《ルームメイトが幽霊で、座敷。》夏休みと幽霊と天巖戸

「……わかりました。それでは、なんか手掛かりってのはありますか?」

「違うのよ」

「はい?」

「場所は解ってるの。問題は……どう連れてくるか、なの」

ちょっと待ってくれ。このの子、何かに取り付かれてでもいるのか? 何を言ってるのかさっぱりわからないんだが。

「あー、天巖戸あまのいわと伝説ねえ」

「天巖戸?」

俺は碧さんがなんだかつぶやいていたので、尋ねてみた。

「そうそう。須佐之男尊スサノオノミコトとか天照大神あまてらすおおみかみとかが出てくる神話のことよ。……簡単に言っちゃえば引きこもりが世界を変えたのよね」

「端折りすぎじゃないのかそれは?!」

「あ、あのー……さっきからどなたと話してらっしゃるんですか……?」

「あー、そっか」

おれはの子の言葉でようやく現実へと引きずり戻された。たしかにそうだ。この子は知らないんだ。

ってなわけで、種明かしが必要だったりするのだ。

「ちょっと手をだしてみて」

「はい?」

俺に言われて素直に差し出した手に、碧さんは悪戯をする子供のような笑顔(実際それから似たような行為をするのだが)でれた。

その直後だった。

「……なんですか、何もないじゃないですか……ってあわわ! 目の前に和服を著たグラマラスなお方が?!」

「はいはーい! こんちは!」

すげえ気分たけえな。久しぶりに俺以外の人と話せたからだろうか? にしてもなんだかすげえ笑顔だな。よっぽど彼の驚きっぷりが気にったのか。逃げなくていい。むしろ俺の被害がなくなって助かる。

「……あの、その、この人は?! まさかルームメイト、彼?!」

「そーよー」

を當てるんじゃありません。違うよ。よーく足元を見てみなよ」

そう言われて彼は足元を見て――言葉を失った。

「え……足がない……!?」

「これでわかったろう。彼のこと」

そして、彼は小さく頷いた。

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