《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》13-3.この手甲が後々に活躍するんですか?

「さてさて、尋問――否、尋問では生溫い。拷問のお時間といこうじゃないか」

「なにをする気だ?」

ネニの魔法によって、蔓で縛られている男を、オレは見下ろした。覆面をはぎとってみると、意外と和な顔立ちの男だった。

しかしまぁ、人を見た目で判斷してはいけない。勇者だってあんなに人なのに、格は極悪である。

「深爪にしてやろうか。それとも乾燥したの皮をむしってやろうか。眉を変なじに剃ってやろうか。やり方はいろいろとあるが?」

「それは拷問というのか?」

と覆面男は、しわがれた聲で返してきた。

もう覆面を取っているから、正確にはただの、男、なのだが、もはやもう「覆面男」はニックネームみたいなもんだ。

「ああ。拷問だとも。深爪になると辛いぞ。指先がピリピリするぞ? の皮なんか激痛だろうに。眉も変なじに剃られたらしばらくは、表を歩けないことになる」

「あんまり痛くはなさそうだがな」

「そりゃあんまり痛くしすぎたら、見ているこっちまで痛々しい気持ちになるからな。しかし、オレの質問に素直に応えるのなら、拷問はやめておいてやろう」

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「何が訊きたい?」

「お前たちは何者だ? どうしてブルベ王さまの命を狙う?」

「オレたちは暗黒組合の者だ。雇われたに過ぎない」

暗黒組合。

まさかその名を、こんな形で聞くことになるとは思わなかった。

「雇い主の名は?」

「それは言えん」

と覆面男はソッポを向いた。

「なるほど。悪黨にもプライドがあるということか。なら次の質問だ。その手甲はふつうじゃないな。いったいどこで手にれたんだ?」

「ただの手甲だ」

「そんなわけないだろ。チョット寄越せ」

「あ、やめろ!」

奪ってやった。

覆面男は抵抗したが、ネニの発生させた蔓によって、覆面男の手足は縛られている。そのため簡単に奪うことが出來た。

がかった手甲だ。見たじでは変わったところはないのだが、異様に頑丈である。ノックするように指で叩いてみると、カンカンとじの音がする。

「よし、この手甲はオレがもらっておいてやろう」

「なに? よせ! 勝手に奪うなんて、悪人のやることだぞ!」

「人聞きの悪いことを言うな。ただの手甲なら別にもらっても良いだろう。ってか、悪人はお前らだからな」

自分の手にはめてみた。けっこうシックリくる。べつにオレは前線で戦うわけじゃないけど、あればカッコウ良い。

「くそぅ。この盜人め」

「この程度の手甲でわめくんじゃないよ。お前たちはもっと重要な品を盜んだだろう。オレはそれについて聞き出したいのだ」

「重要な品だと?」

「そうだ」

と、オレは屈みこんだ。

覆面男との顔の距離が近くなる。覆面男は鬼気迫った表で、オレを見あげてきた。

「パンツだよ」

「なに?」

「ブルベ王は、パンツが紛失したと言っておられた。お前たちが盜んだんだろ?」

「それは……」

「誰が持っているんだ? 持っているなら、すぐさまオレに渡してもらおうか? えぇ? どんなでどんな柄のものだった? 洗った後のだったのか? まさか洗う前のじゃないだろうな?」

おい、しゃべるなよ――と他の男たちが言った。

オレは睨んで、それを黙らせた。

「吐ゲロっちまえよ。深爪にされたくはないだろ? 生えそろうまで苦しいぞ」

「雇い主さまの手元にあるはずだ。それ以上は言えん」

とのことだった。

チクショウ。

どうやらこの雇われた男たちの手元には、ないようだ。

あわよくばオレが貰いけようと思っていたのに。

翌朝。

を城まで送って、不審者たちを王國騎士団に突き出すことにした。あとは騎士団の尋問によって、雇い主の名は明かされることになるだろう。

城。

城門棟前。

すでにブルベは多くの騎士に囲まれていた。姫さまが急に消えたということで、城のほうは大騒だったようだ。

「どうもお世話になりました。私のことを守ってくださり、ありがとうございました」

「もう良いんですか? まだ安心はできませんよ。良ければまだオレたちが護衛しますけど」

ここでブルベとお別れは、名殘惜しい。もうチョットだけ、一緒したい。

ネグリジェ越しに押し付けられた、おっぱいのが、いまだ鮮明にオレの脳裏に焼き付いていた。

「明日には『魔塔祭典』が行われますし、そろそろ戻らねばなりません。それに捕えた者たちから、雇い主の名を聞き出せば、黒幕の正も判明するはずですから」

「そうですか」

「報酬の魔結晶のほうは、冒険者ギルドのほうに振りこんでおきます。事件の顛末も、手紙でお伝えしますので」

そうだ。

きっと大量の魔結晶が手にることだろう。ようやっと《炊き立て新米》も、安泰の暮らしが出來そうだ。

馬車ぐらいは買えるかもしれない。食べる量を控えるように、マグロに言っておかなければならない。

「お手紙、楽しみにしていますよ」

「あの……」

と、ブルベは顔を伏せた。

「ん?」

意を決したように面をあげると、その目には涙がたまっていた。目の下が赤く染まっている。

はっとした。

これがウワサに聞くところの、惚れたメスの顔、というヤツなのではないのか! ってことは求婚か! お別れしたくありません。結婚してください。そういう展開なんじゃないのか!

