《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》15-5.勇者にコキ使われて過労なんですか?

「これ、食べれますかね」

と、マグロが床に落ちていたゴブリンの腕をつかんでいた。勇者が倒したモンスターの殘骸だ。

「いや。やめといたほうが良いんじゃないかな。たぶんまた、お腹壊すよ」

「では、やめとくのであります」

と、素直にゴブリンの腕を投げ捨てていた。

前回、るキノコを食して、お腹を壊したことが堪えているのかもしれない。

なんでもかんでも口にれようとしない姿は、マグロの長である。

「しかし食べは問題だな。水が手にっても、食糧がないんじゃ、いずれオレたちは死ぬことになるぜ」

ガデムンがそう言った。

「ですね」

と、オレはうなずいた。

でまっさきに死ぬのは、おそらくマグロだ。1日1食抜いただけでも、ゲッソリやつれることだろう。

このさいゴブリンの腕だろうが、オークのキンタマだろうが、食してみるべきだろうか。それはもう最終手段だ。

「それでは、マグロはすこし眠るのでありますよ」

「まさか、睡魔スリープの魔法をかけられたのか?」

「いえ。そうではなくて、眠っていれば空腹をまぎらわせるので」

「なるほど」

「それでは、おやすみなさい」

ぐぅ。

寢てしまった。

もしや、このまま起きないのではないか、と心配になった。近づくとマグロは目をバチッと勢いよく開けて言った。

「エッチなことをしようとしたら、殺します」

「いや。心配になっただけだから! 今まで旅してきたときも、そんなことした覚えはないだろ!」

「……そうですね」

と、マグロはもう一度目を閉ざした。

そんなにオレって信用されてないんだろうか?

っていうか、オレの予定ではそろそろ、陣が、「ナナシさま、抱いてくださいませ」と目をハートに抱きついてくる時分のはずであった。

勇者パーティから追放されて、ハーレム冒険譚をはじめるつもりだった。いっしょに旅してきたし、好度も上がっているはずである。

ははぁ。

と、いうことは、マグロの冷ややかな態度も、おそらくは演技なのだろう。

裏では、

(ナナシさまステキ。抱いてしいけど、素直に言えない!)

と、なっているはずだ。

いヤツめ。

きっとそういう類のツンデレに違いない。

不意に――。

「くぅ」

と、眠りにつきはじめた男がいた。

それはまさに昏倒するというような勢いだった。強化師のクロコである。

「おい、どうした?」

と、ガデムンがクロコを揺すったのだが、起きる気配はなかった。尋常ではない眠りのつきかたである。

閉じ込められて、どれぐらい時間が経過したのかはわからない。だが、まだ夜更けというじではない……と思う。

たぶん。オレの覚で言えば、『魔塔祭典』がはじまってから、おおよそ3時間ないし4時間といったところだ。すると今は、夕刻といったところか。何はともあれ、そんな眠り方をするような時間帯ではない。

「もしかして、勇者にコキ使われすぎて、過労だったんじゃないのか? カワイソウに」

「そんなはずないでしょ。多は疲れてたかもしれないけど、コキ使ったような覚えはないわよ」

「じゃあ、なんであんな睡してるんだ。うちのネニだって、あそこまで見事な睡はかまさないぞ」

そうは言ってみたが、ネニなら、もっと迅速な眠りを見せてくれそうだ。

「もしかして、睡魔スリープにかけられたんじゃないの?」

「今の一瞬でか?」

「だって、ふつうの眠り方じゃなかったわよ」

「だとすれば……」

クロコのすぐ近くにいたのは、ガデムンとタンポポンの2人だった。

タンポポンは人で出の多いお姉さんだから、悪いことをするはずがない。

ってこては――。

「ヤッパリあなたですか!」

と、オレはガデムンを指差した。

ガデムン相手に口調が改まるのは、怖いからである。

臆病だと罵るヤツがいるなら、言い返してやりたい。巖みたいな顔をした、スキンヘッド大男を相手に、無禮な言いが出來るのか!

犯人だと指摘した、オレの勇気をむしろ稱賛してもらいたいものだ。

「違げェよ!」

「ごめんなさい!」

ヤッパリ怖い。

「いや。怒鳴って悪かった。でもオレは何もやっちゃいないぜ。見ての通り、前衛の戦士なんだ。魔法なんて使えないし、今、誰かが魔法を使ったような形跡もなかっただろ」

まぁ、見ているじでは、誰も魔法を使ったようには見えなかった。でも、クロコのすぐ近くにいたガデムンと、タンポポンの2人なら、可能だったようにも思える。

じゃあ、タンポポンか? いやいや。オレのことをホめてくれた、このお姉さんが悪い人のはずがない。

だったら勇者か?

ありうるぞ。

実はこの勇者、何か悪いことを企んでいるかもしれない。

勇者のことだ。オレたちの目を盜んで、何かすごい魔法を使った可能もある。

「でも、これでハッキリしたことがあるわ」

と、勇者が言う。

「なんだよ」

「眠らせているのは、第三者なんかじゃなくて、このなかの誰かだってことよ」

「なんでそうなるんだ」

「だって、今の一瞬で眠らせるような距離にいたのは、ここにいる者たちだけでしょ」

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