《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》8-1.こんなときにノックするの誰ですか?

スバレイという都市である。

都市の中央には、スバレイのダンジョンと言われる塔が生えている。ここも、もとは前線町として発達したのだ。

前線町のなかでも、易が盛んで、巨大な都市としてにぎわっていた。

なにゆえオレたち《炊き立て新米》が、こんなところにいるのか。別段の理由はない。ただ道なりにあったからである。

いつも理由があって行しているわけではないのだ。

強いて理由をあげるなら、便利だからだ。

ダンジョンの近くに宿を取ることが出來た。スバレイのダンジョンも難易度はそう高くない。前線町ということもあって、武の商売も盛んだし、ギルドも大きい。飯も味いし、他へ行く理由がない。

「それではマグロたちは、買い出しに行ってくるのでありますよ」

宿。

部屋。

マグロたちは出かける準備をしていた。オレはまだベッドで橫になっている。それほど高値の宿ではないくせに、寢心地が良い。

「くれぐれも、食べばっかり買い込むんじゃないぞ。傷薬とか、砥石とか、そういったものを買ってくるんだからな」

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「了解であります。カラアゲとまんじゅうでありますね」

「言ってねェ」

「いちいち文句を言うなら、いっしょに付いてくれば良いではありませんか」

を刻んだものを、小麥のでつつんで蒸した、まんじゅう、と言われる料理がスバレイの名だった。

溫かいうちに食べるほうが味いが、攜帯食としても使えるから、冒険者が食している。

ほかにも、干しやら握り飯やらブリトーといった攜行食の文化が発展している。

「オレはまだ眠いから、留守番しておくよ」

買い出しなどという雑用を、なにゆえオレがやらねばならないのか。行ってくれると言うのならば、オレは待っていたい。

「では行ってくるのでありますよ」

「おい、ヨダレたれてんぞ」

「はっ。これは失禮しました」

と、マグロは口元を、服の袖でぬぐっていた。

この様子だと、食いばっかり買い込んでくるつもりだろう。

オレの高度な読心をもってすれば、マグロの考えていることなど、お見通しである。

しかしまぁ、こう見えてもマグロはパーティのリーダーをつとめているのだ。手持ちの魔結晶をすべて、食べに費やすなどという愚かなことはしないはずである。……しないよな?

「それでは、イザ行ってくるのであります」

と、マグロは、デコポンとネニを率いて宿の部屋を出て行った。

さてさて。

みんなが買い出しに行っているあいだに、オレは二度寢を決め込もうとしましょう。

うふふ。ていよくお使いを頼まれやがって。扱いやすい小娘である。

すこしずつオレの思い描いている理想の生活に近づいている。マグロたちに働かせて、オレは宿でユックリしておけば良いのだ。

おふとん気持ちいい。オレの溫によって、心地の良いぬくもりを帯びえている。掛布団を鼻の下までかぶりなおしたときである。

「ただいまなのです」

「早いな、おいっ。なに? 忘れか?」

「ネニが眠ってしまいました」

と、マグロはネニを背負っていた。

「突発的だな! さっきまで起きてただろ!」

「すぐに寢ちゃうのです。ネニは置いて行くのですよ」

背負っていたネニのことをベッドに投げ捨てると、マグロはすぐまた部屋を出て行った。ネニのかぶっていた帽子がげて、床に落ちていた。いかにも魔でございってじの帽子だ。

オレはわざわざベッドから出て、拾ってやることにした。ネニの眠っているベッドのわきに置かれているサードテーブルの上に、帽子を置いた。

ふむ。

ネニの寢顔を見つめた。白銀の髪。き通るような白い頬には、かすかに朱がさしこんでいる。

である。

マグロめ。飯のことで頭がイッパイで、ついついオレが男であるということを忘れてしまったようだ。

この部屋にはネニとふたりきりである。しかもネニは眠りこけている。なんならこの部屋には特有の甘い香りがたちこめている。

こんな場面シチュエーションになれば、やることはひとつである。

魔結晶の都合上、オレはたちと同じ部屋で寢ることが多い。マグロたちも冒険者ならば、大部屋で雑魚寢したりする経験もあっただろうし、野宿する経験もあっただろう。

まぁ、ふつうの人よりかは、異と同じ部屋で寢るということに抵抗はないようだ。オレも、そこのところは弁えていた。

強引に襲ったりするのは、人としてどうかと思うし、マグロたちからの厚い信頼にヒビをれてしまいかねない。

オレは人畜無害な男なのだ。

マグロ相手ならばオレの筋力で襲っても、返りうちにされる可能すらあるから――とか、そんな理由で今まで手を出して來なかったわけではない。

しかし――だ。

いまは、オレとネニのふたりである。ネニは華奢な型をしているし、オレでも組み伏せられるであろう。

襲うというところまではいかないが、おっぱいをむぐらいのことをしても、誰にもバレないのではなかろうか。

ネニは魔師のローブを著ている。そのローブのなかには薄いシャツを著ていた。シャツに手をかける。すこしズらす。ヘソが見えた。白くてスベスベしていそうなだ。

ドクン、ドクン。

悸を強くじる。

その服のなかに手をれて、まで忍ばせてしまえば、おっぱいは目の前である。つつましい格のオレでも、それぐらいの度は持ち合わせている。

さて、やってやるぞ、と意気込んだときである。

コンコン……。

ノック。ネニが起きてしまってはいかんと思い、オレはただちにその場を離ことにした。不審に思われないように即座に、居ずまい佇まいを正した。

幸いネニはまだ眠りこけている。

「はいはい。チョット待ってくださいよ」

こんな大事なときにノックをしてくるのは、いったいどんな不屆きものか。空気の読めないヤツめ。その顔を見定めてやろうではないか。

トビラを開ける。

ブロンドの長髪に、鋭い目をした。とんでもない人かと意表をつかれたのだが、よくよく見てみれば、勇者である。

また出やがった。

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