《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》11-2.仲良くしたら、話が終わるんですが?

「それで、なんで私たちは王都に來ておるんじゃ?」

と、デコポンが尋ねてきた。

冒険者ギルド。エリンギみたいな外観をしているのは、王都も例にれない。

さすが王都と言うべきか、大量の冒険者たちが、ギルドを出りしていた。「そんなんで戦えんのかよ」と突っ込みたくなるような形狀の出の多い鎧をまとった者から、「なんで町中でそんな重裝備なんだよ」と、苦笑してしまうような全ガチガチに鎧で固めている者もいる。

ノドの渇きは、都市にある給水泉ですでにうるおしている。

「そりゃ金のため――じゃなくて、『魔塔祭典』があるからに決まってんだろ」

「なんじゃそれは? なんだか怖ろしい響きじゃのぉ」

と、デコポンは亀みたく、頭を引っ込めていた。

「ほら、見えるだろ。あそこ」

大通りストリートの先に見える、巨大な塔を指差した。天まで屆くかと思われるほど巨大な塔だ。灰にくすんだをしている。

「そりゃ見えておるに決まっておるじゃろう。ここに來る道中に、すでに見えておったわ。ずいぶんとデカいダンジョンじゃなぁ」

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と、デコポンも見上げる。

デコポンはひたいが広いから、けて輝いていた。ペチッ、と叩いてみたくなる。きっと良い音がするだろう。

「最古のダンジョンとか言われてるヤツだ。この世界でイチバン古いダンジョンらしい」

1000年前からあったと言う者もいる。もっと前よりあったと言う者もいる。人類が誕生する以前からあると言う者もいる。……。正確にはわからないが、とにかく古いダンジョンだ。

古いくせに、この世界でもっともい塔と言われている。ほかのダンジョンみたく壁にを開けたりすることが出來ないのだ。それどころか、傷ひとつつけられないと言われている。

「ほえぇ」

「『魔塔祭典』ってのは、あのダンジョンで冒険者たちが実力を競い合う祭典のことだ。近々、王都であるらしいからな」

冒険者組合は王國には屬さぬ獨立した組織だが、王國と冒険者ギルドが結託して主催しているのだと聞いている。まぁ、権利関係のゴタゴタは、オレには関係のない話だ。

「なるほど。それに出場するつもりか。ガンバるのじゃぞ」

「なに他人事みたいに言ってンだよ。デコポンも行くんだよ」

「なにィ、ワシもあのダンジョンに行けと申すか!」

「なんでここまで來て、行かないつもりしてんだッ。ってか、今ワシって言った? ワシって言ったよね?」

やっぱりロリババァなんじゃないか、とチョット期待してしまう。

「言っておらん。私って言ったんじゃ。この私をロリババァを見るような目で見るでないわ! ともかく、私は宿屋で留守番しておくから、他の者たちで行って來ればよかろう」

と、デコポンは盾をかぶってしまった。

「ッたく」

肝心なのはここからなのだ。

賞金が出る。

的な量は明かされていないが、それはもうトンデモナイ量の魔結晶がもらえるはずだ。ウハウハである。

さらにその祭典には、勇者も參加する。古くから続く祭典で、歴代最高績者として勇者の父親の名が殘されている。その娘である勇者が出ないはずがない。

じゃあもうオレたちだって、參加しない手はない。

「ふははっ、勇者を完亡きまでに叩きのめしてやるぜェ」

と、オレの気分テンションは最高に達していた。

魔結晶ももらえて、勇者にも泥を塗れるのだから、一石二鳥である。いや。「お荷くん」とオレのことをバカにしていた連中を、見返すチャンスでもあるから、一石三鳥である。

今までさんざんオレのことをコケにしてきた世間さまめ、いまに見てろよ。

「誰を完亡きまでに叩きのめすって?」

すぐ後ろ。

振り返る。

ブロンドの髪、碧眼、巨のトンデモナイがいたと思って虛を突かれたのだが、よくよく見てみると勇者だった。

危ねェ。あやうくダマされるところだったぜ。

「出たな! 勇者」

「人をバケモノが出たみたいに言うンじゃないわよ。なんで王都に、あんたがいるのよ」

「『魔塔祭典』に出るからに決まってンだろうが。そっちもそのつもりで、王都に來てるんだろう」

「まあね。私たち冒険者パーティが優勝するのは恒例のことじゃない」

と勇者、余裕の笑みを浮かべる。

「ところがどっこい、今年はいつもと違う。なぜなら、勇者パーティにはもっとも大事な戦力がいないからな」

「そんなヤツいたかしら?」

と、勇者はあたりを見回していた。

「ここにいるだろーがッ。自分で追放しておいて、忘れたとか言わせねェーぞッ。今までいたのに、勇者パーティから抜けてるの、オレしかいないだろ!」

「冗談に決まってるでしょ」

まったく酷い冗談を言うものだ。

このには、が通っていないのかもしらん。まったくもって冷酷である。

「ここでオレが、この最弱パーティを率いて、『魔塔祭典』で優勝するわけだ。そしたら世間はどう思う? ああ強化師がいなけりゃ、勇者はパーティも微妙なんだな――ってなる。勇者の評判には傷がつき、世間がオレを評価しなしてくれるって……おーいッ」

「お久しぶりなのじゃ、勇者どのーっ。魔結晶ゴーレムの件では、世話になったのじゃ」

「久しぶりだな。勇者さんよ」

「またお會いできて、マグロは栄であります」

3人そろって、勇者と楽しそうに話をしている。

「なにしてンだッ。《炊き立て新米》は勇者をギャフンと言わせるためのパーティだろうが。なにを和気藹々としてやがる。コンセプトを忘れるな。コンセプトを!」

勇者と仲良くしてたら、オレの冒険の意義に関わってくる。憎き勇者にザマァをするためだけの冒険なのだ。

ここでエンディング迎えちまうぞ!

「うっさいわね。そう怒鳴らないでよ。ナナシィ。あんたが世話になっているのだから、私のほうからも挨拶しておかなくちゃいけないでしょ」

「はぁぁ? お前はオレのお母さんか何かですかッ。そもそもお前まで、ナナシィって呼ぶな!」

「良い仇名じゃないの。ナナシィ」

と、勇者はニマニマ笑っている。

ゼッタイ小馬鹿にしてる。

「まあ良い。とにかく――だ。近々行われる『魔塔祭典』で、オレは優勝するからな。首を洗って待ってろよ」

「指を洗って待ってれば良いのかしら?」

「いや。首だつってンだろッ。指を洗ってどーすんだよ! 指洗うなら、手まで洗えや!」

「冗談はさておき、私だってここまでの連勝記録を止めるつもりはないのよ。そっちこそ首を洗って待ってるのね」

「負けるのはそっちだからな。オレは首なんか洗わねェよ」

「えぇっ。チャント洗わないと臭いわよ」

「言葉の例えだろーがっ。話しの流れ的に、そうだっただろ!」

また癡話ゲンカしてるのじゃ。

あのふたり仲良いよなぁ。

マグロたちはお邪魔でしょうか?

と、3人の聲が聞こえてきた。

どこをどう見れば、これが仲良く見えるというのか、不可解である。まぁ良い。言葉より、行で示せば良いのだ。

とにかく、『魔塔祭典』で優勝することが、今回の目的だ。

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