかはさておき、パーティを組んでもらう提案をするべきだ。

「待て待て待て!」

マグロを追いかけることにした。が、見失ってしまった。行きう人たち、水売りだとかパン売りたちの雑踏のなかから、見つけ出すのは難しい。

おのれ逃げ足の速いヤツめ。

周りの人に聞いて、マグロの行き先を尋ねることにした。どうやらマグロは、《炊き立て新米》というパーティに屬しているらしい。

ほかのパーティに屬しているのなら仕方がない。勧は難しい。

トホホ。セッカク良い駒――じゃなくて仲間になれそうだったのになぁ。

いや。待てよ。

逆に考えるんだ。

オレが、その《炊き立て新米》にれてもらうという手もある。その《炊き立て新米》が、どこに拠點を構えているのか聞きだすことにした。

どうやら拠點を持ってはいないらしい。ギルドの近くにある宿屋に宿泊しているだろう、という話を聞きつけて、オレはそこへ向かうことにした。

で。

宿屋1階。食堂。

「うぉぉぉぉッ」

「バクバクバク、んぐんぐっ」

「むしゃむしゃむしゃ」

と、汚らしい咀嚼音の嵐を巻き起こしている3人がいた。

厭でも目に付く3人組である。

木造テーブルの上には、さまざまな料理が並べられている。

鳥の照り焼き、豚の角煮。ホウレンソウやらニンジンのソテー。カルボナーラとナポリタンパスタが大皿に盛りつけられている。この近くで取れるヴァレリカフィッシュを焼いたものと思われるものを、骨ごと貪り食っていた。

その暴食たるや、ドラゴンが人間を食らう景に通ずるものがある。その迫力に思わず退散してしまいそうになったが、その席についている1人が、マグロだった。

「おい」

と、背後にまわって聲をかけた。

「んぐんぐんぐっ。今、ちょっと……話せませんので、後で……もぐもぐ」

「母さんが病気じゃなかったのかよ」

「うげっ」

振り向いたマグロは、オレの顔を見るとそう聲を発した。口元が、ナポリタンで赤く染まっていた。

「ずいぶんと食事を楽しんでいるようだが、この食費はどうしたんだ? まさか今日のスケルトン・ナイトの分をぜんぶ費やしたんじゃないだろうな」

「チョットお腹が……」

鳥の手羽先を手に持つと、マグロはその場から退散しようとした。どこまでも食い意地の張ったヤツである。

「ウソを吐くんじゃない。母さんが病気だとか言っていたが、あれはウソだったわけか?」

「申し訳ありません。つい。お腹が空いていたので、魔結晶が必要だったのであります」

と、マグロはうなだれた。

「人のにつけ込むとは姑息なヤツめ。腹が減っていたのなら素直にそう言えば良かったものを」

「言えば、魔結晶をゆずってくれたのですか?」

「いや」

たぶん、譲ってなかっただろうな。

「それで何かマグロに用なのでしょうか? まさかウソを吐いていたことを、咎めに來ただけですか?」

そう尋ねると、マグロは蒸かしたジャガイモをかじっていた。味そうに食いやがる。贅沢なことにバターを乗せているようだ。

「おっと、そうだった。君は《炊き立て新米》とかいうパーティに屬しているそうじゃないか」

「屬しているのではなくて、マグロがリーダーです。ここにいる2人がパーティメンバーとなります」

いかにも魔師といった帽子をかぶっていると、髪を真ん中分けにして額を出させたの2人だった。

2人ともオレのほうに見向きもせずに、食事にいそしんでいる。

「パーティリーダーだったのか」

「それがなんでしょうか?」

蒸かしたジャガイモを食べきって、指先をしゃぶっていた。

「ならば話は早い。このオレを仲間にれてみないか? 今日の戦いを見てもわかる通り、オレは役に立つぜ」

「あ、わかりました」

「いいのか?」

「それでは會費用として、魔結晶を出してください」

と、舐めしゃぶっていた手を広げて、要求してくる。

「魔結晶を取るのかよ」

「ええ。食費にすべて費やしてしまい、宿代がなくなりましたので、部屋がしければ魔結晶を出してください」

「宿代がなくなっただァ? どれだけ食費に費やしてるんだよ」

「すべてです。何よりも食事が第1ですので。腹が減っては呼吸が出來ぬと言いますゆえ」

「言わねェよ。わかった、わかった。これで良いんだろ」

魔結晶を2つさしだした。

まだしは手元に余っているが、宿代というと、これぐらいで充分のはずだ。

「はい。たしかにけ取りました。これであと餃子とラーメンも頼めますね」

「おい、待てッ。それは宿代にするって話だっただろ」

「あ、そうでした」

「大丈夫かよ」

これで仲間にしてもらえるなら、必要出費だろう。

オレの強化に怖れおののき、神のように崇拝したすえに、「どうか仲間になってください」と頭を下げてもらい、オレはしぶしぶ仲間に加わる――というのが、當初の予定だった。

チョットばかり予定が狂ったとはいえ、まぁ、誤差の範囲としておこう。

とにかく手駒さえ手にれば、こっちのもんである。オレの強化に依存して、崇拝するようになるのも、そう遠い日のことではない。……はずである。

ふふふっ。

見ていろよ、オレを追放した勇者パーティめ。

これからオレはこの《炊き立て新米》パーティでりあがってみせるからな。あとで戻ってきてくれと言われたさいに、「もう遅い」と言い放ってやる下地はこれで出來た。

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