《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》15-6.そろそろ、ギャグでもかましてくれ!

クロコが落、マグロは仮眠。

起きているのはオレと勇者。それからスキンヘッド巖男ことガデムンと、出姉さんことタンポポンの4人である。

「いつまで、こうしているつもりよぉ。私ぃ、お風呂にりたいのだけれどぉ」

と、タンポポンが甘えたように言う。

すぐさま駆け寄って、めてあげたい。けれど、クロコの二の舞になってはいけないので、互いに近寄らないにしようと決めていた。

起きている4人は、距離をとって座り込むという奇妙な構図になっている。

幸いなのは、みんなの『魔結晶カメラ』が生きていることだ。魔結晶さえれれば、明かりを発してくれる。

ただ、映像が外に送られているのかどうかは、わからない。この様子だと、送られていないかもしれない。

「仕方ないですよ。出口はふさがれちゃってますし。救助してくれるのが、イチバン手っ取り早いんですけど」

と、オレは箱にもたれかかって言う。

外の音はイッサイ聞こえない。外でも何か起こっているのか。あるいは魔法か何かで音が遮斷されているのかもしれない。

「でも、このまま救助が來なかったら、いずれ夜になっちゃうでしょぉ。私たちも眠くなるわよぉ。みんな眠ってしまったら、いずれはモンスターにやられちゃうわぁ」

「たしかに」

その心配はいらないわ――と、勇者がつづける。

「夜のあいだは、私が見張るから。あんたたち3人は眠っておきなさい。あんたたちが起きたら、私が仮眠をとるから」

「いつまで、こうしてるつもりよぉ」

と、もう一度タンポポンがそう尋ねた。

「この箱が除けられるか、あるいは出口を見つけられるまでね」

と、勇者はイッサイ疲労を見せない風で言った。

オレは長らく、この勇者と冒険してきた。たしかに勇者は1日2日寢なくとも、やっていけるだろうと思った。そう思えるだけの、勇姿を見て來ている。

「また、ノドが乾いてきたわぁ」

タンポポンの言うように、たしかにノドの渇きがじられた。

ダンジョンのなかは蒸し暑くて、すぐにノドが渇く。

いつモンスターが出てくるやもしれぬ、というのせいもあるかもしれない。さきほどガデムンたちが汲んできてくれた水も、もうなくなっていた。

ったく。

こんなはずではなかった。

もっと気楽に冒険していく予定だったのに、なにゆえこんな展開になってしまったのか……。

さっさと、「戻ってきてください」と、勇者が言ってくれれば、オレの冒険は終幕グッド・エンドを迎えることが出來ていたのに。

いかん。

吐き気がしてきた。

シリアスくさい雰囲気がつづくと、嘔吐ゲロっちまう持病が、出てきてしまったようだ。

誰か抱腹絶倒の一発ギャグでもかましてくれんだろうか。

「もう一度、水を汲みに行く必要がありそうね。今じゃなくても、いずれは行く必要があるわ」

と、勇者が言う。

「だけど、ここにいるのは4人しかいない。2人ずつでしか分けられないぜ」

と、オレはあくびをしながら言った。

薄暗闇だし、周りにいる連中は心地良さそうに眠っている。

ノンキなものだ。

このままダンジョンで寢てたら、死んじゃうかもしれないのに。

まぁ、魔法をかけられて眠っているのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだけれど、その安らかな寢顔を見ていると、なんだか腹が立ってくる。

なんでオレがこんな思いをしなくちゃならないんだ、という理不盡にたいする怒りである。

溫厚なオレが、人の寢顔でイラついてしまうということは、こののせいもあるのだろう。

「マグロちゃんに起きてもらいましょうか。そうすれば5人になるでしょ」

と、勇者が5指を広げて見せた。

「5人になっても、2対3でしかわけられないじゃないか」

3人のほうは良いが、2人のほうはよほど相手のことを信用できなければ、行をともにすることは出來ない。

っていうか、そもそも犯人が1人とも限らないのではないか? じゃあ3人になっても、ほか2人が犯人ならと思うと油斷はできない。

この場にいるなかで、心底信用できるのは、マグロぐらいだ。マグロはずっとオレといっしょにいたし、他人を眠らせるような素振はしていない。

クロコが眠らされたときだって、マグロは仮眠を取っていたのだ。

気持ち的にはタンポポンも信用してあげたいところだが、真剣に考えるなら、チョット疑わしいところもある。

え?

勇者?

イチバン信用ならないな。

「よっし、なら水はオレが1人で汲んでくるとしよう」

禿頭をぴしゃりと叩いて立ち上がったのは、ガデムンである。

「1人で――ですか?」

「まったく、どいつもこいつも信用できねェ。1人になって気持ちを休めたいと思ってたんだ。トイレにも行きたいしよ。そのついでに、水を汲んできてやるよ」

「でも3階層ですよ。ここ」

警戒しなくてはならないのは、なにも眠らせてくる犯人だけではない。モンスターだっている。

「心配ねェって」

と、ガデムンは空の水筒を回収すると、逃げるようにして立ち去ったのだ。

「出すもの出したら、ちゃんと手を洗ってくださいよ。それから水を汲んできてくださいね」

と、オレは注意したのだが、聞こえたかどうかはわからない。

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