ならばオスたるオレは、ただ悠然と待つのみである。

目を閉ざし、両手を広げて、ブルベがこの手の中に跳びこんでくるのを待った。

ふわっ。

やわらかい風が、オレのカラダを包み込んだ。

さあ、跳びこんでくるか! 思っていたのだが、なかなか跳びこんで來ない。

あれ?

薄く目を開けると、そこにブルベはいなかった。

「マグロさまの戦い、とっても素敵でしたわ」

ブルベはオレを通り越して、マグロに抱きついているのである。マグロはブルベの頭をよしよしとナでていた。

「どうも。チョット照れ臭いです」

と、マグロは顔を赤らめていた。

「それほどの大剣を振ることが出來るなんて、きっとマグロさまは偉大な冒険者さまになりますわね」

「そのつもりにはしているのでありますよ。マグロはこの《炊き立て新米》パーティのリーダーですから」

「たったの1日チョットでしたが、マグロさまたち冒険者との生活は、とってもたのしかったですわ。剣士のマグロさま、盾役のデコポンさま、魔師のネニさま。えっと……」

「強化師です」

「そうそう。強化師のナナシさま。みんな良い人で良かったです」

あれー。

おっかしいなぁ。

たしかに《炊き立て新米》のリーダーは、マグロだ。代表者としてマグロにお禮を言うのが筋なのかもしれない。が、ここはてっきりオレの元に跳び込んで來るものだと思っていた。

オレけっこう活躍してたと思ったんだけどなぁ。オレの印象が、ブルベのなかで薄いような気がしてならない。

「ブルベリア第1王さま。そろそろ」

と、王國騎士たちによって、ブルベは保護されていた。

跳びこんでくるであろうブルベを、抱き留めるように手を広げていたオレが、バカみたいである。不自然に見えないように、何気なく手をもとに戻しておいた。

こうしてブルベは、城へって行った。

「いい王さまでしたね」

と、マグロが言う。

「うん。まぁ、そだね」

これはもしや失というヤツかもしれない。

その日の午後には、冒険者ギルドを経由して、《炊き立て新米》には10萬ポロムの魔結晶が送られることになった。

手紙もけ取った。

そこに事の顛末が記されていた。

悪黨どもの雇い主は、すぐに判明したそうだ。王のパンツが的証拠となったということだ。なら、間違いないだろう。パンツを盜むから、そんなことになるのだ。天罰である。ザマァみろ。

どんなパンツだったのかが気になったのだが、そこは詳細には書かれていなかった。

『魔塔祭典』を中止にしようとした理由だが、どうやらモンスターに肩れして、冒険者を敵視している組織があるのだそうだ。その組織のによる差し金だったらしい。

『魔教』

というのだそうだ。

なんかの宗教団だろうか。

モンスターに肩れするとか変な思想の連中もいるもんである。

『魔教』には、マグロさまたちも、お気を付けください――と、ブルベからの手紙は結ばれていたのだった。

ちなみに、オレへの個人的なのメッセージは、手紙には記されていなかった。

脈無しかもしれん。殘念である。

落ち込んでいても仕方がない。

気持ちを切り替えていこう。

『魔塔祭典』の前に、一波あったわけだが、しかしまぁ、これにて落著である。新しく手甲も獲得ゲットしたことだし、準備は萬端。

勇者も參加している『魔塔祭典』。そこでオレの実力を見せつけてやろうではないか。

そこでオレは世間からの喝采を浴びることになるだろう。

(あの強化師すごくないか? 人間のレベルではないぞ。神の領域だ。あれほどの強化師を追放するなんて、勇者の目も節だな。ぜひうちのパーティに來てもらおう。いいや。オレのパーティに來てもらうんだ。ナナシさま、うちのパーティに來てくださいませ)

となってしまう展開は、目に見えている。

ブルベはオレへ求婚してくることだろうし、勇者は泣いて謝ってくることだろう。オレは勇者に「もう遅い」と言い放ってやるのだ。

そしてオレの冒険譚は、ハッピーエンドを迎えるという運びである。

ふふふ。

想像するだけでニヤついてしまう。

イザ。

『魔塔祭典』へ。

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