《ルームメイトが幽霊で、座敷。》上司が姉で就職決定
「……いや、ちょっと待てよ。なんでお前裝なんてしてんだよ!」
そうだよ、よく考えりゃおかしな話なんだ!  なんでこいつが裝してるのかせめてまともな理由がしい! まさかお前ちゃんとついてるものついてるよな?!
「ついてるよ! ってか何を期待したんだ!」
「ってかお前パッドつけてんじゃねぇか! しかも気付かれないくらい小さいBに近いAという! 全國の貧マニアが集まってくるぞ?!」
「それが狙いだったり? ほら、こういうところだから潛捜査とかしたりするでしょ?」
「こ、こいつ策士か……」
ぴんぽーん。
その會話を遮るかのようにエレベーターが目的地に著いたことを伝えた。今思ったんだが、このチャイム俺の家のチャイムと同機種というどうでもいい報を提供しておく。
「ほれほれ二人とも。著いたぞ」
その言葉と同時に扉は開かれて――同時に広がったのは小さなオフィスだった。そこにいたのは四人ほどの人間と、同じ數の人間ではない生き。それを見て俺はここが現実、平和とは違う空間であることを思い知らされた。
「副班長、おはようございます」
「みずきおはよー。どうだったフランスは?」
「やばかったですね。イギリスで十二天使と戦ったときより酷かったです」
「……芳しくない、か」
「ところでそちらは?」
「この子は新り、幽霊憑いてる弟がいるって言ってたでしょ?」
「あぁ、そういえば! ……よく見たら和服の人がふわふわ浮いてますね」
「あら、ここの人ってみんな私が見えたりするわけ?」
幽霊は馴染むのが早すぎる。あっという間に宮庁神霊班の雰囲気に溶け込んだらしい。知り合いもいないのにどうして溶け込めるんだ? ……まぁ、たぶんだが自分とちゃんと話せる人間に久々に會えたことを嬉しく思ってるんだろうなぁ。最近俺としか話してないし。
「がたがたうるさいんじゃないか。たかだか新りがってきただけで」
「……あなたは誰ですか」
「俺は神治っていう。……お前の名前を聞きたくもないな。どうせ數日で消えるんだろうから」
そう言ってよく解らん中二病患者はエレベーターの方に向かってった。なんなんだあいつ? チームなんなら協力しろよ、ってわけなんだけどなぁ。
「……申し訳なかったな。あいつはいつもそうなんだ」
「そうか……。って待てよ……?」
「どーかした?」
「今“新り”って言ったよな……?」
「あぁ、それがどうかした?」
「待てよ! 俺はそんなこと一切聞いてねぇよ!」
それどころか騙されたわ! いったい全なんだって言うんだ! 急に(まぁ一応説明はあったけど)言われてここまで連れてこられて新り扱い? まったくもってよく解らない。
「なんでお前を新り扱いしたのか、何の説明もなく言ってしまって済まなかった。……だがな」
「……?」
「今は、お前の力が必要なんだよ。今の幽霊やらカミサマやら増えてるのは聞いたことがあるだろ?」
「あるにはあるけど、俺の依頼もないからそんな増えてないと思ったけどなぁ」
確かにこの前幽霊やら妖怪やらカミサマやらが増えていることをニュースで聞いたけど、依頼件數自は増えなかったから特に影響はなかったけどな。
「それで人手が足りないんだよ。この前だって彼が……」
その言葉を聞き、宮庁神霊班全が急に暗い雰囲気に包まれた。あれ? なんか俺悪いこと言った?
「……あぁ、済まない。こっちだけの話だよ。そんなわけで宮庁神霊班にも欠員がいるんだよ……」
「まさかその補填に來いとか言うんじゃないよな?」
「……その通りだがなにか?」
「曇りのない笑顔で勧するなよ! もう姉が信じられなくなるわ!」
「別に……信じてもわなくてもいい。だが、國がかかっているんだよ。それを解ってくれ」
その言葉を聞いて、俺はさっさと帰っちまおうと思った。國が云々じゃない。それ以前に騙されたことに関する憤りが大きかった。
「……副班長、卷族けんぞくが現れました!」
「早かったな! ……まさか不知火の神子か?!」
「恐らくは!」
「……やばいことになったな。とりあえずリト行くぞ! 銃は持ってるか?!」
「……いつ何があってもいいようにな」
「よし、行くぞ!」
そう言われて俺は姉ちゃんに首っこ引っ張られてどこかに向かってった。……いったいどうなるんだろうか。それは俺にも解らないし出來ることなら解りたくない。
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