《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》10-3.そんな作戦聞いてないんですけども?

「そこまでよ!」

人狼となったゴルドに迫られて、今度こそ命の危機を覚えていた。こんな夜更けでは、誰も助けに來てくれないだろう。絶していたのだが、意外にも聲が割り込んだ。勇者の聲だった。

「なにッ」

と、ゴルドは勢いよく天を見あげていた。建の屋上から、壁をつたって勇者が下りてきた。

オレとゴルドのあいだに割ってった。

「おっ、ナイスタイミング」

考えてみれば、オレをこの場所に呼び出したのは勇者だ。

勇者がここにいるのは、何も意外なことではない。

「あんたを餌にして、ゴルドの素を暴いてやろうって作戦は、上手くいったみたいね」

「え? オレを餌にして、ゴルドの素を暴く? そんな作戦オレは、これっぽっちも聞いてないが」

「敵を欺くには、まず干からって言うでしょう」

勇者はカラダをゴルドに、背中をオレに向けた狀態で立っていた。

首だけ振り返って、そう言った。

「味方な」

「それよ、それ」

わざと間違えているんじゃなかろうか――と、ときどき思うことがある。

「なに? オレは餌にされてたの?」

「ええ。だから夜更けにこの場所に呼び出したのよ。ゴルドが人狼だって、あんたが言うから、試してみようと思って」

と、悪びれる様子もなく勇者は言った。

「だからって、なにもオレを餌にすることないだろーっ。他のヤツでも良いじゃないかッ」

「あんたは前に一度、人狼に襲われそうになってるでしょーが。餌として人狼を釣るには都合が良かったのよ! 実際、ゴルドが人狼だって、判明したじゃない」

カラダごと振り返って、そう怒鳴ってきた。

それを言われると、返す言葉に困る。

しかし餌として利用されたと思うと、どうも不愉快である。

世界最強の魔師であるこのナナシさまが、そんな雑に扱われて良いはずがない。

「だいたい、お前がゴルドの告白プロポーズを斷るから、オレが襲われるハメになったんじゃないか」

そう考えてみれば、オレが襲われたのも勇者の責任である。

「はぁ? なんで私が、こんなキザなアシメ野郎の嫁にならなくちゃいけないのよ。だいたい言葉づかいもキモイし」

と勇者は、ゴルドのことを指差してそう言った。

グヌヌ、とゴルドは唸ってつづけた。

「やはりあなたたちは、相思相のようですね」

「どこをどう見れば、そうなるのよ。このオタンコナス!」

「そうだ、勇者。もっと言ってやれ! だいたい勇者がオレのことを好きなら、パーティから追放したりするはずないだろ」

勇者の舌鋒がゴルドに向くかと思いきや、オレのほうに戻ってきた。

「だって、それは、あんたが私のプリンを食べるからでしょーが。しかもなんの仕事もしないし。軽い気持ちで出て行けって言ったのに、ホントに出て行くと思わないじゃないの!」

「軽い気持ち? 軽い気持ちだと? いったいオレがどんな気持ちで追放されたと思ってるんだ。オレはいたく傷ついたね」

「だからそれは、『パーティに戻らせてください』って、一言謝れば済む話じゃない!」

「いいや。『パーティに戻って來てください』って言われるまで、オレは戻るつもりはないね!」

にらみ合いである。

オレのことを追放したあげくに、人狼を釣るための餌として使う。

この勇者のどこをどう見れば、オレのことが好きだという解釈が出來るというのか。

ゴルドはどうやら脳みそまで、人狼のようだ。

「ヤカマシイ! 癡話ゲンカに巻き込むな。素を知られた以上は、放っておけん。ここでふたりとも殺してやる」

と、ゴルドは口調をして跳びかかってきた。

「ナナシ」

「わかってる」

勇者に強化をかけた。勇者はそれをけて、ゴルドの背後に回った。

そして、いともたやすくゴルドのことを昏倒させたのだった。

「強化のほうは劣ってないみたいね」

「當たり前だ。オレを誰だと思っている。ただひたすら強化をきわめし男だぜ」

「自分がモンスターと戦いたくないからでしょ」

「なッ……」

この勇者、見抜いてやがる。

「だいたいね、あんたいつまで私のことを、勇者って呼ぶつもりよ。いい加減に名前で呼びなさいよ。追い出されてから一度も、私の名前を呼んでないでしょーが」

「いいだろ別に。ユウナも勇者もそんなに大差ないじゃないか」

「大差あるわよ。肩書きと名前でしょーがっ。あんたには、そんなこともわからないわけ? バッカじゃないの!」

「いちいち、そうやって人を煽るような言い方をしやがって。もうしマシな言い方があるだろ!」

「はぁ?」

昏倒しているゴルドを置き去りにして、オレとユウナとしばし口舌を戦わせることになった。

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