《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》5-3.1流なのは強化だけじゃないんだ!

このトラシュの森のダンジョンの上層ともなると、なかなか手ごわいモンスターが出現する。

ゴブリンやコボルトならまだしも、ウェアウルフやらスプリガンなんかになってくると、新米冒険者はまず相手にできない。

アルラウネなんかが出てきたら、練の冒険者でもそこそこ手こずることになる。

まぁ、アルラウネはの姿でしてくる習があるため、出て來てくれるだけなら、眼福眼福で済むのだが。

「いた」

と、オレは前方を指差した。

広間。

巨大なカイトシールドをかぶるようにして、丸まっている生命がいた。ふつうの人間なら、それは新種の亀かと思うことだろう。

デコポンである。

周囲には3匹のウェアウルフがいた。盾を小突いたりして不思議そうにしている。幸いにも人間と認識していないようだ。

「あれが、ナナシの仲間なの?」

「《炊き立て新米》パーティの一員だ」

「ずいぶんとフザけたパーティ名ね。すぐに助け出すわ」

フザけた名前ということは、たしかにオレも、うなずかざるをえない。

「強化は?」

「必要ないわよ。ウェアウルフ3匹ぐらい、一瞬で片付けてやるわ」

勇者は通路から駆け抜けた。

前傾姿勢となり、剣を抜く。払い切り。まずは1匹が上下に切斷されていた。

殘り2匹が勇者の存在に気づいて、腕を振り上げた。

その鋭利な爪がふりおろされる。

勇者はその場で姿を消した。消えたように見えたというだけだ。

ウェアウルフの背後に回っている。背中から斬りつけた。

2匹ほぼ同時に、その場に倒れ伏した。

ウェアウルフのカラダからのかわりに、魔結晶がカランコロンと乾いた音をたてて、コボれ出ることになった。

「余裕ね。ドヤっ」

と、勇者はオレのほうを振り向いてくる。

まぁ、たしかに見事な手際である。が、素直にホめてやる気にはなれない。ひとたびホめてしまえば、付け上がった態度に出るに違いないのだ。これ以上、勇者を増長させないことこそが、世界のためである。

瞬間。

壁面から蔓がムチのようにしなって、勇者にむかってびてきた。

「危ねェッ」

強化。劫火の纏まとい。

勇者のカラダを包むようにして、漆黒の炎が燃え上がった。びてきた蔓に燃え移って、その場に焼け落ちていた。

「強化だけは、相変わらず1流ね」

「オレが1流なのは、強化だけじゃねェ。顔と格と人とカリスマと蕓的才能と……」

「來るわよ」

と、勇者がオレの言葉をさえぎった。

壁面。がひとり出てきた。頭には桜の花を咲かせて、手足の先端が蔓になっている。そして背中からは大量の木の枝が生えていた。

アルラウネだ。

「くそぅ。もうしてくれるつもりはなさそうだな。されたかったのに」

してくるさいには、人とソックリの姿をしているのだ。

「なにを言ってンのよ、このヘンタイ。さっさと片付けるわよ」

「了解」

駿馬の馬蹄。

業火の刀剣。

強化を付與する。

勇者。刀剣を脇に構えて、踏み込んだ。

豪快ななぎ払い。

赤い斬撃が、空間をいろどった。

アルラウネは大きく後ろに跳びずさって、それをかわした。アルラウネの背中から生えている枝が、勇者に襲いかかる。

勇者はそれをマッタク意に介することなく、アルラウネに突っ込んだ。

枝が、勇者を貫いた。が、それは幻影。オレの強化によって、生み出された幻である。勇者はすでに幻影よりも數歩先にいた。

アルラウネを上段から斬りつけた。

一刀両斷。

アルラウネは斷末魔とともに大きな火柱をたてていた。

「はい、終わり――っと」

と、勇者は何事もなかったかのように、剣を鞘におさめていた。

「怖かったのじゃー。助けてくれて、ありがとうなのじゃー」

と、盾から顔をのぞかせてデコポンは、勇者に跳びついていた。

「よしよし」

と、勇者は、デコポンをなだめていた。

オレもチョットは助力したつもりなんだけどなぁ。

まぁ良いや。そのあいだにオレは、回収できるだけの魔結晶を回収しておくことにした。

勇者に譲るつもりはない。

これだけあれば今日は食いつなげるはずだ。

幸いと言っても良いのか、あの大食いのマグロが腹をくだして寢込んでいる。おかげですこし貯めることが出來そうだ。

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