《ルームメイトが幽霊で、座敷。》神憑きと勢力の比例関係(後編)

「……おい、大丈夫か」

「え、えーと……あれ?」

そこに広がっていた景は、呆気ないものだった。何もないのだ。ヒギツネノミコトも、神治ってやつも、俺の隣にいたみずきさんも……。

そして、場所も違っていた。今までいたのは、森の奧の小さな広場だと思ったのに、今居るのは救護室だ。……これはいったいどういうことなんだ?

「いやぁ、全く驚いたよ。あの口論のあと、急にリトが倒れちゃって、熱中癥か何かかと思って救急手當てをしてるうちに、ヒギツネノミコトが封印されてるんだもん」

祐希から言われた言葉に俺は完全に言葉を失った。……つまり、あれは、夢?

「……そーいえば、姉ちゃん」

「副班長と呼べ」

ベッドの隣に恥ずかしげに(こんなことをあんまりしないからだと思う)ちょこんと立っていた姉ちゃんに尋ねると、そう答えられたが、構わず俺は話を進める。

「出雲大社に行きたいんだけど」

「……、それはなぜだ?」

明らかに姉ちゃんの目のが変わった。さらに俺は続ける。

「古屋さんって人に來いって」

「……班長がお前に?」

その言葉に迷わず俺は頷いた。その容に驚いていたのは姉ちゃんだけではなかったようだった。

「……班長が能力を使って、封印したんなら全てが巧くいく! なるほど、班長が來てくれたんだ!」

「待て、祐希」

楽しくなりすぎた(?)のか、前へ前へしゃしゃり出る祐希を姉ちゃんが制止した。

「……仮にヒギツネノミコトを封印したのが“彼”だとしよう。……だが、よく解らんのはこっからだ。何故彼はお前を出雲大社に呼び寄せる必要がある?」

「そんなこと、俺が知るわけないじゃん」

「…………ま、そうだよな」

「え?」

「それに班長命令だ。私が止める訳にも行かないしな。行ってこい、リト。班長が何を言いたいのか……私にも解らないが、それでも行く価値は十分にある。何を伝えたいか、ちゃんと聞いてこい」

「……解った」

俺は姉ちゃんの言葉にしっかりと頷いた。

起き上がり、ふと窓を見ると――しとしとと雨が降っていた。

第二話

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