《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》16-3.おわり

睡魔スリープの者である、ネニが気絶したことによって、眠らされていた者たちは目を覚ました。

ダンジョンをふさいでいた箱も、オレの強化を乗せた手甲によって、砕くことが出來た。

「手甲でくだけるんなら、さっさと気づきなさいよ」

と、勇者にさんざん言われたのだが、返す言葉もない。まったくもって、その通りである。

オレがさっさと、この手甲の存在に気づいていれば、ダンジョンに閉じ込められることもなかったわけだ。

クロコの魔法によって、外部との音聲が斷たれていただけで、外はべつに何も起こっていなかった。

むしろ救助しようと、冒険者ギルドと王國騎士たちが、いろいろとやってくれていたようだ。

まあ、何はともあれば、祭典は無事に終わった。

死人が出なかったことが、幸いである。ケガをしていたガデムンも、すぐに手當されて、意識を回復させた。

『魔教』とかいうフザけた教義のもとに働いたクロコも、王國に無事引き渡されることになった。

あとは王國騎士が、どうにかしてくれることだろう。

え? 『魔教』を潰しに行かないのかって? そんなメンドウなことはしたくないし、冒険者の仕事ではない。依頼されたらやるけどね。報酬しだいだけど。

殘念ながら祭典は、中止されることになったわけだが、クロコを捕えた勇者への稱賛はおおきかった。

さすが勇者さま、ということだ。うん。オレも活躍したんだけどね?

ヤッパリ強化師っていうのは、活躍が目立たないのかもしれない。世知辛いね。

で。

「お疲れさまだったのでありますよ」

「うむ。ワシらがグッスリ眠っているあいだに、なにか々あったようじゃな」

宿。

大樹を切りにしたみたいなテーブルの上に、さまざまな食材が並べられている。マグロとデコポンとネニの3人はそれを頬張っていた。例によって、暴食のかぎりをつくしている。

しかしテーブルを囲んでいるのは、その3人だけではない。

「ッたく、手甲にさっさと気づいていれば、こんなことにはならなかったんだから」

と、勇者は焼きリンゴをはさんだパンにかぶりつく。

「まあまあ、そう言うなや。ふつうは気づかへんやろ。なァ? ナナシ」

と、カイトが、オレの脇腹をこづいてくる。

「……」

と、人形のように黙然と座っているのが、ウィザリアである。

《勇者パーティ》と《炊き立て新米》の合併が行われることになった。合併というか、吸収である。

クランだ。

パーティはダンジョン攻略のさいに組むチームだが、クランは同じチーム集まりみたいなもんだ。

「でも、恐なのであります。マグロたちみたいな、新米が勇者さんのクランにれてもらえるなんて」

「いいのよ、いいのよ。どこぞの意地っ張りが、『パーティに戻してください』って言えないみたいだし、パーティごとくっ付けちゃえば良いでしょ」

勇者はそう言うと、オレに流し目を送ってきた。

「橫暴だ! 職権用だ! パーティごとくっ付けるなんて、マグロも、自分のパーティに誇りはないのかよ。パーティが吸われたんだぞ。リーダーじゃなくなるんだぞ!」

「ご飯を食べれるのなら、問題ないのであります」

勇者たちは、そりゃもう魔結晶を大量に持っている。収も多い。

マグロの食糧費もたんまりあるわけだ。マグロちゃん大満足である。デコポンとネニもべつに異議はないとのことだった。

「いくらオレに戻って來てしいからって、こんなやり方ってあるかよ!」

「はぁ? 誰が戻って來てしいなんて言ったのよ!」

「戻ってしいから、パーティを併合するようなマネをしたんじゃないか!」

「あんたが、素直に戻りたいって、言えないから、こうするしかなかったんでしょッ。ありがたく思いなさいよ!」

なんということだ。

これでは『今さら戻って來いと言われても、もう遅い』が、言えないではないか!

こうなれば、もう一度、追放されるしかない。どうすれば追放してもらえるのだろうか?

パンツか? 勇者のパンツを盜んでやろうか?

それぐらいの悪行を働けば、追放してもらえるに違いない。

うん。なんか目的が変わってる気もするけど。

カイトが口をはさんだ。

「まあ、ええやないか。一件落著ってことで。ふたりとも素直やないねんから。お前ぐらい優秀な強化師は、そうそうおらんよ。な? 意地を張らんと戻ってきてくれや。勇者のほうも意地を張らんと、戻したってくれや」

オレと勇者は、カイトの仲裁によって、しぶしぶ手を握り合うことにした。

勘違いしてもらっては困るが、しぶしぶ、である。イザとなればオレだって、《勇者パーティ》なんか出て行けるということを、今回の騒をもって証明できたはずだ。

「カイトがそう言うのなら、まぁ、仕方ないな」 と、オレは目の前に置かれていた焼きリンゴにかぶりつくことにした。

「あッ、チョット、それ私の焼きリンゴよ!」

「はぁ? オレの前に置いてあったんだから、別に良いだろ」

「良くないわよ!」

と、オレと勇者は顔を突き合わせて、にらみ合うことになった。

これから勇者パーティーは、《炊きたて新米》を吸収して、冒険を続けるとのことだった。と駆け落ちした父親を探すため、勇者の冒険は続くのである。

しかしながら、オレの野は潰えてしまった。『今さら戻って來いと言われても、もう遅い』を言うためだけの冒険だったのだ。

ざまぁ、とはなかなか難しいものである。

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